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Act7-ex-5 ヘン様とカティ~撃墜されしまった編~

 本日十一話目です。

 ヘン様視点です。徐々に篭絡が始まっていく←

 まったく面倒な子供だ。


 この我を相手になんとも図々しい。


 最初はその体を奪い取ってやろう思っていたが、考えてみればこんな幼子の体を奪い取ったところで、あの忌々しい妹を食い殺せるわけもないか。


 とはいえ、この子供の体を奪い取れば、不意打ちはできるし、あの妹めは、この子供をかわいがっておるようだし、奪い取れば我に攻撃など──あ、できるか。


 兄上の継嗣の体を乗っ取ったときも躊躇いなく攻撃してきたからな、あやつは。


 我思うんだが、普通娘と言っている相手にあそこまで躊躇なく攻撃するのか?


 まぁ、攻撃と言っても口の中に「水球」をねじ込んできただけだったが、それでも普通はせぬだろうに。


 ……我、入り込んだ体を間違えたのではないか?


 我が知っている常識と比べると、あやつの行動鬼畜ではないのか? 


 ……ないはずの体が寒気を憶えたぞ、いま。


「へんさま?」


 なんだ。また我に用なのか、こやつは。今度はいったいなんなんだ?


『今度はなんだ?』


「へんさまのかたってどこにあるの?」


『は?』


「かたはどこにあるの?」


 型? 型ってなんだよ? 我の型ってなんだ? 


 こやつはいったいなにを言っているんだ? 


 わからん。幼女マジわからん。なんなんだ、この幼女は?


「へんさまのかたをたたいてあげたいの」


 叩く? あ、あー、そういうことか。肩たたきをしたいと言っているのか。って、なぜだよ!?


『……カティ。そなたの言いたいことがよくわからん。なぜ肩たたきをしたい、と』


「わふぅ? おせわになっているひとには、かたたたきをするんだよ、って本当のままがいっていたの」


『世話って。別にそこまで世話をしているわけでは』


 そもそも今日初めて会話したわけだしな。


 まだ世話を焼いたというほどに面倒を見てやったわけではない。


 なのにもう世話の礼をするというのは、いくらか気が早すぎるような。


「むずかしいことばを、カティにもわかるようにいってくれたの。カティのために怒ってもくれたの。それにカティにいろいろとおしえてくれるといってくれたの。だからかたをたたいてあげたいの」


 なんであろうな? この胸の底から沸くような温かい気持と言うか、衝動と言うか。


 我、体があったらカティの頭を無意識に撫でてやっている自信があるぞ? 


 って違う! なんだ、その孫をかわいがるおばあちゃんみたいな行動は!? って──。


『誰がおばあちゃんだ!』


「わふぅ?」


『は、しまった!』


 なにを抜かしているんだ、我は!? というか情緒が不安定すぎやしないか!? ああ、もう本当に宿主間違えたよ、これ! 


「へんさま、おばあちゃんなの?」


『だ、誰がおばあちゃんだ! 我はそんな歳をとった憶えは──』


「へんりるおばあちゃん?」


『──っ!?』


 それは一種の衝動だった。我の全身を駆け巡る衝動であった。


 体があったら、顏どころか全身さえも真っ赤になっていただろう衝撃だった。


「へんさま?」


『き、今日はもう寝る! おまえも寝ろ、いいな!?』


 駆け巡る衝動の前に我は全力で撤退を選んだ。カティの返事が聞こえる前に、全力で意識を切った。


 それでも頭の中にカティの舌っ足らずな声での「おばあちゃん」という言葉が何度も何度も反芻していったのだった。

 完全に撃墜されてしまったヘン様。明日はどっちだ?

 続きは十一時になります。

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