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無限想歌  作者: blue birds
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 夢想歌:汝の名を問う3:東利也&寿小羽

 夢想歌:汝の名を問う3:東利也&寿小羽


 なんとなく気まずい空気を引きずりながら、俺たちは電車に揺られて旅館に戻ることになった。


 まあ、駅に着く頃にはなんだかんだで誤解は解けていたからそこまで気がめいるってことでもなく、最後らへんは結構和気あいあいだった気がする。


 でも、それも束の間の幸せなわけで。



「東、一言で良い。「やったか」、「やっていないか」で答えろ」 



 旅館の前に佇むは教育指導兼学年主任のマッスルマイケル。

 外人のくせに日本の武芸に通じ、礼儀作法などに滅法うるさいことで有名な教官だ。


 そのマイケル教官が、無表情に俺に問いかけてくる。

 

 やったのか、やってないのかと。



「俺は……」




 さすがの俺も、「やってない」と叫びたかった。

 「やましいこと」は何一つやってないと、そう、言いたかったのに。



「東、ネタ上がってんだぞオラ!今頃、伊吹嬢は産婦人科だ!てめぇ、シラきったら、家あげて潰すぞ!」

「東君、ここは男らしく認めなさい!もうすぐ、パパになるんだから!」

「いや、パパにはなんないんでしょ?陰性だったってよ?」

「んなことはどうでもいいいいいいんだよ、梅津!問題は、やつが、あいつが、うああああああ!」



 わいわいキャイキャイと騒ぐサルどもを教官連中がこぞって沈めようとしているが、なんてことは無い。

 理性が跳んでるとしか想えないテンションで、学友達は喚き散らしていた。


「東、もう一度だけ訊く。やったのか、やってないのか、どっちだ?」



 相変わらず無表情の、教官。正直、「個室での取り調べてもらうぶんには、こちらもやりやすかったのに、なぜに旅館前!?」と、思わなくもない。



 ……思わなくもないけれど、それを今更言ったって、どうしようもないことだ。

 要は、この事態の収拾をつけるためのデモンストレーションもかねてるんだろうな、このュチュエーションは。



 俺は、ため息まじりに覚悟を決めた。

 そして。



「……やりました」



 言った。言っちまった。

 その結果は、黄色い歓声と絶叫の嵐。


 ここにきて、修学旅行は一番の大盛り上がりを見せていた。



「東、こちらに来い。話がある」



 有無を言わせない力加減で、マイケル教官は俺の肩に手をおいた。

 そして、強制連行という名の隔離処置がとられる。


 

 俺はおとなしく、その処置に従って、うなだれたまま旅館に背を向けた。

 どこに連れて行かれるかなんて見当もつかないが、もう、どうでもいい。


 ……にしても、だ。

 それにしても、昨日から今日にかけて、俺はついてなさ過ぎる。



 昨日の幽霊に取り憑かれたことから始まり、色々あった今日の終いには、恋人の妊娠騒動。幽霊はまぁ、ここでは一旦さておくとして、一体どんな経緯であいつが妊娠したのしてないのの話になったのか見当もつかない。



 しかも、そのオチは結局妊娠などしていないということで……



(由香、お前何やってんの?いったい、学校で、なにがあったわけ?)



 事態の全貌が見えないまま、俺はタクシーに乗せられ、一人(+

幽霊)どこか遠くへ。






――――これが、後に「孕ませ男連行の図」と語り継がれることになる、俺の黒歴史の一旦である。






  夢想歌:月の明かりの下で太陽は涙を流す1:峰岸燈火&久遠栞



 時刻は、午後10時過ぎ。未だ冷め上がらぬ興奮に旅館が揺れ動く中、私、峰岸燈火は一人川縁を散歩していた。



 時折思いついたように川辺の石を拾っては川に投げ込む。

 川の水面は着水の衝撃で揺れ動き波紋を広げるも、私の心はただただ沈んだまま。



 いっこうに、浮かんでくる気配がない。



「あいつ、最低。ほんっとうに、最低……」



 旅館から少し離れるだけで、世界は静寂に包まれる。

 世界を満たすのは虫の声と、月のアークライト。そして、チョロチョロと音を立てて流れる川の水音くらいだろうか。




「でも、恋人同士なら、おかしな話じゃないわよ、燈火。

むしろ、健全って言えるんじゃないかな?」




 水音にまじって響くのは、誰の声か。

 ……そんなの、決まっている。その声は私がモノ御心ついたときから、ずっと一緒に居たのだから。




「栞、しばらく一人にしてって言ったじゃない。

なんで、ここにいるわけ?」




 振り返ると、そこには浴衣姿の親友が幽玄に佇んでいた。主従の関係では私が主であるはずなのに、どうしてか、こういうときの栞を見ると、私は樫づかねばならないような気がしてくる。



 栞は、私が先ほどやったように川原の石を無造作に放り投げた。

 ドボンという音を立てて、石は沈んで行く。



「燈火は、なにも訊かないよね。

なんにも、訊かない……燈火が賢いこと、私は知ってるよ。そして、強いことも。

 私に問いただしたいことなんて、それこそいくらもあるはずなのに、でも、たぶん、燈火の中では既に答えが出てるんだろうね。そしてそれは限りなく正解に近いものなんだろうけれど」




 そこまで言って、栞は言葉を止めた。

 しばし、私たちの間に沈黙が鎮座し、虫の声と川のせせらぎだけが響いていく。


 でも、そんな優しい時間は幾ばくも続かない。私の相棒は、そんなに優しくはないのだ。

 沈黙を始めたのが栞なら、それを破るのも、栞。彼女は、とても優しい表情と、母親を思わせる暖かい声で、こう、私に言った。


 すなわち―――



「由香さんはたぶん、数日内に命を落とす。

 私たちが何もしなければ確実に、由香さんは彼のもとを去るわ……どうする、燈火?そうなれば、きっと、太陽を焦がすあなたの太陽は―――あなたのものになる」

次回は

夢想歌:月の明かりの下で太陽は涙を流す2:峰岸燈火&久遠栞


一旦サブキャラルートに入り直します。

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