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赤の正義  作者: 千歳実悠
第0章 日常という非日常
4/5

始業式

一瞬、時が止まった気がした。


まさか、まさか。


背中にドッと冷たい汗が湧き出る。



とうとう、俺の日常にも潜り込んできた非日常。

昨今TVで騒がれていたモノが、自分の目の前に舞い降りた。


ーーー何かが始まる。


そんな気がした。

厨二病だかなんだか知らない。勝手にいえばいい。

そう言われても構わないほどの衝動が自分の中を駆け巡った。


普段、至って冷静な俺だが、たまにはこんな気分になることだってある。


まだたかが15歳。


流石に“闇の帝王がこの地中世界で目覚めの時を待っている“なんて事を信じている訳では無いが、目の前に突如舞い降りた“非日常”とも言える事態には胸が高鳴る。



「おい、司!置いてくぞー」

「!!!」



榊原の声で一気に現実に引き戻される。

ふと周りを見れば教室には誰も残っていなかった。


「あ、悪い。今行く」


俺は慌てて後ろのドアへと向かった。




廊下では榊原が携帯をいじりながら俺のことを待っていた。


「…ったく、何してんだよー。なかなか出てこないなと思って覗いてみれば、ひとりでぼーっと」


かったるそうに俺への不満を言っている榊原だったが、そんな事は気にしない。


「なあ、榊原。事件だ」

「…ん?なにさ事件って」


この情報を伝えれば、きっとそんな不満は消し飛ぶ。

俺はこの沸き立つ感情を必死に抑えながら、堂々と言ってやった。


「驚け。俺らのクラスに転向してきたのはただの美女じゃない。“正義の使徒”だ」









「……いや、お前の発言に今凄く驚いてるわ」







「いやー、やっぱりかったるかったな。始業式」

無事始業式も終わり、体育館からの帰り道榊原が欠伸をしながら言った。

「ほんとな。毎回同じ話聞かさないでいいからって思ったよ」


“全員がここに元気に集まれた事を嬉しく思います”


休み明け集会の決まり文句になっているコレ。

全員が元気に集まっているかなんて、知ろうともしないくせに良くも言えたもんだ。


「で?なんだっけ?お前頭逝った?」

「え、いきなり何」


少し前を歩いていた榊原が突然振り返り、とても失礼な言葉を吐いた。



「いや、始業式前の“ただの美女じゃない、正義の使徒だ”ってやつ。お前昔からかわってるやつだとはおもってたけど、とうとう頭逝ったのかと思った」


結局途中になってしまった、木瀬さんのリボンの話か、とそこで理解する。


「ああ、大丈夫だ。まだ逝ってない。そして、それはそのままの意味だよ。榊原」


俺は敢えてそこで言葉を切った。


「ん?」


案の定、榊原の興味が引かれる。


「木瀬さん、左手首に赤いリボンが巻いてあったんだ」


振り返った榊原の口が、機械的に開いていった。

開いた口が塞がらない、まさにその言葉の通り無様に半開きだ。

わなわなと小刻みに動く口がやっと紡ぎ出した言葉、それは


「………マジ…?」


ただ一言だった。



「ああ、間違えない。あれはきっと“赤の正義”の赤いリボンだよ。とうとう俺らの周りにも侵食し始めたんだ」


TVの世界で騒がれてい謎の組織“赤の正義”。

まさか、こんな形で巡り会うとは。


「いや、落ち着け司。たまたま貰ったプレゼントのリボンを左手首に巻いたまま登校してしまっただけかも知れないじゃないか。そうだよきっと司君」


榊原も目を輝かせながら、俺の仮定を否定する。

「………その方が可能性低くないか…」

「所詮俺達の人生だ。期待をしない方が身のためだよ厨二病君」

「誰が厨二病だ」


口ではそういう彼だが、“赤の正義”の登場の予感に彼もまた心を踊らせている。



誰が組織したのか分からない。

誰が運営しているのか分からない。



“ただ、自分の思う正義を貫く”事を目的としたネット上の組織。



それが“赤の正義”。




瞬く間に社会に広まり、今ではニュースに取り上げられ程になった

彼ら“赤の正義”の構成員は、自らの左腕に赤いリボンを巻き団結を誇る。

団結力とは恐ろしいものだ。

1人では成せないものも、人が集まれば叶う。



子供の目には、“赤の正義”は昔見た戦隊モノの現代版のように写った。


いや、それはきっと大人も変わらないのかもしれない。


遠藤や榊原を含め、人々は興味を持った。






まだ、その“正義”が何を起こすかも知らずに。





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