20.聖女の役割とは
セレナとの関係を深めるためのイベントと化した『舞踏会』が無事?に終わり、物語の流れがどうなるのか全く分からない状態になっていた。
「姫様、何をぼんやりしているのですか?課題はまだ残っていますよ」
私の静かな日常生活が戻ってきたのはいいのだけど、以前より増して聖女としての義務という名の勉強が増えている。日本にいたときも勉強勉強の毎日だったのに、異世界に連れて来られてなお勉強しなくてはいけないのは腑に落ちない。
「・・・・」
「納得できないも何も、あなたは聖女なんですから」
「・・・・」
「勝手に連れて来られた?そんなこと言っても事態は変わりません」
「・・・・」
「また『鬼』ですか? はあ~」
ため息を吐きたいのは私の方だよ。エドとの摩訶不思議な会話に慣れているのか、聖女付き侍女のサラは何でもない様子で私に紅茶を出してくれる。
「ありがとうございます。サラさん」
「頑張ってください」
お姉さんのサラはいつも優しく私に接してくれている。サラに向かって笑顔で会釈してほんわかリンゴの香りがする紅茶をすする。アップルティーだ。
「すすらない」
「・・・・」(お前は小姑か?ロッテンマイヤーさんか?)
「こじゅう?ロッテン??」
私の心を読んで理解できないエドのことを、してやったりとほくそ笑みちょっとは気が晴れた。
「勉強勉強っていうけどさ。私はこれから何をしたらいいの?目標というか・・・目的がないと勉強って捗らないでしょ」
ゲームの世界、小説の世界、それぞれは大まかに知っている。でも、現実にこの世界に召喚されてしまった自分はここで何をしたらいいのか?そこが知りたい。
いつまでも小説の展開を恐れてここに引きこもっているのは嫌だ。それに恋愛要素以外にもこの世界で聖女がやるべきことがあるんじゃないかと思う。そうじゃなきゃ召喚する労力や資金が勿体ないでしょ?
「聖女の役割って何?」
悪魔退治?瘴気とか魔素とかの浄化?それとも災厄を魔法で防ぐとか?
どれもできそうにないし、現実的に私には無理。
「そうですね 今のところ我が国は差し迫った危機的問題は発生していませんね」
エドから聞くこの国の歴史の中にも飢饉や災害はどこの世界でも同様にあったけど、そのときに聖女が活躍するとかそういう伝説があるとか聞かなかった。そういうのがあったとしても、今の私には魔法も超能力も何も備わってない。
元の世界はAIとか最近いうようになったけど、魔術・魔法・超能力は夢物語の中の実在しないものだし、私という人間はただの女子浪人生で医学や薬学のち知識もなければ物を作りだす技術もない。
「最初からそんなものは求めてませんから」
またエドが私の頭の中を読み取ってため息を吐きながら答える。
「そんなんだったら、私を元の世界に帰してよ!」
エドに当たっても仕方がないとはわかっていても、どうしようもなくて怒りをぶつけてしまった。
「そうですね 確かにあなたは勝手にこの世界に召喚された被害者でもあります。申し訳なかったと私も思います」
怒っているだけで泣いているわけではないのに、向かいに座っていたエドは立ち上がり手を伸ばして私の頭をよしよしと撫でてくれた。エドは時々こんな感じに私を気遣ってくれる時があって困る。
「あなたには大事な役割があるのです」
いつもよりも増して優しい口調でエドは言う。役割って?
「この世界はメティス女神を崇拝する女神信仰があります」
西洋寄りのこの世界、宗教はきっと重要な位置にあるのだろう。日本人のようにほぼ無信教の国民には理解できないところがある。
「それで?」
「その女神信仰の中にある言い伝えに、『異なる世界より訪れし女神と契りを交わすべし、さすれば未来は開かれるであろう』という一文が極秘事項で存在します」
「・・・」
それって?
頭の中で思ったこと。それにゆっくり頷くエド・・・
この小説、18禁小説だった?急に恋愛要素から子を成す方向に設定変更されて黙っていられるはずがない。
「18・・・?っていうのはよくわかりませんが、姫様がこの世界に召喚し、そしてこの世界でどなたかと情を交わす。それがこの世界の平和に繋がるのです」
馬鹿言うな~ 私の人権?自分の人生を選ぶ権利を何だと思っているのよ~




