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14.気が付いたら企画していた。

王になって二十五年、日課になっているアルベールとの朝稽古を終え、王宮の大浴場に来ていた。

当初はアルベールに勝つ頃が出来なかったが、稽古の賜物なのか五分以上に戦うことが出来る様になった。

アルベールは稽古でも手加減しないので素直に喜ぶべきだろう。


汗を流した後は、宮廷会議である。

日々様々な問題が議題に上がる。

これも急激な発展がもたらした弊害なのだから致し方あるまい。


「さて、今日の議題は我が国と国境を接している、諸外国対策です。」

リシャールが議長となり会議が進められる。

「現在、騎士団への銃器の配布率は50%と言ったところです。」

「50%か、もう少し早くならないのか?」

「銃は生産に時間が掛かる為ですね。これでも市内警備部には短銃、辺境警備部には長銃と分けているのですが。・・・。」

「では大砲の配備はどうなっている?」

「港と国境を中心に約200門が配備済みです。」

「戦艦の配備は?」

「クロワ港を筆頭に主要五港全てに二隻づつ、計十隻が就航済みです。」


王国の発展と軍備の発達はほぼ同時に進んでいる。

物理や化学が発達したため、軍用兵器もまた急速に発達したのだ。

その中でも特筆すべきは銃の存在である。


化学が発達することで様々な薬品の生産が可能になる。

当然、爆薬に必要な硝石やジアゾジニトロフェノールも生成可能になった。

その結果、雷管を作ることが可能になり、銃は実包を使う方式に変わった。

そして、現在、王国内で作られている銃は自動小銃である。


最近は王国の繁栄を調べに、諜報員が入り込んでいる。

調査員の報告は驚異的な物なのだが基礎知識の差で理解できなし、信じることが出来ない。

結果、周りの国々は調査員の報告を全く信じなかった。


シャムロック王国の東方にはジスティル王国、西方にはグース教国といった大国が存在し、過去に何度か二国間の戦争に巻き込まれかけたことがあったが、騎士団と外交によって、二国の均衡を保ったのだ。

しかし、近年、両国で不作や疫病があった為、再び戦乱が起こる気配を漂わせていた。


「次に周辺各国との軍事同盟の件ですが・・・。」

「ジスティルは不作でかなりの量の餓死者が出たらしいな。今でも食糧難と聞く。」

「グースの方は疫病か・・・疫病を抑えられなかったことで教会の権威は失墜。民衆の矛先を変える必要がある。」

「どちらも戦争を起こすには十分な条件ですね。」

「問題はどちらと先に同盟を結ぶかですが・・・。」


どちらと同盟を結んでも、この国への侵攻は止められそうにない。

むしろ片方と結んだことで侵攻の理由にされかねないだろう。

だがどちらとも結ばずにいた場合、両国の戦争位に巻き込まれるのは必至である。

従って、どちらと同盟を組むことがこの国に利点をもたらすかを考える必要があった。


「同盟は片方とだけ結ばなくてはならないのか?」

「と、言うより片方としか結べないでしょう。」

「敵国との同盟国は敵とみなします。」

参席しゃは一斉に頷いている。


「ならば両方同時に結べばいいのではないか?」


「「「「「!!」」」」」


「そうか!片方だけと考えずに両方を同時に招いて同盟を成立させるのですね。」

「いや、周辺国すべてを同盟に参加させるべきだ。」

「この大陸全部の国を同盟に参加させるのか・・・面白い。」

「問題はどうやってこの国に呼び寄せるかだが・・・。」


少し何かを言っただけで議論が進んで行く。

私は優秀な部下を多く持ったものだ。

おかげで王都にもスカイツリーならぬスカイタワーの建設が進んで完成間近である。

そうだ!

「スカイタワーの式典に合わせれば良いのではないか?」



「式典と併せればやって来る可能性は高いですな。」

「そうなると供の数ですな。」

「いっそのこと制限無しとしてみるのは?費用はあちら持ちですが。」

「ジスティルやグースは百人ほどやってきそうですな。」

「この大陸にある国家は我が国以外に十一ありますからそれぞれ十人から百人とすると・・・うむ。経済効果は計り知れませんな。」

「よし、その線で各国に案内状を出そう。」

「陛下、以上でよろしいでしょうか?」


レオポルドはしばらく考える。

「うーん・・・。そうだ!どうせなら国境で迎た方が良いのではないか?」


「我が国の美しい景色も見られる鉄道の旅もいいものだよ。

あと、船出来た国には祝砲も用意しなくてはいけないね。」



(((((流石、陛下。圧倒的な技術力を見せつけるのですね。)))))



そして、各国に招待状が送られる。


ジスティル王国、宮廷

「陛下、シャムロック王国より招待状と同盟の案内状が届いております。」

宰相らしい男がそう告げ書状を差し出すと、身の丈が2mもあるが体の良い男が受け取る。

ジスティル王国の国王ヴァルデマール・ジスティルⅦ世である。

本人自身、戦場を駆ける武人であり、師子王の異名を持つ。


「ふむ、スカイタワー、空の塔とな。いかほどの物かな?」

「我が国の光の塔を越える塔と言う意味か?」

「すこし調子がいいから思い上がっている様に見えます。」

「陛下、いかがしますか?」

「くっくっくっ、この案内状、面白い。」

部下の話を聞いていた


「よし!騎士団百騎をもって赴く!」

「陛下、いくら何でも百騎では相手が戦争と受け止めかねません!」

「見よ。何も問題はない。案内状には供の数に制限は無いそうだ。」

「・・・滞在費用はこちら持ちですか。しかし、何を考えているのか・・・。」

「これは好機だろう。シャムロックの連中に迂闊な案内が何をもたらすのか教えてやろうではないか。」



グース教国

この国は女神マリーデルを信仰する宗教によって成り立っている宗教国である。

グースとは女神マリーデルに使えた第一従者の名前を使っており、国の名前に女神の御名を使用するのは不敬であると考えられた故である。

国の指導者は最高司祭が就任し、その言葉は絶対であり逆らうことは反教者=悪として糾弾される。

ある意味、王国より厄介な国である。


その最高司祭、アレッサンドロ・ランソルは案内状を見て命令を下す。

「シャムロックからの案内状を受けよう。」

「教国聖騎士団八十騎を供にシャムロックへ向かう。」

「「「はっ!」」」



北方の山向こうにあるランソール王国では

「シャムロックからの案内状には山を越えた所にあるレンシアまで行けばそこから案内が出るようだ。」

「供の数は不問ですか。」

「この条件だとジスティルやグースは千騎ほど出しそうではあるな。」

「何事もなければよいが。」

「同盟の事もある。王、もしくはそれに類する権限を持つものでなくてはなるまい。」

「最低限、王を守る必要がある制限無しなのでしょう。ですが我が国はあまり裕福ではない為、十五騎が限度ですな。」


周辺各国の状況もランソール王国と似たようなもので、供の数は多くても三十騎が限度であった。



周辺国でシャムロック王国の超大発展に触れたのは、西方の荒れ地を挟んで接するローマル公国が最初だった。

ローマル公国は面積こそジスティル王国の次に大きいが、そのほとんどは耕作に適さないとされる荒れ地で貧しく、歩兵が中心の軍しか持っていなかった。

その為、移動に時間が掛かると考え供の数は十騎、最も少ない数である。

これは不作の時にシャムロックからの食糧援助を受けた経緯があった為、シャムロックを刺激しない様にする配慮でもあった。

その為もあり、各国に先駆けてシャムロックに到着したのであった。


時のローマル公王、ローマル三世はこう語る。

「我々は神の国に来たのかと思うほどであった」と。


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