紫煙(裏)
決して油断していた訳ではない——などという、明確な言い訳が脳裏にチラつく。そんな事に処理能力を割く余裕など微塵も無い状況であるにも関わらず、まず最初に自己弁護が浮かんできたのは一体なぜだろうか。
それはもしかしたら、この寸刻に発生したやり取りで……一種の野生の勘めいたモノによって、相手の力量が自分には到底推し量れない段階にある事を——理解するよりも遥かに速く、感じとってしまっていた所為なのかもしれない。
決して、不公正な手を使われた訳ではない——私は時間、場所、この場所に相応しい格好を指定されて此処でひとり待っていた。当然、何をするかも聞かされた上で。だから時間の寸前になっても尚、指定場所に姿を見せない相手に対して……何らかの理由で遅れるのだろう、等と勝手に思い込んでいた私が悪かったのだ。
もっと言えば、相手が現れないからといって……指定時間になる前にフェイスガードを装着せずに座していた私が。模擬小銃と模擬銃剣を身に付けずに、側に置いていた私が。指定時間になろうかという瞬間、格闘場の壁掛け時計を確認しようとそちらに顔を向けてしまい……開け放っていた格闘場入口の闇から目線を切った私が。
すべて。他に転嫁出来る要素は一切見当たらず、すべてに於いて私が悪かったのだ。
始めに知覚出来たのは音ではなかった。入口からは目を逸らしていたものの、辛うじて右目の周辺視——中心視よりも夜間視力の高いその一機能が……音もなく真っ直ぐに走り寄る影を僅かに捉えていたのだ。そして鼻先を正面に戻した時に、私は……その異様な状況と明らかな危機感を感じ取る。
闇から躍り出た影は既に全ての装備品を身に付けているし、彼我の距離は20メートルを切っている。模擬小銃を上向き姿勢で保持し、頭を上下させずに滑るように、飛ぶような速さで走り寄るその姿は、明らかに手練れの振る舞いであって尋常の戦士では無い。まさに今、その影が私に襲い掛かってきている。
「なっ、待っ……!?」
右手で模擬小銃を掴み、立ち上がって左手を突き出して止まるように声を上げるが、慌てる余りに言葉にならなかった。距離は詰まってくるし、私はフェイスガードを装着していない。冷静さを欠く思考の中、ほんの少しだけ床に置いたフェイスガードにチラと目を向けた瞬間、まるで私がそうするのを待っていたかのような時機で——模擬小銃が顔面目掛けて飛んできた。
——ガンッ!!
掴んでいた模擬小銃を身体の前に突き出して直撃を防ぐも、4キログラム近くもある物体の投擲である……どうにか突き出した模擬小銃は両手で保持したものの、しっかりと掴めていなかった所為もあって嫌な痺れを両手に残した。そしてそれ以上に不味かったのは、防ぐことに懸命になるあまり視界を塞ぎすぎていた事だった。
——バシッ!!
硬直していた私の身体——その鼠蹊部に向かって、狙い過たず模擬銃剣が投擲された。今は当然ファールカップを着用している上、模擬銃剣なのでそうはならないが……仮にこれが実戦であれば、大腿動脈は無事では済まない勢いと投擲箇所の正確さで。手脚の先とは異なって、この箇所からの出血には他人の手を借りる他には碌な止血法がない……戦場においてたちまち死に直結する、まさに致命的なものである。
その手順の鮮やかさもあってか、ここまで来てようやく私の頭に冷静さが少し帰ってきた。相手は小銃を、次いで銃剣を投擲した……後は組み手で来る他はない。私は順当にそう考えた。
そう本気で思っていたが……今にして思えば、まるで冷静さから来た思考ではない。むしろ、逆と言ってもいい……追い詰められた人間が、生存の糸口である筈の脳裏を掠める悪寒を無視して、都合の良い展開を願うようなもの。私という人間の土壇場における甘さが出たのだ……だから私は、
——バチンッ!!
剥き出しの顔面に、まともに喰らった……2本目の模擬銃剣の投擲。
目には刺さっていない、痛みも我慢の範疇だ。それよりも不味いのは、もう彼我の距離が5メートルとない事だ……!!
必死でそちらに意識を向け、2本目を喰らった瞬間に閉じてしまった瞼を見開くと……衝撃で微かにボヤけた視界の中で、不思議な事が起きていた。これまで視界の中に捉えていた筈の、相手の姿が……見えない……
「は……?」
違った。視界には映っていた。ほんの一部だけ……足だけが、宙で弧を描いて降ってきた。
胴回し回転蹴り——2本目の投擲後に、その準備動作に移ったに違いない。私の視界から相手の身体が消えたように思われたのも頷ける。回避動作は間に合わず……プロテクター越しに、私の鎖骨よりも僅か下に刺さった踵は、十分に体重と回転力を乗せて無慈悲に蹴り抜かれた。
「んぐぅぅ……ッ!」
自分より小柄な相手から放たれたとは到底思えない、身体の深奥にまで響くような重い蹴撃を私は受け止め切れず、後ろに倒されていた……格闘場の床に尻餅をつき、混乱と肉体的損傷によって肩を上下させ、荒い息を吐いている私。もしもこの様に救いがあるとすればそれは、模擬小銃だけは手放さなかった事ぐらいだろうか?
しかしそれ以外は全くと言っていいほど、惨めな敗者の姿でしかなかった。そんな私を仁王立ちで見下ろしている、既に姿勢を正している相手——凛とした佇まいに、フェイスガードの向こうから全てを見通すかのような怜悧な目と、それに不釣り合いな笑い皺。その背後で揺れる一本縛りの長く美しい髪……
「おいガキ、もう降参か? だとしたら残念だな、これじゃ躾の内にも入らねぇ……」
汗ひとつかいていない、涼しい顔をした阿賀田大尉が立っている。
いつかの地獄のような時間の続きが……指定時間をもって、始まった。
◇ ◇ ◇
鮫上と雪が除隊して、駐屯地を出ていくのを見送った日だった。私も明日には4年の歳月を過ごしたこの駐屯地を離れ、士官候補生学校に入校する身である。そのため着校をもって正式に、この連隊の所属ではなくなってしまうが……その前にどうしても、挨拶をしておかねばならない人が居ると考えていた。
だから私は菓子折りを持って一人、連隊隊舎2階の舎側にある階段の中ほどから……赤絨毯の広がる廊下を注視している。課業時間が終了してから1時間半が経過していたが、相手が事務室から出て来る気配は無く……ついに今、同事務室で勤務している係軍曹の最後の一人も部屋から退室した。
静かに階段を降りて部屋に近づくにつれ、自身の心拍数が高まるのを意識せずにはいられなかった……当然これは気分の高揚に由来するものではない。羞恥や恐怖といった過去の感情の記憶が自然と、あの時の精神状態を再現している所為なのだろう。
詰まるところ、この訪問の目的は清算であると同時に克服でもあった。その行為の浅ましさを自覚出来ていない訳ではないし、何もせずに黙って連隊を去って行く事も出来たのであろうが……これを為さずに此処を離れる方が一層、予後が悪くなる気がした。
いつか私の喉元を喰い破る綻びになる——そんな予感に突き動かされるようにして、人事班の事務室の前まで来た。来てしまった。扉の向こうからは打鍵音が小気味良く響いている。意を決して把手を手に取ろうとしたその時、
「どうぞ」
静かな、それでいて通る声だった。硝子の嵌っていない木製扉越し、ちょうどそこに立った私にだけ届く様な、柔らかく穏やかな声。音もなく扉の前に立った筈の私に向けられたもの、という状況と重なって不穏さが加速していく。だがもう、全てを覚悟して此処に来た筈だった……だから勢いのまま、短節に声を掛けて把手を握って扉を開ける。
「失礼します!」
選抜試験の面接と同じ要領で、礼を尽くして入室しようとしたところで、
「あら、龍見准尉殿……別にいいわよそんなの、今は課業時間外でしょう? でも悪いけど、急ぎの仕事だからコレは続けさせて貰うわね……それで? どうかしたの?」
変わらない穏やかな調子で喋りながらも、打鍵音は途切れていない……連隊人事将校である阿賀田大尉は、資料の積み上がった机の上に並ぶ2枚の画面を凝視したまま打鍵し続けている。扉を閉めて大尉の席の眼前まで進む。最初に私がやる事は、もうずっと前から決まっていた。
「本当に、その節は……申し訳ありませんでした!!」
深々と頭を下げ、謝罪の言葉を述べた……そしてその初めの言葉を皮切りに続く、私の反省の弁を阿賀田大尉は聞いていた……のだと思う。打鍵音の調子が当初よりも落ちていく様子が、傍目から聞いていても解ったから。それでも私は、自分の言葉を伝える事に精一杯過ぎて……その画面の光を反射した銀縁眼鏡、その向こうにある鋭く尖った眼を……よくよく観察出来ていなかった。伝え切った後のやり取りで、安心しきっていた所為もあっただろう。
「そう。貴女なりに色々と考えたのね。過去の自分の愚かしさにちゃんと向き合って反省し、次に活かす……当たり前の事だけど、とても大事だし、なかなかできる事じゃないわ」
その私を認めるかの様な言に、はい、と短節に応えると……目を細めた大尉が、
「だから黙って組織に貢献しろ、って言ったのに今更、此処に来てゴチャゴチャ喋ってるのは許してあげるわ……でもまさか、貴女……私の言い付けを破ってはないでしょうね……?」
変化は突然だった。いつかの再現のような、部屋の空気の重さを感じ出していた。不味い。勝手に頭を垂れたくなっているのは畏怖の所為か。途端に回転の鈍り出した頭で考えながら、
「……いえ、私はあれ以来……鮫上には…………」
解っている、それは明確な嘘だ。しかし、突如眼前に現れた危機を何としても避けたい……どちらかと言うと本能に近い欲望が、徐々に舌を回し始めた瞬間
「あっ、悪いわね……拾ってくれる?」
阿賀田大尉の机の資料の一角から、バサッと数枚の紙が落ちた。滑空するように私の足元にやってきたそれを、言われるがままに拾おうとして。
しゃがみ込んで、気付いた。何故。全部回収した筈だ。一体なぜ此処に、これが……?
「あら、どうしたの龍見准尉殿……何か面白い物でも見つけたのかしら?」
立ち上がる事が出来ない。心臓がずっと煩く拍動している。頭がまるで回らないが……でもきっと、これが。あの日に差し入れて、読まれる前に回収した筈の除隊届が。その複写がここに在るという事は、あの日の出来事までも——
「おい、聞かれたら返事しろ……それは一体、何だ?」
いつの間にか打鍵音は止んでおり、しゃがみ込んだままの私に鋭い視線が突き刺さっている。静かに立ち上がった大尉が踵をコツ、コツと鳴らして近寄って来る……もう、何も隠し立ては出来ない。一刻も早く真実を吐き出す他、術は無い。
「私が、昨年12月の休日に中隊長室に差し入れた除隊届です! 同じ物を人事軍曹の机にも置きましたが、いずれも当日の内に翻意して回収したもので……!!」
「おう、そうだな……それで?」
間髪入れず、再度の発言を促される……何を聞かれているのか、回らない頭で考える。私は既に士官候補生として明日には連隊の所属から外れる。今日付けで階級も士官候補生たる准尉に昇進した。大尉がこれらを、今からひっくり返すような事はしない。つまり……
「遅えな……その除隊届を差し入れた日、お前は……誰と、何処で、何をしていた……?」
そうだ、口をついて出ようとした私の嘘が、今まさに……暴かれようとしているのだ。
「もっ、申し訳ありませんでしたッ……あのっ、わ、私は……!」
「はん、もういい……じゃあ、お前の好きなやり方でいいか。本日2000、駐屯地格闘場、軍格闘の甲武装。それでいいか? 良ければ復唱しろ。」
「……ほっ、本日2000……駐屯地格闘場、甲武装……?」
訳も解らないまま、流されるようにして復唱すると
「おぉ、軍格闘となるとさすがの反応だ……他人の目を1個潰した挙句に、退院して間もない鮫上をブン殴るだけの事はある。言い付けを破るにしても、ここまでの奴は見た事ねぇ……」
何も言い返せないでいると、
「安心しろよ、龍見准尉殿……言ったろ? ちゃんと、俺が殺してやるからな」
◇ ◇ ◇
かくして私は、格闘場の真ん中で打ち倒されていた。だがしかし、心までは折れていない。立ち上がって、大尉を睨め付ける……すると微かにニヤ、と笑いながら
「卑怯だって言いたい……そんな表情だな? 何だ、鮫上とは前戯止まりだったのか?」
そう言って足元にあった私のフェイスガードを蹴り上げると、それは放物線を描いて私の手元へと吸い込まれるようにして収まる。着用するように身振りで伝えられたので、目線を切らさぬようにして装着する……そうしながらも、先刻の発言による怒りは抑え切れず、
「鮫上は、公正な男でした。いつも道を違わず、正面から私を倒してくれましたから……」
そう言った。言ってやった……私たちの営みを虚仮にされるのだけは、許せなかったから。大尉の動きがその瞬間にピタリ、と止まった。来るか……と思いきや、身体を震わせている。それは……嘲笑と言えるものだった。笑っている。腹を抱えて笑っている。私を、笑っている。
「いやはや、最高だなお前……な、良い事教えてやるよ……1回だけ闘った事があったけどよ、鮫上な、俺と闘ってる時は本っ当に……滅茶苦茶だったぞ? 必死の形相でさ、まさに何でもアリって感じで……さっきの俺なんか、それに比べちゃお嬢様かってくらいに……」
何を、馬鹿な。そんな嘘、虚構を……止めろ。語るな。私の、私の男を。
「そう考えるとおかしいよな? その鮫上がそんなにお上品に振る舞っていたって事はよ……お前とは舞踏の練習程度にしか思っていなかったんじゃないか? ハハハ、こりゃ傑作——」
「黙れババア!! 殺してやる!!」
駄目だった。後から思えば解りやすい、見え透いた挑発に我慢する事が出来ず……フェイスガードを装着するや、私は模擬小銃を抱えて駆け出していた。その瞬間の……フェイスガード越しの大尉の表情が、忘れられない。
結局その後、私は在らん限りの手技と力の全てを注いだものの一矢報いる事も叶わず、散々に痛めつけられた。失神しては水を掛けられ、それを幾度か繰り返し……水を掛けられる事なく自然に目を醒ました時、そこは格闘場ではないどこか地面の上だった。土と緑の青い匂いが満ちた屋外で、星空を見上げる形で……
「起きたか」
そこに夜空に映える星の輝きのような、凛とした声が聞こえた。そろりと顔を右に倒すと、視界に大尉の姿を捉えた……既に常装に着替えた大尉は、私の横に立って煙草を吸っている。
そのまま私は黙って寝転がり、ずっと考えていた……私の手技を捌き、潰していくその手管。打撃点を一瞬で逸らして威力を殺すその手法。私の身体を遠慮無く打ちのめしてくるその合間には、明らかにそういった私に不足している軍格闘技術への示唆に富んでいた。だからもう、大尉が本当はどういうつもりだったのかが……途中から薄っすらと、解ってしまっていた。
「おい龍見。お前、筋は良いが……鮫上とばかり試合していた所為で、動きが素直過ぎるな。いいか? 軍格闘の真髄は戦場、つまり不整地における戦闘技術だ。それを……」
滔々と今日の全てを振り返る大尉は何処までも理知的でありながら、何処までも熱かった。その語りの論点は終始、実際の戦闘状況において如何にして敵を制圧するかに置かれており、訓練の為の訓練など微塵も存在を許さぬという、将校としての矜持を感じさせるものだった。何処かそれは、試合後の鮫上の語りと似たものを感じさせられた。
「……だからな、鮫上ぐらいの奴は……あんまり居ないけど、居るっちゃ居るからよ。まぁ、今回は駄目だったかもしれないが気にするな。次だ次、まだ若いんだから……」
話はいつしか、私の恋路の慰めへと移っていった……まだ終わった訳ではないのだが、もう今更になって違う、とも言えないので……はい、はいと応えておく他無かったが……それでも、私の心は晴れやかになっていた。
結局、大尉はこういう人だったのだ。私の内側に残った靄を残らず晴らしてやろうとして、このようにしたに違いなかった……そしてそれは、言葉で語るよりも深く、強く……私に届いていた。格闘家、軍人、将校、女……あらゆる面においての、先達としての背中を見せてくれた結果に違いなかった。大尉が殺してくれたのは、きっと……
「よし、話は以上だ……格闘場はもう清掃済みだから、点呼までに隊舎に帰れ。立てるか?」
失神している間に、大尉に清掃までさせてしまっていたとは……少しの罪悪感を感じながらゆっくりと立ち上がる。身体中の軋みを感じるものの、問題なく歩けそうではあった。
「大丈夫です……あの、阿賀田大尉。本当に……ありがとうございました」
そう言うと、大尉はカカカ……と笑って
「殴りすぎたか? 別に、俺が殴りたかっただけさ……」
そう言って近寄ると、大尉は懐から取り出した銀の煙草入れを私に差し出した。
「あの、私は……煙草は」
そう固辞しようとしたところで、
「馬鹿。これは箱ごとお前にくれてやるが、お前にやる訳じゃねぇよ……」
そう言った。まるで何かの謎解きかのような大尉の言に戸惑っていると、
「お前に部下ができたら、煙草を吸う奴もいるだろう。喫煙所でそいつと話をするきっかけにしろ。そして、もしも戦場で……そいつが今際の際にある時は、最期の一服をさせてやれよ。そうやって、部下のひとりひとりを見てやれる将校になれ……じゃあな、龍見准尉」
そう言って、大尉は煙草入れとマッチを握らせると、足早に連隊隊舎へと向かっていった。胸に迫り来るものの所為で言葉にならず、ただただ、その背中に向かって頭を下げ続けていた。
やがて、足音も消えて一帯が静寂と闇に包まれた時……自然と手が、煙草入れを開いていた。開いた途端に、発酵した煙草葉の匂いが鼻につく……好きな匂いではない筈なのに。なぜか、今の私は……そうしたいと思っている。1本を取り出して、その片方を……大尉が咥えていた方の側を思い出して、口に咥えてみる。吸口に当たった舌先が、弱い辛味でピリリと痺れる。
煙草入れを閉めると、造りの良い煙草入れはカチッという小気味良い音を立てて密封された。それをポケットに仕舞ってから、手の内にあったマッチを1本擦ると……燃える硫黄とリンが刺激臭を発しながら木軸を燃え上がらせる。その橙色の炎を、咥えた煙草の先端へと持っていきながら、息を吸い込む……
——ゲェッホ、ゲホッゲホ……
吸い込む勢いが強過ぎたのか、咽せて咳き込んでしまう。鼻と喉の奥が痺れるように感じ、目からは涙が溢れ……ボヤけた視界の中、街灯の光が滲んでいる。立ち昇る煙は緩やかに漂い、その流れる様を眺めていると……痺れの後から、甘い後味が追い掛けてくる。
自然と私は……フェイスガード向こうの、優しい目尻を思い返していた。
※イベント用書き下ろし「紫煙(裏)」了
読んで頂き、ありがとうございました。
少しでも誰かの暇を潰せたなら幸いです。




