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薔薇と百合

ヒョウブ・L・ルーキーは悩んでいた。


彼の書斎には書きかけの原稿が辺りに散乱しており、その上を忙しなく行ったり来たりしている。


舞台脚本家の彼は新しい歴史物、それも恋愛要素を取り込んだ今までにない物を考えていた。



「・・・やはり、レオポルド皇帝を主役にする話だとダメか・・・。」


だが、レオポルド一世の時代から300年にあと僅かとなっていた。


帝国百年祭の節目の年に間に合うように推敲を重ねるが、どれも似た様な物になってしまう。


それもそのはずである。


レオボルド皇帝の逸話は今まで何百何千と上演されてきている。


いわば手垢かついた物でアレンジしようとどこか似たような物になってしまうのは否めない。



「では、妃であるセシリア妃を題材にするか・・・。」


レオポルド皇帝とはおしどり夫婦で知られ、控えめで大人しく白百合と称されている。


だがその分、バデさは少なく山場がレオポルド皇帝との婚約&結婚となる。


必然的にその話は、苦労の幼少期を経て、努力のかいあってのレオポルド皇帝と婚約(結婚)と言う流れになり、これも使い古されているのである。



他の人物、騎士アルベールはレオポルド皇帝の次に多い演目である。


特に隣国の公女との話は人気演目の定番とも言われているほどである。



宰相リシャールは国家間の権謀術数など色々アレンジでき、胸躍る舞台に出来るだろう。


だが百年の節目にどうかと言われれば、疑問が残る。


ビニスティ博士はコメディ演目としてはありだが、これも節目の演目としては不適切だ。


ペンタクール兄弟に至っては、食通を唸らせるだけである。


ジスティル選帝侯家やグース選帝侯家の話も考えられるが、


「帝国の節目には帝国の話であるべきなのだ!」とヒョウブは考えている。



では、レオポルド皇帝の元婚約者のロザリー公女はどうか・・・。


彼女の場合もセシリア妃と同じでレオポルド皇帝との婚約破棄が山場となってしまう。


山場が少ないため舞台には向かないのだ。



「となると、残りはコゼット令嬢か。」


セシリア妃の姉で大層な美人だったらしいが生涯独身。


数々の恋愛指南書を出している所から、“恋多き女”であったのだろうと推測できる。


演目でもセシリア妃とレオポルド皇帝を引き合わせる役目でそれ以外ではない。


ここでヒョウブは考える。


「待てよ。白百合と言われたセシリア妃と対にする形で宮廷劇を作ればどうだろうか?

セシリア妃の場合、レオポルド皇帝との婚約が山場になるが、それさえ途中の山に出来るのではないか?

そう例えば、コゼット令嬢もレオポルド皇帝を憎からず思っていたが妹の為に身を引く決意をしたとか。

その後、宰相リシャールを交えた宮廷陰謀劇に巻き込まれたり、騎士アルベールの恋を取り持ったり・・・。」


ヒョウブは目を見開き、忙しなく動いていた足を止める。



「いける!いけるぞ!これは!!」



それからのヒョウブは早かった。


その執筆速度は神速とも言われ、僅か三日で全10幕の脚本を書き上げた。



「よし、書き上げたぞ!これは私の最高傑作だ!世界が称賛するに違いない!!」


ヒョウブから思わず自我自尊の声がでる。


「となると、あとはタイトルか・・・。

セシリア妃が百合だからそれに対応するのは・・・やはり薔薇か。」


「薔薇と百合」と名付けられた演目はヒョウブの自我自尊通りに好評を博し、帝国中央劇場で10年にわたるロングラン公演が続けられた。


その内容はセシリア妃とコゼット令嬢の姉妹を軸に宮廷の恋愛模様や権謀術数を描いた大河ロマンであった。


その人気は留まるところを知らず、小説、TVなど様々な媒体で描かれ後のドラマに多大な影響を与えることとなった。


そしてこの演目以降、コゼット令嬢は“社交界の薔薇”と言われるようになったのである。




真実かどうかは別にして。


“社交界の薔薇”についての補足の様な物です。

こんな感じでどうでしょうか?


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