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Act6-50 社畜? 上等ですよ(Byカレン

 まぁた遅くなりました。

 う~ん、やっぱりお休みの日は遅くなっちゃいますね←汗

 でも、まだお日様出ているからいいかな←顔を逸らす

 ……さーせん。

 次は頑張らないとなぁ←しみじみ

 予想だにしていなかった無茶ぶりだった。


 正確にはちょっとくらい可能性はあるかなぁと考えていたことではあったけど、いくらなんでもないだろうなと切り捨てていた可能性でもあった。


 でもその可能性が現実のものとなったのだから、さぁ大変だ。


 いや大変なんてものじゃないよね。そもそもこちとらマバ缶に続いて、知識なんてほぼゼロなんですけど? 


 だというのにあと一か月もない状態で透明なグラスを完成させろと言うんでしょうか? 


 さすがに無茶だと思う。そう無茶なのだけど──。


「どうしたかえ? そんな絶望に打ちひしがれた顔をして?」


 当のデウスさんはにやにやと笑っている。


 明らかな嫌がらせです、とは言い切れない。


 そもそもこんなにも早く俺が案を出すとは考えてもいなかったんだろう。


 可能性はあると考えていた節はあったとしても、ここまで速いとは考えてもいなかったはずだ。


 早くても「狼王祭」の開催間際くらいとか思っていただろうね。


 そのくらいの時期であれば、デウスさんもこんな無茶ぶりをしなかったと思う。


 開催間際であれば、祭りに間に合わせろと言うのは無茶にもほどがある。


 というか不可能だ。まだ知識があればいいものの、知識もなにもない状態ではどうやっても無理だ。


 たった数日で手さぐりから始めて実用化まで持っていくのは無茶だった。


 だからデウスさんもその場合であれば、こんな無茶を言うはずもなかった。


 けれど現状「狼王祭」まではいくらか時間があった。


 猶予がたっぷりとあるわけではないけれど、まったくないわけでもない。な


 んとも微妙なところだけど、絶対にできないかと言われてもできないとは言い切れない。


 それを踏まえたうえでデウスさんは言っている。


 加えて「狼王祭」は新しい特産品を大々的に発表するにはこれ以上とない舞台だろう。


 わざわざ人を呼ばなくても、勝手に人が集まるんだ。


 別の舞台を用意する手間と金がかからない。祭りの最中にプロモーションをブッ込めばいいだけの話だもの。


 それこそ開催間際であれば難しいことだっただろうけれど、現時点であれば予定を調整することはできないことじゃない。


 現場の人間として「勘弁してくださいよ」と言いたいことだろうけどね。


 ……いいご性格をしておられますよね、本当に。


「デウス。わかっていて言っているでしょう?」


 やれやれと隣でレアがため息を吐いていた。


 でもため息を吐くだけだ。


 デウスさんの無茶ぶりを諌めようとはしていない。


 いつものレアであれば、こんな無茶ぶりを聞いたら諌めそうなものだけど、それをしないということは、いまのレアはいつものレアではないってこと。


 そういまのレアはきっと──。


「ですが、あなたが出された案が魅力的なのも事実です。もし本当に「狼王祭」までに為せるのであれば、我が国も支援をしましょう。いかがですか? 「「すけひと」のギルドマスター」殿?」


 にこりと笑いながら俺を「旦那さま」ではなく、「「すけひと」のギルドマスター」と呼んだ。


 やっぱりいまのレアは俺の嫁のレアではなく、蛇王エンヴィーとして立っているみたいだ。


 もっと言えば、俺が出した「透明なグラス」作りに、新しい特産品作りに一枚噛もうとしているんだろう。


 もし本当に作り出せるのであれば、目玉の商品になるだろうし、その利益が莫大なものになると考えたんだと思う。


 本音としては、俺にあまり無茶ぶりをしたくはなかったのだろうけど、そこは俺を信じたうえでかつ、一国の王として私情を捨てたんだと思う。


 どちらにしろレアらしいことだ。


 レアという個人の意見を抱きつつも、一国の王としての考えを優先させる。


 私情は抱いてもいいが、最終的に選ぶのは自国の利益。びいては自国の民のため。


 レアはただしく王なんだ。だからこその言葉。本当にレアらしい言葉だった。


「……蛇王様もお人が悪い」


「ふふふ、そんなのはあなたが一番わかっているでしょう?」


 くすくすとレア、いやエンヴィーさんは笑っていた。


 いまのレアはレアであって、レアじゃない。蛇王エンヴィーとして俺の前にいる。


 それでいてレアでもあると俺に語り掛けるかのように、エンヴィーさんの笑顔ではなく、王としての温かみもあるが本質は冷徹な笑顔、仮面のような笑顔ではなく、心の底からの笑顔を、レアが俺に対して浮かべてくれる笑顔を向けてくれた。


 本当にレアには敵わないよ。


 王さまとしての姿を見せてからの嫁としての笑顔を浮かべてくれるんだもの。


 これで惚れるなと言う方が無茶だっての。


「むぅ~」


 ただその笑顔を向けられたおかげでですかね? 


 プーレがすごく不機嫌です。俺がレアの笑顔に見惚れてしまったことが相当に気に食わないご様子ですね。


 でもひとつ言わせてほしいな? 


 レアだって俺の嫁なんだから、少しくらい見惚れたっていいだろうって! 


 ……でも現実にはそんなことが言えない俺です。そうです、俺がヘタレですよ!


 でも仕方がないんよ。嫁に嫌われたらと思うだけで死ねるもん。


 だから嫌われないためには下手なことは言わない方が──。


「「旦那さま」の優柔不断なところ、本当に嫌いなのです」


 ……ははは、死にたい。むしろ、死のう。生きていたって仕方がないよ。


 あぁ、そうさ、カルディアが待っているところに──。


「私が好きな「旦那さま」は、無茶なことでも笑いながらこなす「旦那さま」なのです」


 ふんと顔を背けてくれるプーレ。


 でもその言葉は俺にとってはエールだね。


 無茶なことでも笑いながらこなす俺が好きということは、その姿を見せれば惚れ直してくれるということでしょう?


 つまりは惚れ直すくらいの姿を見せてほしいという遠回しなエールなのですよ!


 嫁にそこまで言われて、うだうだ言い募るつもりはありません!


 社畜みたい? それがどうした! 社畜上等! やってやるぜ!


「……なんじゃろうな? 妾は無茶なことを言ったはずなのに、ノロケですべて解決させられてしまったこの気分は」


 デウスさんがなにやら納得していないお顔をされているが、そんなの関係ないわ! 嫁の赤面を見るためであれば、無茶なことでもやり通してみせる!


「やります! やらせてください!」


 俺はデウスさんとレアに向かって力強く頷いたんだ。こうして「狼の王国」でも面倒事に巻き込まれるのが決定したんだ。

本編のちにあったであろうやりとり。

「レアさんや?」

「はい?」

「なぜにそんな素敵な笑顔を浮かべておいでなのでしょうか?(後ずさる)」

「ふふふ(距離が開いた分だけ詰め寄る)」

「レア様、怒っているのですよ」

「レアママが怖いね」

「明らかな嫉妬じゃの」

「なぜに!?」

「プーレちゃんを惚れ直させるため、ですか。そこは私も入ると思うんですよね?」

「あ」

「ふふふ、お仕置きですね(にっこり)」

「(無言で逃げ出す香恋)」

「逃がしませんよ?(笑いながら香恋を追いかける)」

「パパはやっぱりおバカさんだね」

「そうだね(シリウスの頭を撫でつつため息を吐くプーレ)」

「ダレカタスケテェェェーっ!」

「逃がしませんよ~?」

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