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6、帰宅

 ムーア一家は屋敷に帰ってくると馬車を降りた。

「さあ、カーリー。気をつけて降りなさい」

「はい、お父様、お母様」

 先に馬車を降りた父親が差し出した手をとり、カーリーは馬車を降りた。


「……ガルシア家は、立派なお屋敷でしたね」

「そうだろう? お前はあの屋敷に嫁ぐことになる。良かったな」

 ムーア男爵の言葉を聞いて、カーリーは表情を曇らせた。

「……アレス様と、どんなお話をしたの?」

 母親から聞かれ、カーリーは答えた。


「大したことは何も話しておりません。ですが、お兄様のチャーリー様のことをずいぶん気にかけていらっしゃるようでした」

 ムーア男爵はカーリーの言葉を聞いて、少し難しい顔をした。

「ガルシア侯爵は、チャーリー様のことを良く褒めていらっしゃった。が、アレス様のことはあまり良くおっしゃっていらっしゃらなかった。いや、そもそも、あまりアレス様のことは話題にしなかった……」

 

 カーリーは少し悲しそうな顔をして、父親の話を聞いていた。

「だから、アレス様はチャーリー様のことをいつも気にかけていらっしゃったのかしら?」

 カーリーの言葉に、母親が付け加えた。

「……アレス様も立派な方ですのに」

 母親の言葉に、カーリーは首をかしげた。

「カーリーは知らないのですか? アレス様は王宮で催された剣術の大会で何回も優勝されてますよ?」

 カーリーはそれを聞いて、驚いた。


「私、そんな話は聞いておりませんわ」

 カーリーが言うと、ムーア男爵はあごをなでてから唸るように呟いた。

「アレス様は、ご自身の自慢などしない、謙虚な方だしな」

 母親が口を挟んだ。

「カーリーがアレス様と直接会ったのは初めてでしょう? これからお会いする内にお互いのことが色々なことがわかってくるでしょう。さあ、もう家に入りましょう」


 ムーア一家は、屋敷に入った。

「……少し疲れたな」

「ええ」

 ムーア男爵はメイドにお茶の準備をするように言った。

「カーリー、アレス様とは上手くやって行けそうか?」

 ムーア男爵が心配そうにカーリーに訊ねた。


「……まだ、よく分かりません。あ、クッキーが好きだとお聞きしましたので、次に会うときには手作りのクッキーをお持ちしようと思っています」

 カーリーの発言に母親が頷いて微笑んだ。

「それは良いですね。手伝いましょうか?」

「大丈夫です、お母様」


 話が一段落したところで紅茶が運ばれてきた。

 三人はお茶を飲みながら、今日の出来事をまた話し合った。

 そして、ガルシア家ではチャーリーが一番大事にされているようだという感想をそれぞれが抱いた。

「アレス様も、チャーリー様のことを気にしすぎなければ良いのに」

 カーリーがつい呟くと、ムーア男爵は困ったような笑顔を浮かべた。


 お茶を飲み終え、話もとぎれたので、カーリーは部屋に戻った。

「……アレス様、私のことをどう思ったかしら? チャーリー様も……」

 カーリーはチャーリーとの約束を守るため、自分の本棚から好きな本を選び机の上に置いた。

 子ども向けの絵本が多くなってしまったが、カーリーは自分を飾っても仕方ないと思い、選んだ三冊の本を鞄にしまった。


「来週はもう少し、アレス様のお話が聞けると良いのですけれど……」

 カーリーは窓のカーテンを閉めて、ため息を着いた。



 


 

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