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無限想歌  作者: blue birds
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謳歌と怨火:歪曲する因果7:寿小羽&久遠栞

前書き


少しだけ先の未来2へとつながりました。

そして、悲劇は翁が言うように、順当に回避ーーーされるのでしょうか?




謳歌と怨火:歪曲する因果7:寿小羽&久遠栞



 

「にいさま、ここが縁結びの神様がいらっしゃる社ですか?」



 目をキラキラと輝かせながら、『念』は社を指差した。

 そして、速く速くと私を急かすように、手を引っ張る。



「おいおい、そんなに引っ張るな!

そんなことしなくても、神様は逃げないって」


 急かす『念』に、心ない笑顔と言葉で静止を掛ける。

 私だって、早く社に入りたいというのは、『念』と同じだ。そうすれば、全てが終わらせられるのだから。

 しかしいかんせん急な山道を上がってきたため、体力がついていかないのが現状。





 私と念の前には光で満たされた神の社が、顕現していた。社を維持する人間は、一人も居ない。しかし、晃晃と社を照らす提灯や、光を受けて輝く本堂の金ぱくは、見る者の心を奪う。

 ーーーあきらかに、不自然な光景だ。麓から社まで続く山道はくたびれており、獣道と変わりなかった。草木が、伸び放題だ。それは、今でもこの社に参拝客があるとすればーーーあり得ないことだ。

 そんな山道の先に、光で彩られた絢爛豪華な社。鳥居は真新しい朱で染められており、まさに「今建てられたばかり」と言われても、納得がいく。

 


 周りを見渡しても、人の気配はなし。晃晃と光に浮かび上がる、社が在るばかりだ。



「にいさま、速く!たぶん、あそこが!」



 ここに来るまで、どれほどの茶番を演じたことか。

 東くんと『念』に不和をもたらすためと称して、彼らを不確定要素(宿の外)に誘い出すことから始まりーーー次いでは、『念』を閉じ込める為の、檻作り。これにしても、完全ではないという意味では失敗に終わっている。

 そして、そこからさらに東君と『念』をストーキング。そして、不和……ここが一番の問題だったけど、なんとかなった。ぶっつけ本番での、『不和』の作成。 これには、二人の間の「認識の差異」を増幅することで、事を成した。







 彼らは、この二日間で急速に心を通わせ合った。

 人と人が心を通わせ合うーーーそのこと自身は、普通なら、喜ばれるべきことかもしれない。しかし、彼らの場合、状況が普通ではない。

 彼らは生者と死者という境界を超え、輪廻という理を無視して、重なるはずのない場所で同じ時を過ごし、心を重ねた。


 それもこれも、輪廻で消しきれなかった「傷魂」のせいだ。あれが東君と『念』との間に妙なパスを形成させなければ、こんなことにはならなかった。

 過去と現在が、このようなカタチで錯綜することはなかったのだ。



 ……けれど、彼らを引き合わせたのが「傷魂」なら、彼らを引き裂くのもまた、「傷魂」だ。


 この世界で受肉している東君にとって「傷魂」は、あって亡きモノ。過去の残りカスなど、現在を生きることに必死なモノにとっては、何の価値もないのだ。


 しかし、この世界で中途半端に残されたものーーーそう、「念」にとってみれば、それが全てだ。なぜなら、単独ではこの世界の全てに干渉できない「念」にとって、それだけが、世界と繋がっているという唯一の証なのだから。もし、それすら失うとなれば、「念」は孤独という地獄で漂い続けることになるーーーであるからこその、「念」はその性質として、同種の感情を溜め込もうとするのだろうが……


 なんにせよ、東君と「念」は「傷魂」で繋がっている。しかし、「傷魂」により形成さるのはあくまでも、「過去より成る縁」だ。

 それを介して、二人は「現在」繋がっているーーーそれは、あまりにも歪過ぎる関係だ。


 「過去」の縁をもって、「現在」という時を重ねた結果。

  

 ーーー結果として、「念」は東君に「過去」を求め、東君は「念」に「現在」を求めた。



 

 そうなれば、ズレが生じる。それはどうしようもない程の、決定的なズレだ。

 そのズレは、「少しのお金で少年達に悪ふざけをさせれば」、亀裂と成る程の、致命的なもの。




「あなたは……栞?

なんで? にいさまは……どこ?」」




 何一つ理解していない顔で、『念』は私を見上げていた。

 まるで、キツネにつままれたーーーような、そんな、表情だ。それも、そのはず。本来なら、彼女は兄と手を取り合い、神に縁結びを願うはずだった。

 それなのに、此処に居るのは、兄ではない。此処に居るのは、ただのーーー






『……』




 『念』は、私から二メートル程の離れた場所に倒れ込んでいる。理由は、私が突き飛ばしたからだ。

 そして、私の背にはーーー厳粛なる、扉.


 私は無言で踵を返すと、扉をくぐり、すばやく社の外へ。

 そして、翁から渡された鍵を使い、社を閉じたーーーもちろん、『檻』という意味での、社を。



 ガチャリという、腹の底に響くような重音が、夜の世界に響き渡る。

 それまで惚けていた『念』は、ここにきてようやく、立ち上がった。しかし、もう遅い。




『え、え!?

 ちょっと待って! なにするの!?』



 転がるように扉に到達した『念』は、全体重を掛けて扉に突進した。しかし、その程度で社が揺らぐはずもない。物の見事にはじき返され、ひっくり返る。


 しかし、この程度で揺らぐはずもないのは『念』も同じで、必死に扉に拳を振り下ろしていた。



 扉を開けようと、『念』は必死だ。

 しかし、叶うべくもない。いくら想いをかけようとも、必死に拳を振りかざそうとも、神の域を、ただの『念』に犯せるはずもない。



 月光が降り積もる中、ふと、『念』と私は目が合った。



 

 私たちは扉を挟んで、対峙している。

 私たちの間にあるのは、たった一枚の扉。言ってしまえばそれだけで、それ以上のものは何もなかった。



 敵意もなければ、憎しみもない。

 私たちの間には、何もない。私たちは、私たち以外のモノを想うが故に、此処にこうして相見えている。

 



 ……怯えた目でこちらを見る『念』のそれは、年相応の娘を思い起こさせる。




「……」



 私は無言で、踵を返した。

 ゆっくりと、その場を去るーーーそれはもちろん、私の意思表示だ。




『いや! なんで!? どうして!?

あけて! ここ、開けて! いや、いやーーーーーー!!!』





 その声は、決して誰にも届かない。

 どれほど声を上げようとも、その声が、この心に響くことはない。




 あとは、東君の方をどうにかするだけ。

 あと残された問題は、それだけ。たったそれだけで、私たちはーーーー



 






the gold gate----------



 ???及び精霊種の干渉により、変数改変を確認しました。


 「順当なる悲劇の終息」は、破棄されます。


 破棄された世界の存在確立は、90%です。

 物語は、10%の世界群へと進路を進めています。





 後書き


 お知らせです。

 この物語のオチはハッピーエンドにしますと「あらすじ」に書きましたが、

 予定を変更してマルチエンドにします。理由は、エンディング一つだと、何言いたいのか分からなくなるからです。


 選択肢はもう少し先で生じる予定です。

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