俺のために争わないで!!
10話です。
振り向いた先に立っていたのは、顔が整ったかわいい系の金髪の少年だった。
かなり若く見える。
でも金髪だし、ヤンキーか?
まあ取り敢えず挨拶しとくか。
「どうもこんにちは。
それで俺にどんな用?」
「・・・・動揺が全くないですね。突然の来訪者に驚かれないのですか?」
「あー、何かさぁ~。札幌に来てからずっと、誰かに見られてる感じがしてたんだよね。それでいつか誰かしら接触してくるのかなぁ~って思ってたから」
皆には黙ってたけど、実は札幌の来た初日の途中から今までずっと誰かの視線を感じてたんだよ。
まあ要するに監視だな。
誰が見ているのか、その正体は分からなかったけど。
もしかしてコイツか?
「!?
まさか・・気づかれていたとは。流石ですね」
金髪は驚いた顔を見せる。
大ビンゴ!
どうやら視線の正体は、この金髪かその身内だったらしい。
心のモヤモヤが消えましたよっと。
「でも姿が見えないんだよな。一体どういう仕組みなのやら。
ってまあそこはいいか。で何の用?」
「き、切り替えが早いですね。普通は視線の正体について問い詰めると思うのですが」
まるで俺は普通じゃないみたいな言い方だ。
失礼な奴め。
「まあこちらとしては助かるのでいいのですが。
ではお言葉に甘えて。
まず、マモローという組織はご存知ですか?」
「もちのろん」
「では話は早いですね。
私はマモローに所属しております未来と申します」
「へぇ~~それは驚きだな」
マモローに所属している奴が、わざわざ俺に直接接触してくるとは。
まさか!
暴れすぎて目をつけられたか。
「単刀直入に言います。貴方にマモローへ加入していただきたいのです」
「なるほど。俺をマモローにね・・・・・
マジかっ」
これは予想外。
正直、俺のこと逮捕しに来たのかと思ってたよ。
「マジです」
「なるほどな。まあ見る目はあると思うよ。取り敢えず俺を勧誘するという判断は素晴らしい」
俺は親指をグッと立てた。
いや、ホントいい判断力してる。
「でもすまん。無理!!」
「・・・理由を伺っても?」
「え?めんどくさそうだから。あと誰かの下につくのとか嫌だし」
「そうですか・・・
予想は何となくできていましたが、やはり駄目でしたね。
諦めますか」
金髪は顔を上げ、残念そうに肩を落とした。
「え?もしかしてもう諦めた感じ?俺の勧誘」
「え?はい、そうですけど」
「はやっ!もっとなんかあるだろ!
菓子折り持ってくるとか!熱意を伝えるとか!」
「そんなものないですよ。普段のあなたの素行からして、今回の勧誘は失敗に終わると思っていたので。潔く諦めます」
こいつなんか・・
話し方は丁寧だけど、覇気が無くなって、何かめっちゃてきとうになりやがった。
最初は良かったけど、俺に断れた途端てきとうになってねぇか?
「ああですけど、建物を無駄に破壊する行為は辞めていただきたいですね。市民の方々が怯えていますので」
「え~~なんのこと?」
「とぼけないで下さい。監視されていたのはご存じでしょ?
ただ移動するときもわざと建物を突っ切って無駄に壊していますし、敵と戦う際も、破壊する必要がない建物まで、わざと破壊していますよね?
敵を倒してくれている点には感謝していますが、破壊行為は辞めていただきたい」
「う~ん・・・
それは加入の話より無理だな!ドンマイ!」
建物をぶち壊すあの快感は、気持ち良すぎる。
もう脳に染み付いちまって、やめらんねぇっーてっ!
「・・私個人の意見ですが、貴方は悪事を辞めることができる人間だと思っています。現に、あなたは周囲に人がいない建物を選んで破壊しています。戦う相手も犯罪者だけを選んでいます。
貴方が根っからの悪人ではなく、良い人間、善人であると分かっていますよ」
「はっはっはっ。
いやぁ~、良い人間だなんて
照れるなぁ~」
この未来の地球に来てから、褒められることなんてほとんどなかった。
お世辞でも大喜びだよ。
俺はつい腰をくねくねしちまった。
「・・・・う~~ん。褒めてると言えば褒めているんですけど、なんて言いますか。
今の言葉は、単に機嫌を取るために言っただけなんですけどね。
照れさせるほど褒めているつもりはないですし、悪人ではないと思いますけど、これで真に受けて照れるあたり、やはりバカみたいに頭のおかしい人でしたね。動きも気持ち悪いですし」
「・・・・・ん?え?」
コイツ今なんて言った?
俺はくねくねしていた腰を思わず止めちまった。
あれだけ俺のことを持ち上げておいて、急に「バカみたいに頭がおかしい」だって?少しじゃなくて?
いやいや、勧誘断れたからってそれは言い過ぎだろ。態度急変し過ぎだろ。
後でマモローにクレーム入れよ。
俺は自分がバカみたいに頭がおかしくない理由を、金髪野郎に説明しようとした。
その時
「おやおや。これは予想外です。まさか私以外にも訪問者がいるとは」
突如として、声が響いた。
現れたのは、黒のスーツ姿に身を包んだ、顔の傷が目立つ青髪の男だった。
「っ!?」
未来君は慌てるように、その男の方向へ振り向く。
「誰だ!?お前!?」
「ふふふっ
さあ誰でしょうね?」
青髪は笑顔を浮かべながら首を傾げる。
どうやら、未来君の知り合いではないらしい。
このタイミングで来てたから、未来君のお友達だと思ったんだけど。
「只者じゃないな?気配に全く気付かなかった」
「俺は気付いてたけどな」
「一体何者だ?
だがあの青い髪に、あの顔どこかで見たような・・」
「中学の同級生とか?」
「かなり強いということだけは分かるが」
「まあ俺はよりは弱いけどな」
「・・・あの少し黙ってもらってていいですか?捻り潰しますよ」
「ごめんなさい」
未来君は激おこだ。
おーこわい。
最初とは大違いだ。マモローの人間が絶対に口にしちゃいけない物騒なワードが飛び出してるぞ。
もしかしてマジでヤンキーなのか?
「ふふっあまりペチャクチャと話さないでいただきたいですね。
私は待たされるのがあまり好きではないんですよ。さっさと用事を済ませたいんですけどねぇ~」
青髪が、じれったそうに俺達の会話に割って入る。
「いやいや、待て待て。まだ全然話終わってないから。ちょっと静かにしてて」
だが、未来君と俺の話はまだ終わっていない。
「おい、金髪。さっき俺のことバカみたいに頭おかしいって言ったよな?
あれはどういうことだ?
バカみたいじゃないくて少しだろ!多様性な!」
「いやぁ・・・・。
誰から見ても、普通にバカみたいにおかしいと思いますよ。
なあ?あんたもそう思わない?」
未来君は突然青髪にそう問いかける。
「ふふっ彼は必至に否定していますが、それには同意見ですね」
「ですって」
「「ハハハハッ!」」
2人はまさかの意気投合。
2人で大笑い。
コイツらっ
絶対にぶっ殺す。
「ん?待て。共感されたからつい一緒に笑っちまったが、なんでお前がこの男の頭がおかしいことを知っている?
てきとうに頷いただけか?」
「ふふっ、それはですね。この頭のおかしいガキが、我々が大事にしていた子供の監禁場所を破壊した時の、監視カメラの映像を見たからですよ。映像に映っていたこのガキの言動を見て、確信しましたよ。脳味噌がイカれているとね。
全く困ったものですよ。大事な商品がたくさんあったのに」
「商品?子供の監禁だと?
・・・」
未来君は突然、青髪を蛇のようにじっと睨み始めた。
「待て、思い出しだぞっ!
お前、鈴木たかいかっ!」
どうやら青髪の正体に心当たりがあったらしい。
「ふふふっ、やっとお気づきになりましたか」
「まさかお前に会えるとは」
「え?コイツ何者なの?」
「貴方には後で話します。かなり有名な犯罪者とだけ言っておきます」
「えぇ~。もっと詳しく教えてよぉ~」
「黙ってろ」
「はい」
未来君はかなり警戒を強めていた。
鈴木と呼ばれたこの青髪は、かなりヤバい奴なのかもしれないな。
「そう言えば、お前どういう用件でここに来たんだ?」
「おお~確かに、この青髪はなんでここに来たのか聞いてなかったな」
「ふふふっ、そこの坊主に、少々用事がありましてね」
「へぇ~結構見る目あるじゃん。
どうやら俺も人気者になってきちゃったみたいだな。
ハハハハッ」
やっぱり有名人は大変なんだなぁ~。
いろいろな人に目をつけられて。引っ張りだこだ。
「つまり貴方には用はないので、そこをどいていただけますかね?サイーキョの未来君」
「・・知っていたのか」
「ふふっ有名ですからね。最少年でサイーキョに任命された天才少年と」
へぇ~これは驚いた。
サイーキョとは、組織マモローの最高戦力。
つまり金髪の未来君は相当な実力者ということ。
確か今は8人しかいないんだっけ?
っていうか言ってくれよ。サイーキョなの。
「そうか。だけど、お前相手にここは退けないな。この頭のおかしい人にどんな用事があるかは知らないが、どうせロクな事じゃない」
「ふふっただ連れて行かせてもらうだけですよ」
「連れて行く?
はっじゃあ尚更どけないな」
「ふふっ、では力ずくで貴方を退かさせてもらいましょうかね」
2人の間にピリピリとした空気が走り、2人は一気に戦闘態勢に入った。
未来君は拳を前に構え、青髪は腰に掛けてる剣にそっと手をそえた。
俺を巡って男2人が争おうとしている。
まるでヒロインにでもなった気分だ。
照れちゃうな~。
だけど
「いや待て待て。俺が戦うから未来君は下がってて」
青髪とは俺が戦いたい。
コイツは強いぞ。
「いえ、貴方は一応我々が守るべき民間人ですから、俺が戦います」
「えぇぇーーーーー」
そういうとこはちゃんとしてんな。
口は最悪なのに。
まあ譲ってやるか。
未来君の出世のために。
「ふふっ私はどちらでも構いませんよ。なんなら同時でも構いません。
どうせ結果は変わりませんからね」
「はっ舐めんなよ」
2人の戦闘が始まるのだった。




