keyB-2,3共通:存在確率0%:始まりの場所、終わりのとき:伊吹由香
いよいよ、小羽ちゃんと伊吹さんの、会合です。
keyB-2,3共通:存在確率0%:始まりの場所、終わりのとき:伊吹由香
いろんなモノが、私の中に流れ込んできた。
それは、誰かの記憶---いや、感情。
ただただ私のことを憎む、誰かの心が---私の中に流れ込んでくる。
「はぁ、はぁ、う、はぁ・・・・・・」
丘に近づけば近づくほど声は大きくなり、同時に憎悪のうねりは激しくなる。
私の中に吹き荒れる、断罪の念。ひたすらに私を攻め立てる、あの娘の声。
「あと、少し・・・・・・・」
本能は、「逃げろ」と告げる。
行けば、死よりむごたらしい現実が待っていると---けれど。
「・・・・・・く!」
けれど、それでも私の心は、丘の向こうを目指す。
理性と本能よりも、さらに、深いところで。
私は、やらなければならないことがあると、そう感じていたから。
★
keyB-2,3共通:存在確率0%:姉妹世界αー相対過去:相克する因果9-歪曲する因果9:寿小羽(黒)
かさりと、響く音。それに添えるように、荒い息づかいが聞こえる。
ーーーー振り返ればきっと、あの人がいると感じた。
我が一族と民を滅びに導いた、諸悪の根源。思い焦がれた、私の敵。
その敵を背に、私は振り返らない。燃え盛る城下を見下ろしながら、私は敵に問いかけた。
「こうしてみると、とても幻想的な光景ですね。
あの明かりのもとでは、今まさに命の灯がかき消されているというのにーーーそれでも、こんなにも、あの明かりは世界を照らしている。
ふふふ、滑稽ですよね。そう、思いませんかーーー伊吹由香さま?」
私はあえて、敵を伊吹由香と呼んだ。
ねぇ様ではなく、現世の名で。
「……」
私の問いに、ねぇ様は答えない。
ただただ無言で、私の後ろに立ち尽くしている。
ーーーでも、それでよかったのだ。
それこそが、私の求めていた答え。
「現世のあなたに、罪がないことは存じております。
輪廻より漂白されたあなたの魂は、まさに純白のそれーーーなのでしょうね。
真っ白で美しく、そして、そこには伊吹由香という新たな物語が刻まれている……いえ、刻まれつつあるといった方が、正しいのでしょうか?」
私はクスリと笑うと、目を細めた。
そして、そっと腕を上げる。そこからこぼれ落ちるのは、私の力の化身である黒炎だ。
「それ比べて、私はこんなにも真っ黒くろ。
醜く淀んだ、泥沼のそれと同じーーーどうして、わたはこんな風になってしまったのだろう?
どうして、わたしだけ、「こんな世界」に取り残されてしまったのだろう?
なぜ、どうして?ねぇ、どうして?この罪は、「あなたの罪」のはずなのに!!!
なのに、あなたは許され、わたしは!!!!」
燃え盛るこの地獄は、私の罪ではない。この地獄をもたらしたのは、背後の敵のはず!
なのに!
ーーー私は黒炎に蛇の形を与え、地を疾走させた。
蛇が通った後には、魂を焼く炎の軌跡。それは、私と敵を閉じ込める形で、奇麗な円を描いている。
「なぜ、ここにきた!? 殺されるだけだとわかっていながらなぜ!!?」
今や、私と敵はつながっていた。
兄さまと私がつながっていたように。それと同じように、私たちはつながっている。
だから、敵は感じているはずだ。
わたしの、やつに対する憎悪を!殺意を!そして、この、圧倒的な、深淵の力を!
なのに!なのに!
この女は、なぜ、こんなにも!!!!!!
「来なければならないと、想ったの。逃げ出すことだけは、できなかった。
……理由はわからない。
理由はーーーわからないのだけれど。でも。でも、私はーーーー」
敵が、口を開いた。
それが、合図だった。
断罪のときを告げる、時のこえ。
「どうでもいい。お前の罪は、ここで終わる。
しね。」
私は、力を振るった。
この、無尽蔵の力を。その、すべてを。そしてーーー
☆
Tips~歪曲する因果:錯綜する時間軸
仮に、「決定された過去」を改ざんしたことで、それにあわせて「現在と未来」が変わるとしよう。
それは、つじつまの合う話だ。過去の上に現在と未来がある以上、当然の話。
だから、「過去」で人殺せば、その殺された事実にそうように、「現在」は作り替えられる。かりに、それがおかしいことだとしても、だ。
では、ここで私はあなたに問う。
仮に。
仮に、「不確定であるはずの未来」が、「確定された」としよう。
そうたとえば、過去の世界と未来の世界をつないだ場合。
ーーーーその場合、「ある悲劇の上に成り立つ未来」が「過去」に及ぼす影響とは、果たして?
小羽ちゃんは、城下の悲劇は伊吹さんのせいだといいました。そして、それはじじつです。でも。
でも、本当にそうでしょうか?
……未来と過去が、錯綜しています。