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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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5/15

CASE:5 私も、たぶん……同じです

 翌朝、昨夜を思い出して顔を真っ赤にして起きる莉央と、少し寝不足そうだけど余裕の笑みを浮かべる慧。


「おはよう、白石」

「おは、ようございます……」


(ぅぅ……もう、今日一日まともに目合わせられないっ……)


 会社に戻るも慧はいつも通り。何も変わらない態度が逆になんだかもどかしい。そして、無情にも時間だけは過ぎていき、あっという間に数週間がたった。


(最近、黒瀬さんとあんまり話せてない……気がする)


 話しかけたいのに、忙しそうなタイミングばかりで。差し入れのお礼もろくにできないまま、距離だけが空いていくようで。


(やっぱり……私なんか、特別じゃなかったのかな)


 あの夜の差し入れ。あれが本当にたまたまだったとしても……。


「私、嬉しかったのにな……」


 鞄の中に忍ばせている、あの日のお菓子の包み紙。なぜか捨てられなくて、見るたびに胸がちくんと痛くなる。


(……避けられてる、のかな)


 そんなことばかり考えて落ち込む日々が続いていたある日。夕方のオフィス。人もまばらになった頃、備品室でばったりと鉢合わせる2人。


「あ……黒瀬部長」

「白石……」


 数秒の沈黙。でも、その時の慧の声は、少しだけ優しくて。莉央の目を、そっと見て言った。


「最近、避けてた……かもしれない。ごめん」

「……え?」

「なんか、自分でもよくわからなくて……でも、気づいたら目で追ってた……気になってたんだと思う」


 莉央の心臓が跳ねた。


「……私も。たぶん……同じです」


 目と目が合って、ふたりとも照れ笑い。それだけで、胸がいっぱいになった。


 …………そして、ふたりの恋が、ゆっくりと動き出す。


To be continued


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