keyB-2,3共通:存在確率0%:始まりの場所、終わりのとき:伊吹由香
さて、東君はドロップアウトしてますので、しばらくは伊吹さんが頑張ります。
keyB-2,3共通:存在確率0%:始まりの場所、終わりのとき:伊吹由香
右を見ても左を見ても、阿鼻叫喚の地獄絵図。
耳を塞いでもこだまする命の断末魔は、いったい誰のものか。
「……」
燃え盛る炎に巻かれながら、転がる躯。
涙する老婆のそばには、誰かのために祈りを捧げる母親。
「……」
そんな地獄を駆け抜けながら、私は必死に蒼穹の丘を目指していた。
それがどんな場所か、私には分からない。けれど、私を底に誘う声には、聞き覚えがある。
『はやく、ねぇさま……小羽は、ここです』
その声は、夢の女の子の声だった。
寿小羽ーーーそう、夢の少年と少女が。そして、おそらくは、利也が「あいつ」と呼んだ、小さな小さな、女の子の名前。
彼女の声が、どこからともなく私に届き、進むべき道を示す。
「……っつ!」
私は今、理解の及ばない世界にいる。それは現実にはあり得ない世界で、そうまるで、悪い夢を見ているようだ。
……でも、これが夢でない事が、私には分かる。どうしようもないほどに、私はこの世界が現実なのだと、そう、感じていた。
そのせいか、さっきから膝が震えてとまらない。
目の前で無惨に切り裂かれる少年も。
目の前で迫り狂う火に巻かれる老人も。
かなうべくも無い相手に助けを求める母親の声も。
家族を守ろうとする無力な男性の怒号も。
狂ったように笑う武者の狂気も。
そのすべてが夢には思えなくて、私は。
おもわず、私はよろけて転んでしまった。
そして、そこにタイミング悪く、私の上に誰かがどさりと倒れ込んできた。
ーーーその人は、私の体を素通りし、地面に落下する。目と目がーーーあった、気がした。
でも、それは気のせいだろう。どうやら私は、この世界の人たちにとって、幽霊みたいな存在らしい。
だれも、わたしの事を見向きもしない。
……私に倒れ込んできた、その人は、女性だった。もとは、きっと美しい女性だったのだろう。
けれど、今は見る影も無い。髪と服がはぎ取られ、陵辱された後が見て取れる。私は、彼女に声をかけようとした。
この声が届く事は無いと知っていながら、それでも、声を上げずにはいられなかったのだ。
『うっがっ』
私が口を開こうとした瞬間。
まさにその瞬間に、女性は両の目から涙を流し、そっと、息を引き取った。
……思わず、私は俯いた。それ以上、彼女を視ていられなくて。
そして、「それ」が視界に入った。『それ』は刀のようでありながら、実際は赤黒い何かで、そして、そんな何かが私の胸から女性の胸へと伸びていたーーーえ?
『さて、オンナはまだ残ってるかね・・・…?』
ずるりと引き抜かれる、『それ』。顔を上げると、ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべた男が『それ』を肩に乗せ歩き去って行くところだった。
視界が、暗転しようとした。
もちろん、『それ』が私を傷つけたわけではない。貫かれた私の体は、血を流していない。けれど。
それでも、幾人の命を奪ってきたであろう『それ』が一時的であれ、私の中に入っていたーーーーそう思うと、一気に胃から熱いものが這い上がってきた。
ゲホゲホと、私はむせる。
しかし、なにも出てこない。
空咳のように、でも、不快なものが腹の底から喉を通って、出て行こうとする。
『はやく、ねぇさま……小羽は、ここです』
そんな世界にあって、声が私を導く。
はやく、ここへ来い。はやくはやく、ここへいらっしゃいなさいなと
次は、小羽(黒)ちゃんです。
しばらく東君はお休みです、はい。すくなくとも、シロさん達がやらかすまでは。