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無限想歌  作者: blue birds
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keyB-2,3共通:存在確率0%:始まりの場所、終わりのとき:伊吹由香

いよいよ、小羽ちゃんと伊吹さんの、会合です。




keyB-2,3共通:存在確率0%:始まりの場所、終わりのとき:伊吹由香





 いろんなモノが、私の中に流れ込んできた。

 それは、誰かの記憶---いや、感情。



 ただただ私のことを憎む、誰かの心が---私の中に流れ込んでくる。




「はぁ、はぁ、う、はぁ・・・・・・」




 丘に近づけば近づくほど声は大きくなり、同時に憎悪のうねりは激しくなる。

 私の中に吹き荒れる、断罪の念。ひたすらに私を攻め立てる、あの娘の声。





「あと、少し・・・・・・・」






 本能は、「逃げろ」と告げる。

 行けば、死よりむごたらしい現実が待っていると---けれど。




「・・・・・・く!」





 けれど、それでも私の心は、丘の向こうを目指す。

 理性と本能よりも、さらに、深いところで。





 私は、やらなければならないことがあると、そう感じていたから。






keyB-2,3共通:存在確率0%:姉妹世界αー相対過去:相克する因果9-歪曲する因果9:寿小羽(黒)



 




 かさりと、響く音。それに添えるように、荒い息づかいが聞こえる。




 ーーーー振り返ればきっと、あの人がいると感じた。

 我が一族と民を滅びに導いた、諸悪の根源。思い焦がれた、私の敵。


 その敵を背に、私は振り返らない。燃え盛る城下を見下ろしながら、私は敵に問いかけた。

 



「こうしてみると、とても幻想的な光景ですね。

あの明かりのもとでは、今まさに命の灯がかき消されているというのにーーーそれでも、こんなにも、あの明かりは世界を照らしている。

ふふふ、滑稽ですよね。そう、思いませんかーーー伊吹由香さま?」





 私はあえて、敵を伊吹由香と呼んだ。

 ねぇ様ではなく、現世の名で。





「……」





 私の問いに、ねぇ様は答えない。

 ただただ無言で、私の後ろに立ち尽くしている。



 ーーーでも、それでよかったのだ。

 それこそが、私の求めていた答え。






「現世のあなたに、罪がないことは存じております。

輪廻より漂白されたあなたの魂は、まさに純白のそれーーーなのでしょうね。

真っ白で美しく、そして、そこには伊吹由香という新たな物語が刻まれている……いえ、刻まれつつあるといった方が、正しいのでしょうか?」




 私はクスリと笑うと、目を細めた。

 そして、そっと腕を上げる。そこからこぼれ落ちるのは、私の力の化身である黒炎だ。




「それ比べて、私はこんなにも真っ黒くろ。

醜く淀んだ、泥沼のそれと同じーーーどうして、わたはこんな風になってしまったのだろう?

どうして、わたしだけ、「こんな世界」に取り残されてしまったのだろう?

なぜ、どうして?ねぇ、どうして?この罪は、「あなたの罪」のはずなのに!!!

なのに、あなたは許され、わたしは!!!!」




 燃え盛るこの地獄は、私の罪ではない。この地獄をもたらしたのは、背後の敵のはず!

 なのに!




 ーーー私は黒炎に蛇の形を与え、地を疾走させた。

 蛇が通った後には、魂を焼く炎の軌跡。それは、私と敵を閉じ込める形で、奇麗な円を描いている。




「なぜ、ここにきた!? 殺されるだけだとわかっていながらなぜ!!?」





 今や、私と敵はつながっていた。

 兄さまと私がつながっていたように。それと同じように、私たちはつながっている。



 だから、敵は感じているはずだ。

 わたしの、やつに対する憎悪を!殺意を!そして、この、圧倒的な、深淵の力を!

 なのに!なのに!




 この女は、なぜ、こんなにも!!!!!!






「来なければならないと、想ったの。逃げ出すことだけは、できなかった。

……理由はわからない。

理由はーーーわからないのだけれど。でも。でも、私はーーーー」








 敵が、口を開いた。

 それが、合図だった。

 断罪のときを告げる、時のこえ。






「どうでもいい。お前の罪は、ここで終わる。




     しね。」



 私は、力を振るった。

 この、無尽蔵の力を。その、すべてを。そしてーーー






       ☆





Tips~歪曲する因果:錯綜する時間軸



 仮に、「決定された過去」を改ざんしたことで、それにあわせて「現在と未来」が変わるとしよう。

 それは、つじつまの合う話だ。過去の上に現在と未来がある以上、当然の話。

 だから、「過去」で人殺せば、その殺された事実にそうように、「現在」は作り替えられる。かりに、それがおかしいことだとしても、だ。






 では、ここで私はあなたに問う。

 仮に。



 仮に、「不確定であるはずの未来」が、「確定された」としよう。

 そうたとえば、過去の世界と未来の世界をつないだ場合。






 ーーーーその場合、「ある悲劇の上に成り立つ未来」が「過去」に及ぼす影響とは、果たして?



 小羽ちゃんは、城下の悲劇は伊吹さんのせいだといいました。そして、それはじじつです。でも。

 でも、本当にそうでしょうか?




 ……未来と過去が、錯綜しています。

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