ガサッ!初めての客
9話です。
札幌のにある割と豪華な地下室にて
「なんだと?例の場所が壊滅しただと?」
足を組み椅子に座る白髪の65歳くらいの男性の声が響いていた。
その男は老人と言っていいが、その声は重く、眼光は若者よりも数倍鋭い。
「はい。一平は勿論のこと、現場を担当にしていた作業員全員がマモローに捕まりました。
また監禁していた子供も全て保護されました」
そして顔の至る所に傷がある青髪30代前半くらいの男性が、何かを報告していた。
「一平はお前ほどではないにしろ、なかなかの使い手だったな。そう簡単に不覚を取るとは思わん。・・まさか"サイーキョ"の誰かが動いたのか?」
「いえ。奴らが動いた形跡は、今のところ確認されていません」
「そうか、ならひとまずはいいだろ。奴らが動くとなかなかに面倒だからな。
取り敢えず壊滅された時の監視カメラの映像が残っているだろ?誰がやったのか見せろ」
「ただいま」
青髪の男がリモコンを操作すると、壁に張り付いている大きなモニターに、拠点が破壊されたその瞬間の映像が映しだされた。
そこには何人もの大人を気絶させる小さな男、半袖半ズボンの坊主”一式政成”が映っていた。
あまりにも不釣り合いな少年の姿に、老人の眉が不快そうに動いた。
「・・これは本物の映像か?」
「はい、間違いありません」
「こんな小さな子供1人に全員やられたと?」
「こいつはまだ子供ですが、映像を見ていただいた通り、その実力はサイーキョに匹敵します。やられるのも無理はないかと」
「そうか、なるほどな・・・・
とでも言うかと思ったか、鈴木ィッ!!」
おじいさんは大声を出すと同時に机を強く叩いた。
その顔には明らかに怒りが現れていた。
「俺は7大都市の札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡の内の1つ、札幌の管轄を任されている人間だ。
もし今回の失態が広まれば、俺達はとんだ恥さらしだ!
相手がサイーキョ級でもだ!」
老人は鋭い眼光で鈴木を射抜いた。
「だからな分かってるな鈴木?
今すぐこのクソガキをここに連れて来るんだ。生かしたままだ。
ケジメをキッチリつけてやる。
やつの居場所は分かっているんだろうな?」
「はい。こちらにもいろいろと目がありますので」
「頼んだぞ」
「承知いたしました」
そう命令されると青髪の男は一礼し、部屋から出ていくのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
一方、日本の治安改善を目的に設置された国の組織"マモロー"札幌本部でも緊急会議が行われていた。
円卓を囲んで座る2人の男。そして巨大なスクリーンの前に立つ1人の男。
その中で、中央に座るスーツを身に包む中年男"札幌本部長"「斎藤一馬」が口を開けた。
会議室前方の巨大なスクリーンに映し出されている一式政成を見ながら。
「それではこういうことですか?
陽介くんの固有能力で撮影したこれらの映像に映っている、この名前も分からない一人の少年が、札幌にのさばるクソ悪党共を片っ端から倒しまくっていると。結果として、札幌の治安改善に大いに貢献している・・とね」
「はい、本部長のおっしゃる通りです」
スクリーンの前に立つ若いスーツ姿の職員が、手元の資料をめくりながら答える。
その言葉を聞きながら、本部長は思考を巡られていた。
(陽介君の能力は自身の視覚とリンクした透明のカメラのようなものを自由自在に飛ばし、見たものを録画するというもの。この話を聞いた当初は半信半疑でしたが、実際にこの少年の圧倒的な戦闘シーン、そして我々マモローに電話を使い通報を入れている現場の映像を見せつけられては信じるほかありませんね)
「元々は、陽介君の能力で札幌市内を監視させていましたが、一週間半ほど前、市内で異様な音を聞きつけ、カメラを向かわせたのが始まりでした。それ以来、毎日1回以上彼から通報が入るようになりました。チンピラを倒したから回収してほしいと」
「なるほど。それで現場に行けば、陽介君が撮影したとおり大量の悪党共が転がっていると」
「はい。昨日もですが、最近この辺りで児童の誘拐を繰り返していた連中のアジトを単独で発見、そのままそこにいた連中も全て倒しておりました」
「昨夜の通報の件ですね。陽介君の能力で我々もこのアジトを見つけ、突入のタイミングを伺っていましたが、まさかこうなるとは流石に予想できませんでしたよ。
それにそこには、巨体な体を持つことで有名な斎藤一平も含まれていましたね?」
「はい。彼の成果だけで、大物含めすでに50人以上の悪党共を捕まえることに成功しております。やはりかなりの実力者だと見受けられます」
「サイーキョ級ですか・・。
しかし、まさかたった一人でこの成果とは驚きです。我々組織のメンツも丸潰れですね」
斎藤はそのいかれた成果に思わず笑みが漏れてしまう。
「・・・どのようにいたしますか?
このまま放置というわけにもいきませんし・・・やはり組織にスカウトしますか?」
「そうしたいのは山々ですが、彼が素直に首を縦に振ってくれるかどうか」
「はい。それに加え、先ほども申しましたが彼には問題が・・」
「ええ、過剰な建物の破壊行為ですね」
「はい。我々が把握しているだけでも20件以上あり、多くの住民から以前にも増して不安の声が上がっています。
彼は悪い者ではないと思うのですが」
「そうですねぇ~。
取り敢えず、直接会って話をしてみるしかありませんね」
「承知いたしました。では予定通り彼の元へ人を送ります」
「ええ。現在彼がいる場所は分かっているのですよね?」
「はい。陽介くんが彼を見つけた時から現在まで監視をしてくれているので」
「分かりました。では先ほども説明しましたが、予定通り説得の方は、サイーキョである貴方にお願いしますね。未来君」
本部長はそう言いながら、部屋の中で黙って座る3人目の金髪青年に声を掛けた。
「了解しました」
未来と呼ばれた金髪の青年は、そう短く答えるのだった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
あの後、俺はあそこにマモローという今の日本の治安を改善するために国が設立した組織に連絡した。
あの家にいた誘拐犯共は全員逮捕され、子供達も全員無事に保護されたらしい。
ちなみにボコボコにされた顔は、魔力治癒で治したから心配しなくていいからな!
後朗報が入った。
俺がボコボコにしたあの例のアイドル高徳愛が、体調不良により長期の活動休止になったってネットニュースが出てたんだ。
恐らくボコられた顔を元に戻せなかったんだろう。
傷だらけの顔じゃあアイドル活動は無理だろうからな。
取り敢えず計画通りだ。
後はあのアイドル次第だな。
ちなみに今俺がいるのは、札幌に来てから今まで住んでいる街の隅にある廃墟だ。
まあここが俺の拠点だと思ってくれていい。
ここはいいよ。
部屋は突き抜けてるけど、周りに誰もいなくて静かだから。
と思っていたけど。
ガサッ。
どうやらこのマイホーム初のお客さんのようだ。
俺は気配を感じた背後にゆっくりと振り向くのだった。




