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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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18/33

CASE:18 なら、ご褒美……

 付き合い始めて数日。まだ誰にも知られていない、ふたりだけの関係。会社では、表面上これまで通り。でも……。


(やっぱり……無理。冷静でいるの、むずかしいな……)


 資料の確認に追われながらも、莉央の目は自然と慧を追ってしまう。デスクで何気なく横を通るとき。会議の移動で、廊下ですれ違うとき。たったそれだけでも、胸が高鳴ってしまう。


 だけど……慧はまるで何事もなかったかのように振る舞うから。


(私ばっかり、浮かれてる……)


 そんな風に思えて、ちょっぴり切なくなる。


 昼休み、コーヒーを取りにいく途中。曲がり角で偶然……慧とすれ違った、その一瞬。


「……お疲れ」


 その低い、小さな声が、莉央の耳元に届いた。


「……っ!」


 言葉を飲み込み、振り向くこともできなかった。でも、確かに聞こえた。後ろ姿のまま、何もなかったように歩き去る慧の背中。


 ……たったそれだけで、胸がいっぱいになる。


(……もう、ずるい……)


 顔が熱い。心臓もうるさい。でも、たったひと言でこんなに満たされる。



 退勤時。エレベーターで鉢合わせたふたり……。


「今帰り?」

「はい」


 微笑む莉央に、慧がそっと髪を撫でる。


「はあぁ……やっと触れられる。俺…莉央のことばっか考えててやばい」

「わ、私も!」


(慧さんも同じだったんだ!)


 同じ気持ちを共有できてほっとする莉央。


「なら、ご褒美……今からちょっとだけ、甘やかしてもいい?」


 エレベーターの扉が閉まりきった瞬間。静かなキスが、優しく落ちた。


To be continued

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