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地下アイドルは真剣なシャッター音を聞く

私の名前は貧田だ。


だけど父と母が離婚して、私は母の旧姓の芋飛山(いもとびやま)になった。


私が5年前に病院から退院して戻った時には全てが終わっていた。


「離婚!?そ、そんなバカなことってある!?」

「ごめんなさいね。あなたはこれからは『芋飛山羽化子(いもとびやまうかこ)』よ」


「な、長い!名字が長い!」


事後報告で自分の新しい本名を聞かされる不思議。


あのオヤジふざけるな。

何でも、母が言うにはお父さんは今や大企業の社長だから色々あるのよ、と言う。

色々あっても、家族を捨てるなんて許されるの?

「お父さんは、ずっと同じ事を続けていると脳細胞が死滅してしまう病気なのよ」


それ、大企業の社長関係ない!

そんな病気ある?

それって新しい女と浮気しないと死んじゃうって話?


「要は、妻にも子供にも飽きたってことね········」


聞けばそうとう以前から父と母の関係は冷え切っていたらしい。母の離婚後の態度には清々しささえ感じられた。


············私は父への復讐を考えている。

もう新しい家族を迎えたらしい。新しい妻と義理の息子とで生き長らえている(アイツ)


私は暫く怒りの日々を過ごしていたけど、2年経ったらまたすぐ持病の病気が再発することとなり入院の日々だった。

全く踏んだり蹴ったりだ。


新しい息子とやらは『貧田光輝』という名だそうだ。

光り輝く名前が憎らしくて目眩(めまい)を感じる。


無事退院した後、私は父の新しい息子を見張ることにした。


私は今はまだ地下アイドルだけど、これからもっと有名になる予定だ。

新しい息子を有名人である私がどうやって陥れよう?

ワクワクするわ·······!

その時は、父が私の存在を思い出して、飽きて飽きて飽き過ぎて、死んじゃうところを見たいと思った。



ここ一年間は、私はますます見張りを強化していた。

『貧田光輝』の大学に、度々忍び込んでいるけれど、奴は自分の学部とコースがまるっきり無いような不思議な生活をしていた。

一日の殆どを学友会の部室にいて、何かの授業に出るということは一切ない。

先月その学友会の部室へ潜入調査したところ、ここで父の会社関係の仕事を持ち込んでやっているようだった。

私が陥れるには会社関係の書類の内容は難しくてハードルが高い。

私はがっかりして帰った。


だけど、何年も留年してまで自分のコースで授業を受けない理由は?

···········そこには奴の弱点が隠れている気がする。



そんな折、そのポスターを見つけたのは幸運(ラッキー)だった。


「『貧田光輝』!? ええ!?この絵は·······?」


このポスターは彼の所属をわざわざ知らせてくれていた。


私はすぐにその漆部屋という場所を探して行ったけれど、担当の女の子は不在だと言われた。

担当の女の子って何のことだろう?

もしかして奴の秘書的なやつだろうか?


聞けば『貧田光輝』は、この漆部屋教室の幽霊生徒だという。

ようやく見つけた!

やはり、奴は確実にこのコースを避けているのだ。


「なるほど、······なるほど?」

私は得意気に頷いた。


このポスターには、『貧田光輝』のレタリング文字と、中央にはこの世のものとは思えない美しすぎる·······

私? が描かれていた。

この教室の担当の女の子が描いたのだそうだ。





次の日、再び漆部屋に行こうと、麗らかな昼下がりの大学構内を歩いていると、昨夜も通りかかった造形棟の庭園に差し掛かる。

私は怪しげなる巨大彫像の周りをくるくる踊り狂う奇妙な少女を思い出して、ふと足を止めた。


パシャッパシャッパシャッ


スマホじゃない、真剣なシャッター音が庭園に響き渡る。


「ああ、昨日の怪しげなる二人組········」


奇妙な黒ずくめのライダースーツを着た男が庭園を撮っていた。

そこには、

怪しげならない·······清らかなる美少女が佇んでいた。


清らかな少女は庭園の廃棄作品群に手をかけて上を見たりもたれかかったり、モデルのようにポーズを取っていた。


明るいからだろうか。

私は昨日より憚ることもなく声をかけてみた。


「今日は踊らないんですかぁ〜?」


私に気づいた清らかな少女は躊躇いがちに言った。


「だって高木くんが、こうしろって·······」


その黒いライダースーツの男は言った。


「静止してポーズ取った方が、俺は芸術的だと思うが?」


········どっちでもいいわよ!

私はそっぽを向いてその庭園を立ち去った。



またまた今日も、漆部屋では担当の女の子を待ちに待った。

そこに現れたのは、先ほどの清らかなる少女だった。


少女は私を見て口を大きく開いた、

すかさず、私は言った。


「そうです。私が『貧田光輝』なのです」


これが、私が漆部屋で『貧田光輝』になった瞬間だった。


読んでいただきありがとうございます!


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