新しい町
母が選んだ次の家は
六畳二間のアパートでした
母はほとんど帰ってこなかったので
私と姉が過ごせればよかったのでしょう
高校生になっていた姉と違って
中学生の私は
転校先の学校で
2学期が始まるまでの間
宿題も部活もないので暇なのに
お金もないし友達もいないので
家でゴロゴロしてばかりで
運動神経抜群だったのに
体力も知識も落ちてしまいました
時間はあるのにお金がない
そんなもどかしさを
この時に思い知りました
転校先で始まった2学期
転校はもう慣れっ子
うまくやれる子でした
でもこの頃から
母が学校行事に来てくれた記憶も
お弁当を作ってくれた記憶も
休日に出かけた記憶も
一緒に食料品の買い出しに行った記憶さえ
ほぼゼロ
寂しさもそのうちに慣れ
我慢もいつの間にか日常になり
暇を潰す方法を考えたり
料理もできるようになったり
生活力は上がりました
母は時々
大柄な男性が運転する黒いセダンに乗ってきて
お金と食料を置いていきました
暇を持て余して
押し入れの荷物をひっくり返していたら
母が使っていたハンドバッグのポケットから
母の淫らな姿を映したポラロイドが出てきて
気分が悪くなりました
その後から
黒いセダンで母が来るたび
嫌悪感が募りました
母だけ来てくれればいいのに…
1年そのアパートで過ごしたかどうか
しばらくして
同じ学区内の
学校から少し遠い団地に引っ越しました
安かったんでしょう
遠いので
自転車通学になったのですが
拾ってきた自転車に乗るように言われました
音がうるさくてギアもなく
当時の私はとにかく恥ずかしくて
歩ける距離だったので歩きたいくらい
そう思って
修学旅行の準備で
大きな荷物を背負って
1キロほどの広い農道を歩いて登校した日
痴漢にあった
声も出せず
出したところで周りには誰も居らず
足早に脇道に入って逃げていくその男を
恐怖で直視することもできなかった
学校に行き事情を話すと
警察が聴取に来ました
その日母が学校に来たかどうかは記憶にありません




