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ダークファンタジーになんてさせない、絶対させない。  作者: 学倉十吾
第0話:『物語なら絶対ハッピーエンドがいい。』
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第0話:『物語なら絶対ハッピーエンドがいい。』

 ――物語なら絶対ハッピーエンドがいい。

 〝わたし〟は小さいころから、そう願ってきた。


 たとえば大好きだった恋愛もの。

 つらくて苦しい時間をいっしょに乗り越えて、ついに結ばれたカノジョとカレ。

 なのに迎えた結末が永遠の別離で、あのとき頬を塩っぱくしたのは理不尽さへの悔し涙だったのを忘れやしない。


 たとえば世界を救うために勇気を振りしぼったあの男の子は、

 熱い友情で結ばれた仲間たちを残酷に奪われていって、

 追い詰められて、挫けそうになって、それでも必死で立ち上がって。

 どうして最後にあの子が報われる場面を作者は見せてくれなかったのだろう。


 そういえばパニックホラーものでもあったな、こういうの。

 未知のクリーチャー、ゾンビ、怪奇現象……まあ敵はなんでもいいや。

 とにもかくにも主人公が絶望的なピンチを乗り越えて、晴れやか気分でエンドロール――

 ――のはずが最後の最後でどんでん返し、

 なんと悪夢はまだ終わっていなかったのでした――じゃあないんだよ!


 痛烈なまでの理不尽さで何度も、何度もこの心をえぐっていったたくさんの物語。

 〝わたし〟の苦い、苦い思い出たち。


 どうせ現実(リアル)にいいことなんてない。

 だったら非現実(ファンタジー)くらい、イイ夢見させてくれよ。

 だから。

 だから、物語なら絶対ハッピーエンドがいい。

 〝わたし〟は小さいころから、ずっとそう願ってきた。





 ところでもう完全に記憶があやふやなんだけど。

 ガシャン――と窓ガラスが飛び散る音が耳をつんざいたのと同時、

 トマトみたいに弾けてつぶれた〝わたし〟の顔面が、どろりと真っ赤なグロテスクを床一面にぶちまけていて。

 学生服姿の〝わたし〟だったなれの果てが、スカートをふわりと翻し、膝からくずおれる。

 そんな人生最期の瞬間(クライマックス)を、さながら動画の一視聴者みたいに見届けているもうひとりの〝わたし〟。

 まるで冗談みたいなスローモーションで。

 死に物狂いで右手に握り続けた、冗談みたいに重たい拳銃。

 こんな現実(リアル)って何の冗談?

 それでも誰かのために、勇気を奮い立たせてあの引き金を引こうとしたんだ。

 地べたで泣き叫ぶ学生服姿のみんな。弱々しい大人たち。

 それらを取り囲む、武装したすごく怖い大人たち。


 どうしてこうなったのか全然思いだせないんだけど、

 やっぱり〝わたし〟はヒーローなんかにはなれなかったっぽい。

 ありあまる理不尽に命もろとも押しつぶされた〝わたし〟。

 そのバッドエンドのシーンを、

 ただただ他人事のように俯瞰しているうちに〝わたし〟の人生が暗転した。


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