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無限想歌  作者: blue birds
26/145

夢想歌:interval:遠き彼の地において、少女は夢を見る



-----どこにでもある話----



あるところに、とても美しい姫様と若様がおられました。



お二人は治める国こそ違えども、国という垣根を越えて、愛し合っておられました。


そんなお二人の仲の良さは、国境を隔てたほかの国々にまで広まり伝わる程だったと言われています。




だから、でしょうか。

結局のところ、お二人は結ばれることかなわず、終には人の生み出す悲しき業に飲み込まれ、失意のうちに命を絶たれたといいます。









-----------アカシックレコード----------





 信じていたのに、裏切られた。



 愛していたのに、裏切られた。



 姉さまは、私たちを裏切った。にいさまを、私を・・・・・・裏切り、そして、民の命を奪った。




 許さない。


 ゆるさない。


 ゆるしてなるものか。



 のろってやる。


 たたってやる。



 

 いんがはめぐる。くりかえすいのちはさいかいをはたし、ひげきはさいりんする。





 つぐなわせよう。しゅらとなり、つぐなわせよう。




 われは、おちる。おちて、おちる。あのおんなとともに、ならくのそこへとわたしたは


 









----------




夢想歌:interval:遠き彼の地において、少女は夢を見る



「災難だったようだな、伊吹由香。

しかし、お前らしいといえば、お前らしい」





目の前には、昼間の少女。

ふわりふわりと闇の中にその身体を浮かせ、私を嗤っていた。




「あなたのせいで大変だったんです!

あんな中途半端に言われても、何も分かりません!というより、知らないよりタチが悪い!」




 思い出すだけで、顔が真っ赤になる。

 あしたから、どういう顔して学校に行けば良いのか分からない。



「ふん、当初の敬意はどこへやら、ずいぶんと胆が座ったみたいだな。

母は強しということか?」



 

「母親じゃ、ありません!陰性でした!」



 少なくとも、今の私の中には、命は宿っていない。

 ……将来的には、分からないけれど。




 


「陰性ね……そう言う問題でもない気もするが?」




 あきれ顔の少女を前に、私は腹に力を入れる。

 そして、問う。





「あなたは、何なんですか?

お昼の時は何となく雰囲気にのまれて一方的に答えさせらたみたいですけど、でも、そもそも、

人に名を尋ねる時は自分から名乗るものじゃないですか?」




ゆらりと、闇が揺れ動いた。

はっきりと輪郭がみえるわけでもないのに、少女の周りの闇が胎動しているのが分かる。




「伊吹由香……お前は、ヒーローの存在を信じるか?」




 私の問いに答えず、逆に少女は問いかけてきた。

 脈絡もなにもあったもんじゃない。



「ヒーローって、なんですか?

そんなこと、今は関係ない話でしょう。そのまえに、あなたはいったい……」




 銀色に輝く、少女の髪色。

 闇を祓う淡い燐光が髪よりこぼれ落ち、闇へと堕ちる。



「な〜に、架空存在のはなしだ。神とサンタクロースと肩を並べる、ありもしない幻想の話だよ。

……そんな存在を、お前が信じられるかということだ」






 闇が、祓われる。

 少女の姿がゆがみ、世界が悲鳴をあげる。


 

 少女の顔が、悲しげに歪む。



「信じられずとも良い。

そして、お前達は、同様にヒーローにならずとも良い。

お前達は、幸せを享受する権利と義務があるのだからな。

ただ、ヒーローを否定するな。だれかが清算しなければならないんだ。それだけは、避けられないのだから」





 最後の介入だーーーーその言葉が頭に響き渡った瞬間、世界に光が満ちた。

 そして鳴り響く時の音。




 時刻は、早朝の5時15分。

 新聞配達の、バイトの時間だった。






 






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