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黒瀬部長は部下を溺愛したい  作者: 桐生桜


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12/15

CASE:12 ほんと、ずるい……

「……黒瀬部長……」

「……今言うの、ずるいかなって思ったけど、黙ってられなかった」


 ふと慧が莉央を見つめる。ふたりの距離が急に近くなる。


「……言わないつもりだった。立場もあるし、距離感も考えて、ずっと抑えてた」

「…………」

「けど……今日、2人きりで仕事して、こんなに自然に隣にいられるのに、何も言えないまま終わるのは嫌だと思ったんだ」


 莉央は慧の気持ちをただ黙って聞いた。


「俺は、白石が好きだよ。仕事も尊敬してるし、人としても惹かれてる……もし、少しでも俺を見てくれてるなら、付き合ってほしい」

「……っ」

「答えは、今じゃなくてもいい」


 視線を逸らした慧は、最後の一口を飲み終えた。


「黒瀬部長……今、言ってもいいですか?」

「……ああ」


 目を伏せて、小さく震える唇。でも次の瞬間、勇気を出してふわっと微笑む莉央。


「……私も、ずっと黒瀬部長のことが好きでした」


 その言葉に慧は少しだけ目を丸くして、それからふっと笑う。


「……本当か? 無理してない?」

「してません……私も、好きです。黒瀬部長のことが……ずっと前から……」

「ありがとう……莉央」

「っ……!」


 突然の名前呼び。それは低くて優しい声。目が合うと、またバクンと心臓が跳ねた。


「はぁ……ちょっと俺、無理かも」

「む、無理って……何がでしょう」

「……何もしない自信がない……」

「っ……!」


 沈黙のあと、慧が静かに続けた。


「だから、もう寝よう。何もしない。ちゃんと我慢する」


 その『我慢』って言葉に、莉央の顔はますます真っ赤になった。


(……ほんと、ずるい……)


To be continued


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