戸惑い
「お待たせしました。ルーカス公爵様。」
呼び方を変えたのにはすぐ気づいたようだ。そして、ちゃんとわたしの気持ちも察してくれた。
「…お手をどうぞ、ハンナ公爵夫人」
そう言われてエスコートをお願いし、馬車に乗った。
馬車の中では、ルーカス様がわたしの気を紛らわそうと色んな会話をしてくれた。
そしてついに、皇宮についた。
「ハンナ、大丈夫か?」
眉をひそめて心配そうに言ってくれるルーカス様の気遣いがありがたい。
だからこそ、余計な心配はさせたくない。
力を抜いて、差し出してくれた手を取る。
「はい。大丈夫です。」
わたしなら本当に大丈夫だと伝わるように、穏やかな声色で言うと、ルーカス様もやっと安心したようだった。
少しずつ、皇宮の門の前まで行き、門の隣に立っている人に名前の確認をしてもらった。
それから中に入るようだ。
「ガルシア公爵様、ガルシア公爵夫人の御成です。」
そう言って、門の前に立っていた2人がゆっくり扉を開けた。
入ると、一気に雰囲気が変わったような気がした。
入るまでは、そよ風が吹いていて、木々や草がザワザワとしていて心地いい音を感じた。
だけど、今は違う。
ここにはわたし達の足音以外聞こえず、周りの騎士も微動だにせず立っている。
「帝国の太陽とそのお妃様にご挨拶申し上げます。」
「堅苦しい挨拶はよそう。ここにいるものは公爵と夫人以外外で待機しておけ。」
この方々が今の皇帝と皇后。
皇帝の言葉を聞くとすぐに全員が外に出た。
2人ともやはり威厳があって簡単に人を近づけさせないオーラが出ている。
と思っていたのだけど
「よお、あの時ぶりだな。ルーカス。変わらないか?」
「もちろん。アイザックとグレースは、聞くまでもないか。」
「ええ、わたしたちも元気。ところで、あなたの隣にいるお嬢さんがお困りよ。ちゃんと説明したの?」
これは、、どう言った状況?
もしかして、心配しなくていいって言うのは
このこと?
わたしが大混乱していると、ルーカス様が説明をしてくれた。
「ハハっ、済まない。オロオロする姿が可愛らしくて。紹介しよう。俺の友人であるアイザックとグレースだ。2人とも子供の頃から知っていてよく3人で交流という名目で遊んでた。」
ここに来てまで愛を囁いてくるルーカス様のメンタルは一体どうなってるのだろう。
そもそも、ルーカス様がわたしがオロオロしているのに気づくのは分かる。
だけど皇后も気付くとは思っていなかった。やっぱり凄い人だ。
「お初にお目にかかります。皇帝陛下、皇后陛下、ハンナ・ガルシアと申します。」
忘れかけていたけどわたし達は既に婚約しているため、姓を名乗る時はガルシアの名で名乗らないといけない。
わたしが名乗ると、皇后は専用の椅子から降りてわたしの両手を握った。
「あなたがハンナちゃんね!ゆっくりお話したかったのよ。あのルーカスをどうやってここまで惚れさせたの?」
「惚れ…?!」
「かっわいぃ〜!何この子、めっちゃ可愛いじゃない。」
「やめてあげろグレース。彼女は褒められ慣れていないからな。」
その通り。わたしの顔は真っ赤になっていることだろう。
皇后に褒められるなんて思っていなかったから戸惑いを隠せない。
「こんなに可愛い子が褒められ慣れていない訳ないじゃないっ…て、その反応、本当に慣れてないの?!余計に可愛いじゃない…!」
もうやめてほしい。沸騰しそうなほど顔が熱い。
「よし、お茶しましょ!お茶!」
皇后が興奮気味にわたしの手を握って言うと、皇后の後ろから皇帝が覆うように皇后を抱きしめた。
「グレース。気持ちは分かるが少し落ち着くんだ。夫人、グレースの非を詫びよう。君さえ良ければ、4人でお茶をしないか。」
わたしは今ラブラブなところを見せつけられているだけな気しかしない。
ルーカス様も見せつけてきたので同じだが。
でも、なんだか思っていた人と違って良い感じにわたしの緊張も解けた。
「恐悦至極に存じます。」
わたしがそう言うと、皇帝はにこっと笑って、わたしとルーカス様を温室に案内してくれた。
そこにはもちろん皇帝と皇后、わたしとルーカス様が隣同士で座る。
「ごめんねハンナちゃん、先はテンション上がっちゃって。外面はあんなに無表情の男を落とした子だって聞いていたから会えるのを楽しみにしていたの。」
不思議な人だ。
わたしの噂なんて皇室にはもちろん届いているだろに、そんなこと気にしないと言うように目を輝かせて。
聞かずにはいられない。
見てくださりありがとうございました!
次話も見てくれると嬉しいです!




