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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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36/42

CASE:36 俺が好きな人、知ってる?

 気づけば慧の胸の中。


「慧さん……!?」

「比べる必要はない」


 耳元で低い声が落ちる。


「俺が好きなのは莉央だから」


 はっきりと言葉にしてくれる。


「で、も……」

「あいつはもう過去のことだ」


 きっぱりと言い切る。

 そのあと、莉央の頬を指先で撫でた。


「今も、この先も……隣にいてほしいのは莉央だけだから」


 真っ直ぐな目。

 ずるい。

 こんなの、嬉しいに決まってる。


「……っ」

「泣くな」

「泣いてません……」

「可愛い顔ぐしゃぐしゃ」

 

 ふっと笑って、額にキスされる。

 人通りの少ない夜道。

 誰も見ていないのを確認してから、慧は小さく息を吐いた。


「……正直」

「?」

「嫉妬してる莉央はかなり可愛かった」

「……最低です」

「知ってる」


 でも嬉しそうに笑うから……。


「もうっ……本気で落ち込んでたのに」

「悪かった」


 全然悪いと思ってなさそうな声。

 でも次の瞬間。

 大きな手が莉央の頭を優しく撫でた。


「そんな顔するな」

 

 さっきまでの意地悪そうな笑みは消えていて……。

 その目は、私だけを見る恋人の顔だった。


「……莉央」


 甘く呼ばれる。

 優しく頬を撫でられる。


「俺、莉央が思ってるよりずっと余裕ないから」

「え?」

「あいつが来るって聞いた時も……」

 

 慧は少し苦笑しながら。


「莉央が気にするだろうなと思った」

「じゃあ最初から言ってくださいよ……」

「言ったら余計考えるだろ」

「それは……」


 否定できない。

 すると慧は莉央の額に自分の額を軽く当てた。

 距離が近い。

 心臓がまたうるさくなる。


「俺が好きな人、知ってる?」

「え……」

「答えて」

「………わ、私」

「誰の彼女?」

「……慧さんの」

「うん」


 莉央の答えに満足そうに笑う。

 子供みたい。


「慧さん」

「ん?」

「確認しすぎです」

「何回でも聞きたい」

 

 さらっと言う。

 本当にこの人は。

 会社で見せる姿と違いすぎる。


「好きだからな」


 耳元で囁かれる。

 反則だ。


「……私も好きです」


 小さく答えると。

 目がふっと細くなった。

 その顔が好きだと思う。

 私だけに見せてくれる顔だから。

 

「莉央」

「はい」

「今日はこのまま帰したくない」


 低いくてどこか甘えるみたいな響き。


「え?」

「嫉妬して、不安になって。頑張って平気な顔してたんだろ」


 見抜かれていた。

 全部。


「だから」


 そっと肩を抱き寄せられる。


「今日はいっぱい甘やかさせろ」


 優しく髪にキスが落ちる。


「俺の彼女は世界一可愛いから」


 そんなことを真顔で言うから。

 結局莉央は。

 顔を真っ赤にしたまま、慧の胸に隠れるしかなかった。

 その頭を撫でながら。

 慧は、誰より幸せそうに笑っていた。


To be continued

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