パーティー2
「カーター侯爵様」
「これはこれは、ガルシア公爵夫人。ガルシア公爵様。」
よそよそしい態度で話す先生を見ると、つい笑ってしまいそうになる。
だが接する態度が違えば噂を立てられるかもしれないため、笑顔をつくる。
この事情も、わたしの感情を読める先生ならすぐ気づくだろう。
「この度はお越し頂きありがとう御座います。」
「いえ、こちらこそ、お招き頂き光栄です。改めて、お誕生日おめでとう御座います。ガルシア公爵様」
「ああ、感謝する。カーター侯爵。」
ルーカス様も、友人でありながらも公共の場は弁えているようで流石だ。
「それでは、また機会があればお会いしましょう」
先生が最後の挨拶だったので、挨拶を終えたわたし
たちは少し別行動をすることにした。
どうやら話さないといけない案件があるらしい。誕生日だというのに忙しい人だ。
それとこれとは別で、わたしは1人で料理長が腕によりをかけて作った料理を食べる。
ほっぺがとろけそうなほど美味しい…。
わたしが料理に夢中になっていると、3人組の女の子達が話しかけて来た。
「公爵夫人…」
料理に夢中になっていたことがバレないように必死に平然を装う。もちろん笑顔で
「はい、どうかされましたか?」
「…………えっと…」
どうやら緊張しているのなら上手く話せないようだ。だったらほぐせば良いだけのこと。
柔らかな笑みを浮かべて接することにした。
「ゆっくりで大丈夫よ。」
その一言に安心したのか、女の子は3人を代表して話し始めた。
「公爵夫人の装い、とても綺麗です。それと、先の美味しそうに食べている姿も可愛くて見惚れて…って、私夫人になんてことを…!」
てんやわんやしている姿が可愛らしい。悪い噂が絶えない中でこうして話しかけて来てくれて、まだ礼儀があやふやなところを見ると、社交界デビューしてすぐのようだ。
「ふふっ、ありがとう。今日は祝いの場だから、楽にしていいのよ。それと、あなたたちもとても素敵ね。」
わたしが褒めると、余程嬉しかったのか顔を赤らめた。なんて可愛らしいご令嬢だろう。
自然と笑みが漏れてしまうような不思議なご令嬢だと思った。
「良かったら、今度は一緒にお茶しましょう。お手紙待ってるわね。あなたたち2人も」
「「「は、はいぃ…///」」」
これ以上気を遣わせてしまうのは申し訳ないと感じたわたしは、早々に退散した。
次に話しかけて来たのは、若くして公爵の位についたホワイト公爵。
非常に聡明かつ、顔が良いとのことでこの人も女性にとても人気だそうだ。
そんな人がわたしに話しかけるということは、何かボロを出させるのが狙いということだろう。
彼は自分が女性に人気だということを分かっているはずだから。
「公爵様のお誕生日、誠にお祝い申し上げます。」
思った通り。まあ、その笑顔の裏側に何があろうとどうだっていい。この人はわたしには敵わない。
「ありがとう御座います。ホワイト公爵様。今後ともガルシア公爵家をよろしくお願いします。」
「ガルシア公爵夫人は本当に見目麗しい。是非ともあちらでゆっくりお話ししませんか?」
ホワイト公爵の目線の方を向くとバルコニーが見えた。なるほど、おそらくホワイト公爵のお仲間がわたしたち2人が話しているところを噂として広めるつもりなのだろう。
でも、それがホワイト公爵の本当の目的とは思えない。何故なら聡明と言われている人がこんな馬鹿らしい行為に出るわけがないから。
そもそも、わたしはこの人自体に興味はないため、断る以外の選択肢はないけど。
「光栄なお誘いですが、2人きりでは良からぬ噂が立ちかねません。ですのでお話しするのであれば、是非夫も入れてお話ししませんか。」
わたしが笑みを浮かべて言うと、ホワイト公爵は少しびっくりしたような顔をして、その後には優しい顔をした。
「ホワイト公爵様?」
「あ、失礼致しました。ガルシア公爵夫人は、お噂と随分違うお方だと思いまして。」
あまりにも素直だったので少し笑ってしまう。まさか普段聡明であるホワイト公爵がここまで素直になるなんて。
「素直ですね。わたしが猫を被っているとは思わないのですか?」
少し意地悪をしたくなってしまったので質問するとホワイト公爵は、まさか!という顔をした。
「とんでもない。夫人は実に聡明でいらっしゃる。事実、私がどんな意図で話しかけたのかもお気づきになられましたよね」
「社交界一聡明だと言われているホワイト公爵様に言われると嬉しいですね。ですが、わたしが分かったのは、公爵様がわたしの噂の真意を確かめるためにしたということくらいです。他は分かりませんでした。」
「あははっ…!あなたと話していると実に楽しいです。他の理由があると察した時点で夫人が謙虚にする理由などないでしょう。噂とは違うお方だというのも分かりましたし」
ここまでわたしの実力を買ってくれていることに驚く。まだほんの少し会話しただけなのに。
なんて思っていると、率直な疑問を言葉にされた。
「こんなにも知的で聡明な夫人が、何故社交界であんな噂が広がっているのでしょうか」
ホワイト公爵は心の底から不思議そうな表情をする。初めてかもしれない。
自分の目で見て、聞いて、話して判断する人。
今だってこうして噂の出所を聞いてくれている。こんなに親切な人に嘘を言えるはずがない。
「これは信じてもらわなくても構いません。噂の出所は、わたしの父です。実際、こうしてわたしが社交界に出たのは初めてですし。」
「でしたら尚更、何故社交界であんなに噂が…」
流石の公爵も、最後の社交界に出たのは初めてと言う言葉を聞いて、少し動揺していた。
ホワイト公爵は、今頭の中がこんがらがっているのだろう。だけど、まだ知り合って間もない人に経緯を話すほどバカじゃない。
「そこは、色々な事情が重なってのことです。どうかお察しください。それでは、どうぞパーティーをお楽しみください。」
まだ何か言いたげな顔をしていたが、無視してくるりと振り返ると、そこには今日の主役である人がいた。
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