Ⅵ_夕餉
※糞食描写注意
そして、俺たちは薪になりそうな枝を拾いながら足を進めていき、夕暮れの寸前あたりになってから、野営のための火を焚いた。
ラティロは鍋に川の水を沸かし、採ってまだ半日も経っていない山菜を、皮つきのじゃがいもと一緒にぐらぐらと煮込み始める。
「この草は食べられるのですか?」と真っ黒になる汁を見て不安そうにするアイニーちゃんに、
「ええ、黒ゼンマイと言う野草で、食べるには灰汁をしっかり取るのがコツですよ」
と、ラティロはサバイバルグルメのウンチクを楽しそうに語りだした。
俺もアイニーちゃんとお話ししたいんだけどな――――!
まるでガールズトークな世界観から追い出されるように、俺は強面の野郎とお肉狩りに行かされた。はあ。
俺とマイフそれぞれウサギを一頭ずつ仕留めて、血抜きと皮剥ぎを済ませてから戻った。それをラティロが刃渡りの短いナイフで手早く解体して、肉をぽちゃぽちゃと汁の中に放り込んでいく。
「内臓も使うのですか?」とウサギが捌かれていく様子を興味深そうに見ているアイニーちゃんに、「ええ、ウサギの糞の詰まった腸を、このままソーセージのように捻ってよく焼いたものも食べられますよ」と、ラティロは珍味のウンチクを楽しそうに語り出した。
うん、ラティロ、ちょっと待って?
ウサギのウンコって食えるの?
結果、今日の晩飯は、汁が真っ黒なウサギ肉の山菜スープとウンコソーセージだ。
スープはうまかった。ウサギ肉の淡白すぎない口当たり、黒ゼンマイのしこしこした食感と濃厚な味。野宿の飯にしては食べ応えがある。じゃがいも入ってるからかな?
「ウサギってよォ、確か栄養補給のためにウンコ食うんだよな?」
「マイフ、食事中にその話やめて?」
苦い草の味がするソーセージは、マイフも俺も腹満たしのために手をつけた程度で、アイニーちゃんも微妙そうな顔をしていた。
食べかけのソーセージを片手に、ラティロは、
「このあたりは草の生えている場所が限られているから、ウサギが食べる植物の種類も限られているんだ。糞の形と匂いからして、この腸詰めは食べられると判断したんだけどね」
と、俺たちの反応を見て自慢気に話していた。ソーセージを平気で食べている。やたら嬉しそうなのは、大物のハントで機嫌がいいのと、むさいパーティに花があるからだろう。
鍋は空っぽになった。汚れた食器を川の水ですすいで、武器の点検をしたら、そろそろ寝る時間。睡眠に使う九時間の中で、三時間交代で見張りをする。男衆で「じゃんけんぽーん!」したところ、マイフが一番、俺が二番、ラティロが三番目となった。
で、アイニーちゃんはラティロの隣で眠ることに決定。俺はめっちゃ離れて寝るように命じられた。さらに、ラティロは革の鞘に入れた刃渡りの長いナイフを「万が一の護身用です」と、アイニーちゃんに渡していた。
「あ、あの……」
「不安もあるでしょうから、武器を手に持っていた方が落ち着くと思います。身の危険を感じたら容赦なく刃を抜いてください。躊躇いは禁物です」
「俺をちらっ、て見ないでよラティロ」
「大丈夫です。何かあったら、わたしがアイニーさんをお守りしますから」
きらーんと白い歯が光りそうないい笑顔。
外見ショタのくせに、イケメン気取りしちゃってさー。
焚き火を申し訳程度の明かりにしてから、マイフが槍を抱いて木にもたれかかった。
チャンスは寝て待て、ってやつかな。
自分の荷物を枕にして、俺はごろりとふて寝した。
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