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〈第14話〉笑いの神様がいるならば、今きっとニヤニヤしてくれてるに違いない

 その夜、僕は眠れなかった。いや、眠る気持ちになれなかった。

 昼間に見たプロのお笑いの舞台と、おじさんとの会話。なんだかとても興奮してしまったのだ。

 これまでなんとなく頭に描いていた陽月祭の台本のイメージが、しっかりとした形になりそうな気がする。

 いや、今、頑張って形にしなくちゃいけないという決意をした。

 もう真夜中。おじさんの家で熊谷とブロッコリー先輩は寝てしまった。寝息に少し、いびきのような「グガー」という音が混じっているのは先輩のほうだろう。隣の部屋では清花ももう眠っているはずだ。

 おじさんはラジオ番組の収録があるとかで今日は帰ってこないそうだ。自分でしゃべるわけではなく、芸人が話す横で少し相づちを打ったり話題をふったりするのだと言っていた。放送局に送られてくるハガキの中から面白いものを選んだり、新しいコーナーを考えたりもするらしい。

 熊谷と清花は収録を見たがったが、おじさんに「夜中の一時や二時にラジオ局にいたなんて親御さんにバレるとまずいやろ」と言われ、仕方なく帰ったのだ。

 もちろん僕だって、そういう現場を見てみたい気持ちはあったけど、今はそれより、陽月祭の話をまとめあげたい、という気持ちのほうが強かった。

 喫茶店を出た後も、清花の買い物に付き合ったり、たこやきを食べたり、展望台のある変な形のタワーに上ったりしたけれど、僕は目の前にあるものもちゃんと見ずに、頭の中ではずっとストーリーの組み立てをしていた。

「先輩どうしたんですかあ。元気ないです?」

 清花に聞かれても「ああ、うん、いや」とか答えてたと思う。

 今、おじさんの部屋にある小さなちゃぶ台にノートを広げ、ページとページのちょうど真ん中の谷間にえんぴつを置き、腕を組んだ僕は、昼間にイメージしていた話をさらにふくらませるために集中した。

「グガー、ガー、ガ・・・ピー」

 ブロッコリー先輩の寝息がひときわ大きくなった瞬間、僕の頭に稲妻のようなものが走った。きらめき、ひらめき、ときめき。(ときめき?)

 笑いの神様がいるとしたら、絶対に今、この部屋で僕を見守ってくれている気がする。

 ノートの上に置いたえんぴつを手に取り、思いついたことを書き込んでいく。アイデアの数々をひとしきり忘れないようにメモして、深呼吸した。一気に書き上げる自信があった。

 僕はうれしくて、口元がゆるんだ。

 なにせ、たったいま、今年の陽月祭の寸劇のタイトルが決まったのだ。

 今ここに、笑いの神様がいるならば、きっと、ニヤニヤしているにちがいない。

「ゆけ!!五臓六腑レンジャー」

 僕は思わず、声に出して、つぶやいていた。


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