Act7-ex-4 ヘン様とカティ~出会い編~
本日十話目です。
今回は視点が変わります。そしてイメージが激変します。
『宿主よ』
ふしぎな声がするの。
だれだろう?
ききまちがいなの?
『聞こえているのか?』
わふぅ?
またきこえたの。
だれだろう?
『聞こえているのであれば、返事をせんか』
わふぅ。
いまあきれられちゃったの。
でも本当のぱぱとままからは、しらないひとにはへんじをしちゃダメだっていわれているの。
へんたいさんにさらわれちゃうから、って。
『ちょっと待て! 誰が変態だ! 誰が!?』
わふぅ。
怒られちゃったの。こわいの。
『え、ちょっと待て! なんで泣く!?』
しらないひとが怒っているの。
こわいの、やなの。
『いや、ちょっと待て。いや待って、本当に待って!?』
わふぅ~、ぱぱ、こわいのやだよぉ~。
『わ、わかった! 悪かった! 我が悪かった! だから泣かぬでくれ! な!?』
わふぅ~。でもへんたいさん、怒っているの。
『だから誰が!』
また怒られたの。……悪いことしていないのに。
『いや、いまのは怒っていない! 怒っていないよ!? だ、だから泣かぬでくれ。我は泣かれるのは好きではないのだ。だから頼む』
へんたいさん、怒っていないの?
『……もうなんでもいいわ。とりあえず我は怒っておらん。少しそなたと話がしたかっただけだ』
カティとお話?
『うむ。そなた、いやカティと少し話がしたかっただけだ』
へんたいさんはなんでカティとお話がしたいの。
『……もう完全に変態扱いだな、この我が。まぁいいか』
わふぅ?
『あぁ、気にするな。少し頭が痛いだけだ』
あたまがいたいの?
『うむ。そうなることがいま立て続けにだな』
わふぅ。わかった。
『うん?』
いたいの、いたいの、とんでいけ~なの。
『……なんだ、それは?』
本当のままがおしえてくれたの。いたいのがなおるおまじない。
『……そんなことで治るわけが』
いたいのがなくなるまでやるのがコツだってままがいっていたの。
へんたいさんのいたいのがなくなるまで、カティがしてあげるの。
『別にしなくても』
ううん。カティがしてあげたいの。ダメ?
『……あー、わかった、わかった。気がすむまでするがいいさ。ただし気がすんだら──』
いたいの、いたいの、とんでいけ~。
『……もう話を聞いておらんな。やれやれ、子供はこれだから』
カティはカティなの。こどもだけど、こどもってなまえじゃないの。
『……都合のいいところは聞いておるのだな』
つごう?
『あ~、言葉の意味がまだわからぬか。そうさな。そなたに──』
カティなの。
『──カティにわかりやすく言えば、自分の思った通りにする、というところかの?もっと言えばわがまま、と言ってもいいのかもしれぬな』
カティ、わがままを言っているの?
『いや、あくまでもわかりやすく言えば、だ。カティがわがままを言っているわけではない』
でもへんたいさんは、わがままって。
『いや、だからな? わかりやすく言って──』
ごめんなさい。
『え?』
わがままを言ってごめんなさい。
『ちょ、ちょっとなぜ泣く!?』
だって、本当のぱぱとままが死んじゃったのはカティのせいなの。
カティがみんなにわがままばかり言うから、おささまにおいだされちゃったの。
くろいぶよぶよのにえにするといっていたの。
『……』
それにおささまはいっていたよ。おまえが産まれなければよかったんだって。
おまえがうまれたから、ひかりのいちぞくのくせにやみのちからにのまれたおろかもののおまえがうまれたからわるいって。
『……ふざけるな』
わふぅ?
『どこの駄犬だ、その長とは!? いますぐ食い殺して──』
ダメなの。
『──なぜだ!? おまえは産まれたことを否定されたのだぞ!? 産んでくれと頼んだわけでもなく、親の勝手で産み落とされたのに、それをまるでおまえのせいだと──』
でもほんとうのことなの。
カティがうまれなければ、本当のぱぱもままもおいだされなかったの。
だって、本当のぱぱは、おささまのこどもだったの。
カティがうまれなければ、本当のぱぱがつぎのおささまになっていたはずだったの。
でもカティがうまれちゃったから、本当のぱぱとままは──。
『そんなことはどうでもいい! おまえは、くだらない理由で否定されたことが悔しくないのか!? 悲しくないのか!?』
──くやしくもかなしくもないの。だって、本当のぱぱとままはカティをいっぱいあいしてくれたもの。
『だからと言って──』
それにおささまも本当はそんなことをしたくなかったの。
『なにを言うか! その長とか言うのは、自分の保身のために──』
だって、おささまはカティに言いながら、ないていたもん。泣きながらわらっていたの。
ぱぱとままはいっていたよ。おささまはすごくやさしい人なんだって。
カティがままのおなかのなかにいるときも、とてもやさしかったって。
はやくうまれておいで、っていつも言っていたって。
『だが、それでもおまえを』
カティはちょっとだけおぼえているの。
『なにをだ?』
カティがうまれたとき、おささまはいってくれたの。
まもってやる、って。なにがあろうとまもってやる、って。
そういってくれたのをカティはしっているの。
だからおささまがやさしいひとだってことを、カティはしっているの。
『……それだっておまえの記憶を弄っただけかもしれん。本当はおまえを疎んでいたのかもしれぬ。化け物に食わせてせいせいとしていたのかもしれぬ』
それはないとおもうの。
『なぜ、言いきれる?』
しんじているからなの。だってしんじていたら、いまのぱぱもカティをたすけてくれたの。だからカティはおささまもしんじられるの。
『……おまえは純粋なのだな。我には真似できぬ』
わふぅ?
『こっちの話だ。すまなかったな。変なことを聞いて。もう我の声が』
おなまえは?
『は?』
へんたいさんのおなまえは、なんていうの?
『なんでそんなことを?』
だってへんたいさんのおはなしをきくばんなの。
でもへんたいさんは、へんたいさんってなまえじゃないんだよね?
おはなしのまえにあいてのおなまえをきくのがれいぎだって本当のパパがいっていたの。
だからおしえて?
『……フェンリルだ』
へんひる?
『フェ・ン・リ・ル!』
わふぅ~。へんりる!
『……もうそれでよいわ』
わふぅ。へんりるさんはカティになんのおはなしがあるの?
『もう済んだからよい。いや、待て。なぜに「さん付け」だ? 畏れ多いにもほどが、あー、礼儀がなっていないぞ! 我は長なんぞよりもはるかに格、あー、偉いんだぞ! 様をつけぬか!』
わふぅ。わかったの。へんさま。
『……ヘン様?』
へんりるさまをりゃくして、ヘンさまなの!
『変に略すな!』
ダメなの?
『だ、ダメというわけではないが、威厳、ん~、カッコよくないだろう?』
わふぅ? でもカティは、ヘンさまのほうがいいと思うの。かわいいと思うの。
『か、かわいい? 我が?』
わふぅ? かわいいもダメなの?
『そういうわけではないんだが』
じゃあ、へんさまできまりなの。いいよね、へんさま?
『……もう好きにせよ。口でお前に勝てる気がせぬわ』
わふぅ? カティのお口は、そんなにおおきくないよ?
『ふん、そういう意味ではないわ。……まったく子供というのは面倒よな』
カティだもん。
『わかった、わかった。おまえには言葉で勝てる気がしないと言ったのだよ、カティ』
そーなの? でもカティ、しらないことばがいっぱいあるの。だからへんさまにいろいろとおしえてほしいの。
『どうして我がそんな面倒なことをしなければならぬ?』
えっと、えん? わふぅ、えんがあったからなの。
『……縁があったから、か。まぁいいか。どうせすることもない。しばらくは暇つぶしで面倒を見てやる』
本当? へんさま?
『ああ。本当に少しだけだがな』
わふぅ。よろしくおねがいしますなの!
『……ああ』
へんさまはうなずいてくれたの。つかれているみたいなの。
こんどかたをたたいてあげたいな。
でもへんさまのかたってどこなの?
わからないの。
へんさまにきいたら、こたえてくれるかな?
撃墜王カティでした←
続きは十時になります。




