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Act8-11 愛娘たちのエール~ばぁばからのオシオキを添えて~

 本日ラストです。

 でも、ラストに相応しいのかはちょっと、うん←汗

 俺は失念していたね。


 この世界で、いや、この世界でも元の世界でも最も怖いのは、怒り狂う上司だということに。


 その上司であるククルさんの怒りはどうにか治まってくれた。


 ただし、俺の尊厳がご臨終するという結果でだけども。


「不安定ですね? まったく使えない「椅子」だこと」


「い、椅子では」


「あ?」


「……ごめんなさい、ワタクシは「椅子」でございます」


 凄まれるのと同時に俺は自分の役割を口にする。


 ククルさんは「よろしい」と満足げに頷きながら、足を組んだ。


 こ、腰が痛い。腰が痛いけれど、下手に震えると凄まれるだけだった。


 だから耐えなければならない。頼みの綱であるレアも俺を助けようとはしてくれない。それどころか──。


「あぁ、あんな風に「旦那様」に座れるのは羨ましいなぁ」


 なぜか頬をぽっと染めて俺の惨状を見つめている。


 いや、頬を染めているのはレアだけじゃない。


 プーレとサラさんもなぜか頬を染めていた。


 ……そこは普通俺の惨状を憐れむべきだと思うんだよね。


 なのになぜ頬を染めているんだろうか、うちの嫁ズは? 意味がわからない。


「シリウスお姉ちゃん。なんかふるえているの」


「……まぁ、震えると思うよ? むしろ震えないわけがないもの」


「そうなの?」


「そうなの」


 シリウスとカティが穏やかな会話を、ククルさんの膝の上で交わしているようだ。


 クルスさんの膝の上にいたのが、いまやククルさんの膝の上に移動している。


 いや移動させられている。ククルさんが、クルスさんからふたりを取り上げたからだ。


「加齢臭たっぷりな父さんよりも、私の方がふたりを抱っこするのは相応しいとは思いませんか、ねぇ、父さん?」


 クルスさんも抗議をしようとしていたが、ククルさんのひと言に泣き崩れてしまった。


 いまも対面側でぐすぐすと泣く声が聞こえてくる。その様子を見ている余裕はあいにく俺には存在しないが。


「それで小娘ちゃん? 父さんに聞きたいこととはなんですか?」


「い、いまの状態で聞くんですか?」


「いま聞かずにいつ聞くのです? 少しは頭を働かせなさいな」


 呆れたため息が頭上から聞こえてくる。とはいえ、現状で聞ける余裕なんてあるわけがない。


 実際足と腕が震えています。声だっていつのまにか震えていたもの。


 ひとりひとりは軽いとはいえ、それが三人分となると、さすがに辛いっす。


 吐息だっていつのまにか荒いものに──。


「……なんです、その荒い呼吸は? まさかあなた私に欲情でもしているんですか? まったく、あいかわらずのエロガキですね? 救いようがありません」


「欲情なんてしていませんけど!?」


 ──あろうことか、シリウスとカティの前でとんでもないことを言ってくれたよ、この人。


 シリウスはともかく、カティの教育に悪いことは慎んでいただきたいよ!


「わふぅ? ぱぱは「えろがき」なの?」


「ええ。まったく救いようがないほどにね。カティちゃん、ぱぱのそういうところはまねしちゃいけませんよ?」


「わふぅ! わかったの、ばぁば!」


「ふふふ、いい子ですねぇ」


 ククルさんが楽し気にカティの頭を撫でているようだ。


 その一方でシリウスが「わぅ~」とつまらなそうにしている。


 だが、ククルさんはそんなシリウスの様子を見逃さなかった。


「ふふふ、シリウスちゃん。カティちゃんだけじゃなく、シリウスちゃんもちゃんといい子ですよ? ばぁばはわかっているのですから」


「……べ、別に。そんなこと言っていないもん」


「おや? そうでしたか? ばぁばの耳には「カティばっかり構われているの」というシリウスちゃんのヤキモチを妬く声が聞こえてきたのですが?」


「そ、そんなことないもん!」


「わふぅ? シリウスお姉ちゃん、ヤキモチなの?」


「そうですよ? 困った、かわいいお姉ちゃんですよねぇ」


「ば、ばぁば!」


「ふふふ」


 ククルさんたち三人のやりとりは、とても穏やかだ。


 それこそまるで本当のおばあちゃんと孫娘たちのやり取りみたいで、とても穏やかなやりとりです。


 だけどね? そういうのは俺にもちゃん見せてほしいんですけど? 


 さっきから俺が見ているのはリビングに敷かれた絨毯だけなんですけど!? 


 無理もないけどね。だって俺いまククルさんたちの椅子になっているもんね!


 ちょうどよつんばいになったところに、ククルさんが俺の背中にシリウスとカティを抱っこした状態で腰蛙という、なんとも言えない罰をうけているんだ。


 おかげで腰がマジ痛い。でもククルさんの怒りはいまだ治まっていないので、俺はこうして延々とオシオキを受けているわけだった。


「……さすがはレヴィアのところのギルマスじゃのぅ。そっくりじゃ」


「……ああ、やっぱり女は怖い」


「……トラウマになってもおかしくない光景だよねぇ」


 そんな俺を見てマモンさんたちは静かに茶を啜っている。


 茶を啜る暇があれば、助けてくださいと言いたいところだけど、下手なことを言うと、踵でのボディーブローが飛んでくるという始末。


 実際何度かやられているので、下手なことは言えません。


「ほら、安定していませんよ? ちゃんと支えなさい」


 言っている傍からボディーブローが飛んできた。


 力がこもっていないけれど、地味に効きます。


 けれど倒れるわけにはいかない。ククルさんの腕の中にはシリウスとカティがいるのだから。


 ここで頑張らずして、なにがパパよ!


「……努力の方向性がおかしいと思うのは、手前だけでしょうか?」


「安心してください、ボクもそう思うのですよ」


 ティアリカさんとタマちゃんも静かに茶を啜っている。どうやらふたりも助けてくれる気は皆無のようだ。ここには味方が存在しないようだね。


「シリウスちゃん、カティちゃん。しょうがないパパを応援してあげてくださいね?」


「わぅ。パパがんばー」


「ぱぱ、がんばれなの」


 愛娘ふたりの声援。これ以上に力が沸き起こることなどない! であれば俺が言うべきことはひとつだけだ。


「パパ、頑張るよ!」


 愛する娘たちのエールに応えるべく、俺は一流の椅子として在れるように踏ん張ることにしたんだ。

 正直更新祭りのラストの一話がこれっていうのはどうなんでしょうね←苦笑

 でも、まぁ、香恋らしいかなと←笑

 さて、これにて九月の更新祭りは終了です。

 お付き合いいただきありがとうございます。

 続きは明日の十六時になります。

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