期待に応えたい
意外にもペンダントを選ぶのに時間を要してしまい、午前中はずっと付き合わせることになってしまった。
だけど、納得のいくものが買えたので良しとしよう。
最後まで悩みまくった末、わたしは赤色のペンダントを選んだ。理由は、ルーカス様の瞳の色が綺麗だったから。
前はあの赤い瞳が嫌いだったのに。常に監視されているような気がして、好きじゃなかった。
今は何故か、あの赤い瞳がすごく好き。守ってくれている感じがする。
「ごめんね。思ったより時間かかっちゃった。午後は貴方たちの行きたいところにいきましょ。付き合ってくれてありがとう」
わたしがそう言うと、また騎士たちは先程見たような顔をする。
そういえば、貴族は簡単にお礼と謝罪をしないんだっけ。でも、お礼と謝罪は人付き合いをしていく上で必須だ。
前世の社会経験で学んだ必要な知識。今世は必要ないとしても、お礼と謝罪をすることを忘れたくない。
「いや…なんでお礼とか謝罪をするですか」
「僕たちにお礼を言う必要なんかないですよね」
2人とも素直に疑問をぶつけてくる。初めて会った時のリアを思い出す。
だからこそ、丁寧に伝えてあげたい。
「わたしが言いたいの。感謝したらありがとうって言いたいし、わたしがダメだったらごめんねって言いたい。わたしが、お礼や謝罪をするのに何か理由がいるのかしら。ねえリア」
「いえ、奥様。ですが、奥様は謝りすぎです」
「え?ちょっと?リア?」
今までどんな人に出会ってきたかは分からないけれど。せめてわたしだけでも、身分関係なくありがとうと、ごめんなさいを言える人であり続けたい。
「アッハハハ!」
「フフッ」
どうやらわたしとリアのちょっとした会話で、2人の緊張は解けたみたいだ。
これで気軽に買い物が出来るんじゃないかと思っていると、まさかの重たい発言が飛んできた。
「公爵夫人」
「ん?」
「私アーサーと」
「私フレディは」
「「奥様に忠誠を誓います。」」
これはとても予想外だ。普通に話せるくらいになればいいと思って言ったつもりが。
形式的なものではないが、昼食の時間に頭を下げられた。
それでも、敵対するよりずっといい。
「顔を上げてください。ありがとう。でも、忠誠を誓うより、アーサーとフレディとは友人のような関係になれたらと思っているの。」
「喜んでお受けいたします。夫人」
「ええ、これからよろしくね。じゃあ、リアとアーサー、フレディの行きたいところに行きましょうか」
「「「はい!」」」
3人ともいい返事をする。
昼食を食べ終えた後、リアが気になっていた洋服店、アーサーが行きたがっていた武器屋、フレディが見たがっていた演劇を見た。
みんなの行きたいところを全て回り切る頃、空はすっかりオレンジ色に染まっている。
後は帰るだけ。やはりこの街に来ると、帰るのが名残惜しくなるようだ。
「みんな、どうだった?楽しかった?」
「もちろんです。お嬢様」
リアがにっこりして答える。リアの笑顔が眩しい。
「正直、貴族を護衛してきて、今日が1番楽しかったです。」
「俺もです。護衛なのに、こんなに満喫しても良いのかってなりました。」
どうやら、2人も楽しんでくれたようだった。
「良かった。またこのメンバーで来れると良いわね。次はルーカス様も一緒に!」
わたしが言うと、みんなも笑顔になり、快く承諾してくれた。
その後は、無事にルーカス様が帰宅する前に帰ることが出来た。
こうして、無事にペンダントも買うことが出来、魔法も出来る限り力を注いだ。
◇◇◇
そして、ルーカス様の誕生日前日。
「やれることは出来るだけやったので、落ち着いてやれば大丈夫ですよ。実力も頑張った分だけ身についてますから…。」
「はい。」
わたしは先生の言葉を信じて、この前買ったペンダントに、魔法を付与することに集中する。
手をペンダントの前にかざして、頭の中でイメージするのだ。自分の魔力をペンダントに込めるイメージで。
集中力を切らしてはいけない。ただ、魔力を入れることだけに全力を注ぐ。
わたしの額から汗が滲んでいるのが分かる。それもそうだ。慣れると、集中力はいるものの、そこまで時間はかからない。
対してわたしは、ただすごい人に教えてもらっているだけの一般人。そんなわたしが、魔力付与に挑戦している。
落ち着いてやれば出来ると先生はいっていたけど、わたしはそれがどれだけの賭けか分かっていた。
努力は必ずしも報われる訳じゃないことを、わたしは知っている。報われないことだってあるのだ。
けれど今回は、わたしだけの努力じゃない。
ペンダント選びに真剣に付き合ってくれたリア、アーサー、フレディ、そして、今も静かに見守ってくれているカーター侯爵。
みんなが頑張ってくれたのに、付き合ってくれたのに、わたしが頑張らない訳にはいかない。
だからこれだけは
"絶対に成功させる!"
その瞬間、ペンダントが色濃く輝いた。あまりにも眩しくて目が開けられない。
しばらくすると、光が納まったので目を開けると、そこには買った時よりもキラキラしている赤いペンダントがあった。
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