謳歌と怨火:孤立無縁の想いの渦2":寿小羽
さて、重い話の続きです。
gold gate-遥かなる未来-揺らぎの世界1-その先へ
身の程を超えて、寿小羽は「その先」を望んだ。
「ぜったいに、貴方は大丈夫です。たとえ始まりを見失ってしまっても、そんなの関係ない。
何時からだって、始められる。どこからだって、人は歩き出せるーーーだって、私がそうだったから!」
遥かなる高みに身を置く存在に、小羽は断言した。あなたは、大丈夫だと。
あなたならきっと、乗り越えられると。
されど、神祖はそれを一蹴した。人であることを手放し、世界と同格となったモノにとって、唯の小娘の「願い」など、一片の価値もなかったのだ。
「おごるなよ、小娘が。
貴様程度に、何が分かる。ただの残滓が、神に意見するのか?身の程を弁えろ、さもなくば、殺す」
神祖は、小羽の言葉を取り合わない。それどころか、それ以上口を開けば、殺すとまで言ってのけた。
「あなたがそれを望むのなら、どうぞご随意に。この命は、あなたに救われたもの。今すぐにそれを返せとおっしゃるのなら、私は喜んでお返しします」
小羽は、退かない。唯の一歩も、退かなかった。
それは、あのときの「言の葉」を、少女が忘れてはいないという証明でもあった。
「あなたの始まりが何だったのかなんて、私には分かりません。あなたが今居る場所さえも、私は理解できない……けれど、私は信じています。あなたなら、もう一度始められるとーーーーあのとき。
あの、ひとりぼっちで闇に飲まれそうだった私に「そう」言ってくれた人を、今でもわたしは信じているから!今でも、私は信じてる!だから……!」
ーーー神祖は、そこまで少女の言葉を聞遂げると、踵を返した。流れる動作で空間を歪ませ、隣の世界への扉を開く。転移には、秒と掛からなかった。
けれど、その一瞬とも言える時間があれば、十分だったのだ。
最後に、神は聞き届けた。それは、神となったモノが望んで得たわけではなかったが、それでも、それは神の元に届けられたのだ。
それは、すなわちーーーー
ぜったいに負けるな、神様!真理なんて、張り手の一つでぶっ飛ばしちゃえばいいんです!ーーーと。
※
謳歌と怨火:孤立無縁の想いの渦2:寿小羽
わたしは唯、幸せになりたかった。ただそれだけだったのに、皆がそれをダメって言った。皆が許してくれなかったから私は、こんなふうになった。だけど、今は寂しくない。だって、『皆』が居てくれるから。
『そう、私は大丈夫。だって、皆が居てくれるから』
なんで、あいつは僕を虐めるんだ?母親のくせに、子供を殴るなんて……でも、僕はもう大丈夫。だって、こんなにも暖かい『家族』が居てくれるんだ。
『家族が傍に居てくれるーーーだから、私は独りじゃない』
どいつもこいつも私をバカにしやがって!そんなに、私が惨めか?それほどまでに、貴様等は出来た人間なのか?
……まぁ、いい。今となっては、それも過去。私にはもう、『仲間』が居る。私を理解してくれる、暖かい場所がココにはあるのだ。
『……そう、私には仲間が居る。何も恐れることはない。今の私なら、何だって出来る。アノ女から、にいさまを救い出すことだってーーー『おきろ、寿小羽。貴様はまだ、此処で終わるべきではない』』
gold gate----noize--------
禁忌を感知-------理の歪曲が確認されました。
すぐに修正を開始します……
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もぢふぁ
dまおふぃdふぁ
mふぉあいふぁ
ーーーーー修正不可。異層間の理が混在しています。
別のアプローチを掛けます。現在、修復過程をshift1に移行中ーーー
※
謳歌と怨火:孤立無縁の想いの渦 番外:寿小羽
「顔を上げろ、寿小羽。なにを俯いているのだ?」
私を包んでいた声が祓われ、銀の声が生まれた。
銀はその生来の役割を果たし、私を闇から救い上げてくれたのだ。
それでも、私は顔を上げることが出来ない。蹲って、歯を食いしばって、ただ震えることしか出来ない。
「……もう一度言う。顔を上げろ、『寿小羽』。これは、命令だ」
私に命令する声は、その内容とは裏腹に、とても優しかった。自然と、私は顔を上げる。それと同時に、昨晩の少女ーーー「銀の人」と、目が合った。
彼女は、昨晩と変わらぬ表情で私を見据えている。
ただ、昨晩と違うことが在るとすればそれは、「此処」が夢の中ではないということくらいだろうか。
「夢であればと、望んだのだろうな。さきほど貴様を包み込んでいたすべてが、夢であったらとーーーそう、想ったのだろう?」
私は顔をくしゃくしゃにすることで、銀の人の問いに答えた。
必死に心を押し殺しているのに、涙がこぼれ落ちる。堪えきれなかった嗚咽は伽藍胴な廃墟に響き渡り、私が孤独であることを強調する。
「これは夢ではない、現実だ。
本来なら、わたしは此処に干渉できる身分ではない。しかし、幸いにして此処は、神の為の聖域だ。なり損なった私であれば、介入も可能になる……
もう一度、言う。これは夢ではない。どうしようもないほどに、現実だ。
しかし、わたしは夢と同じことを、お前に問おうと思うー――お前は、誰だ?」
私は再び、見知らぬ少女に問いかけられた。
何の脈絡も無い、その問い。
けれど、私はその意味不明な問いに対し、何の戸惑いもなく答えることが―――出来た。
「わたしは、化け物です。誰かを憎み、呪い続けることしか出来ない、そんな、汚れたモノ……」
私は、答える。見知らぬ少女に、確信を持って。
はっきりと、私は答える。
『それでは、半分だ。お前が感じている通り、それでは不十分なんだよ』
虚空に浮かぶ少女はニヤリと人の悪い顔を浮かべ、私を見据える。
そして、もう一つ問うた。「東利也とは、何者か」ーーーと。
ーーー東利也とは、何者か。
そんなこと、考えるまでもない。
そんなの、分かりきったことだったのだ。
「あの人は、私の「兄であった」人です。でも、今は唯の別人。
あの人は、私が待ち続けたにいさまじゃない!」
ただの直感でしかないその答えに、少女は笑みを濃くする。
少女の笑みに呼応するかのように、世界はその闇を濃密にし、同時に彼女の鮮やかな銀髪がさらなる輝きを増す。
「やはり、不完全だ。しかし、それでいいんだよ、寿小羽。
……これが最後の質問だ。最後に、もう一つーーー伊吹由香とは……」
「そのおぞましい名を口にするな汚らわしい!その名を、私の前で……!」
吹き上がる、憎悪。
それは今や圧倒的な存在感を持って、私を包み込んでいた。
私の吐く息に、黒煙がまじりだす。
「今宵、一つは二つに分かれた。そしてその意味は先告の通り、お前の中にある。
……お前には荷が重過ぎる話だろうな、寿小羽。しかし、これは避けられぬ運命だ。そして、この運命の先でお前は、幸せになる」
銀のふざけた戯れ言に、私は黒煙を巻き付かせる。そして、すべてを吞み込もうと、自身の一部を炎蛇に変え、少女に襲いかかった。
「ふざけるな!こんな私が、幸せになれるものか!こんなふうになった私を、にいさまが受け入れてくれるはずもない!こんな、私を!こんな、こんな、汚らわしい私を!」
しかし、私の炎が少女に絡み付こうとした瞬間に、真っ白な光が闇を照らし、私の蛇を焼き祓った。そのときに感じたのは、少女と私との間にある絶望的なまでの戦力差だった。
少女は涼しい顔で、私を見据えている。そして、一瞬ふっと表情を崩すと、とても慈愛に満ちた声で。
「なにがあろうと、貴様は大丈夫だ。お前なら、かならず「その先」にたどり着けるーーーと、私は信じている。
……たとえ始まりを見失ってしまっても、そんなことは些細なことなのだろう?
何時からだって、始められる。どこからだって、人は歩き出せるのだとーーーそのことを、お前はーーー」
最後まで言わすまいと、私は再び炎を放つ。少女の顔を黒こげにする為に。
あの、忌まわしい呪詛を垂れ流す口を、溶接する為に私はーーー!
gold gate----修復完了--------
現状を修復しました。-------エラーの積算による因果の歪曲は誤差範囲です。引き続き、世界を進行させます。
謳歌と怨火:孤立無縁の想いの渦2":寿小羽
わたしは唯、幸せになりたかった。ただそれだけだったのに、皆がそれをダメって言った。皆が許してくれなかったから私は、こんなふうになった。だけど、今は寂しくない。だって、『皆』が居てくれるから。
「やめて! わたしは、違う! 私はまだ、幸せになれるの!」
なんで、あいつは僕を虐めるんだ?母親のくせに、子供を殴るなんて……でも、僕はもう大丈夫。だって、こんなにも暖かい『家族』が居てくれるんだ。
『ちがう! 私の家族は、こんなのじゃない! こんなふうに、人を呪ったりしない!』
どいつもこいつも私をバカにしやがって!そんなに、私が惨めか?それほどまでに、貴様等は出来た人間なのか?
……まぁ、いい。今となっては、それも過去。私にはもう、仲間が居る。私を理解してくれる、暖かい『家庭』がココにはあるのだ。
『……たすけて。
誰でも良いから。だれでもいいから、お願い!此処から私を連れ出してよ!』
次は、視点が兄貴の方ですね。




