13.気が付いたら大都市になっていた
「ところで陛下、鉄道はどこからどこへ開通させますか?」
鉄道の計画書を持ってビニスティが聞いてくる。
(港町に行って海の幸を堪能するのもいいな。でも山の幸も捨てがたいし、暑い日には海水浴、高原の避暑地もいいな。)
王国の地図の前で色々考えてみる。
(山と海、どちらが良いか。
まてよ、今までは馬車だから夏の避暑地はどちらか一つだったが鉄道なら両方いけるのでなか?)
おもむろにペンを取り出し、北の町と王都、王都と港町を結ぶ。
(他の領地にも良さそうなところも多いな。)
次にめぼしい領地(主に名産の多い所)を王都とつなぐ。
(こうなると、一旦王都に戻るのは面倒だ、領地と領地を繋ぐ環状線を内と外につけよう)
王都の周りの領地を繋げた円を内側と外側として二つ描いた。
そうして線を引いた地図をビニスティが持ち帰った。
彼の事だ、必ず期待以上の成果を上げるに違いない。
そうだ!陣中見舞いを兼ねて後で様子を見に行こう。
持ち帰った地図を研究員一同とビニスティが検討している。
「所長。やはり陛下はただ物ではないですね。」
「うむ。まずこの様に鉱山から必要な鉄や石炭を王都に運ぶ。」
「足りない分の材料は港を通じて他国から手に入れる。」
「その後、各地に鉄道を伸ばしてゆく計画か。」
「この鉄道網だと王都はおろか国全体に食料がいきわたる。」
「人口が増えるますな。」
「陛下はまず港と鉱山を繋げたのですよね?」
「鉱山は判るが、なぜ港?」
「・・・陛下は蒸気機関を船に乗せよと示しているのだろう。」
「動かすためには水車の様なものを船の側面に取り付けるか。」
「それだと軍船には向かないかな。そこを狙われれば動けなるからね。」
「水車を鉄板で囲っては?」
「それだと重すぎて機能しないぞ。」
「うむ、みんな頑張っている様だね。」
「陛下!」
「いやいや、気にせず研究を続けてくれたまえ。
おお、蒸気船の計画かね。ふむふむ、外輪を使うのか、スクリューは使わないのかい?」
「スクリュー・・・そうか!粘度の高い物を動かせる力があるから・・・。」
「・・・ビニスティ主任。私は別の事を思いつきました。確か高等教本に・・・。」
(うむ。さすがビニスティだ。少しの事で研究者が活発になった。)
「では、私はこれで失礼するよ。蒸気船、期待しているよ。」
「「「「「「「はい!!!!」」」」」」」
ビニスティは王の計画通りの鉄道建設に着手した。
鉄道はまず王都ロディニアから南の港町のクロワ港の間が建設された。
そのすぐ後に北のレンシア鉱山に繋がった。
この事により鉱山や港から必要な物資がより早く届くようになる。
それは鉄道建設をさらに加速させ、東西に延びたのち王国内を蜘蛛の巣状に鉄道を張り巡らせる結果となった。
王国に建設された鉄道網には目を見張る効果があった。
鉄道は地方領主の町を都市に変えた。
地方の都市には特色のある大学校と研究所が置かれ王国内の科学技術を上げてゆく結果となった。
王都には大学校は置かれず、さらなる研究を行うための施設、大学院が設置された。
大学院には物理、化学だけでなく、文学、考古学、天文、地理、経済学、法学など多岐にわたった。
特に法学と経済学の研究はこの国の法整備や経済政策に大きく寄与することとなった。
そして流通の革命。
遠方の物資がいち早く届けられることになり、今まで手に入り難かった物が早く安く手に入るようになった。
また、早くから開発を行っていた荒野の開発が軌道に乗り、一大穀倉地帯となった。
そこで生産された食料はいち早く都市部に届けられ
その事が国民の生活に余裕を持たせ経済活動を活発化させ景気の好循環を生み出した。
国策によるトップダウンとほぼ同時期に起こった事で好景気となったのだ。
経済活動の活発化は商人たちの力を増す結果となった。
一部の商人は富を独占しようと技術の独占を画策したが、技術の発達の方が早すぎた為、独占した頃にはその技術は旧式になっていた。
加えて、独占禁止法などの先進的な法律を整備できたおかげでその力の増大は限定的なものとなった。
そして、鉄道が開通した港町では蒸気船が建設された。
当初考えられた外輪船ではなく、スクリューで動き蒸気タービンが付属したものであった。
船の移動力はその時代の船をはるかに凌駕する物であった。
やがて人々はこの国の王都に集まり、王都近郊にも多くの町が作られた。
王都は徐々に拡大を重ね、作られた近郊の町を飲み込み大都市へと変貌していった。
「ビニスティ。そろそろ発電を考えないといけないかな?」
「発電?」
「蒸気タービンを使って、モーターを回して電気を起こすんだよ。」
「モーター?」
(あれ?まだ作ってなかった?)




