ようやくのタイトル回収にして本編最終回
原初のダンジョンから屋敷に戻った後、数日たち、ダンジョンに居る時にロムが話していた“エルちゃん“について気になった俺は、エルちゃんとは誰なのかを聞いてみた。
「エルちゃんについて? 簡単に言えば神様のトップだね。 そんでもってツクルを助ける手段を示してくれた神様」
「す、すごい神なんだな」
ロムの話を聞くに、俺の恩人…恩神といえるような人だということは分かったが、知りたいのはそういうことではない。
「そういうことじゃないって? 安心しなよ、性別は女だからね!! それでも心配なら、一緒に会いに行けばいいよ!!」
ガシッと腕を掴まれた俺はなすすべもなくその場から転移することとなった。
屋敷の中に居たはずだが、場所は変わり、周りが本棚に囲まれた空間にロムと俺は転移した。
「やっほ~エルちゃん!!会いに来たよ~!!」
「久しぶりですね、ロム」
そこには“女神”がいた。 顔を上げた女神は全身が真っ白で儚く、今にも消え去ってしまいそうな見た目をしているのにも関わらず、強い存在感すらも兼ね備えていた。
「そちらはツクルさんですか?」
「そうそう!! ようやく運命が形付いたんだよ!! ほら!! ツクルも挨拶!!」
「あ、あぁ ツクルと言います。 一応こいつの夫をやっています」
「一応ってなにさ一応って!!もう!」
こんな人を目の前にしていつも通り話すお前の方がおかしい。 緊張してしまうのも仕方が無いだろう。 俺の知ってる神と言えばロムかクソ親父ぐらいだ。
「そういえばリュー君は?」
「ふふふ~リュー君はですね!! 私の代わりに世界を見回ってもらってるんですよ!! 偉いですよね!! 大変な仕事を自分からやるなんて惚れ直しちゃいました!! ドヤッ!!」
違った。 この人全然儚くないわ。 どっちかと言えばロム寄りだった。
「それで?今日は何しに来たんですか?」
突然の訪問に申し訳ないと思いながらも、俺はロムの方に目線をやる。
「あ~そうだった!一つはツクルの顔見せなんだけど、もう一つは……出来てるんでしょ?“私たちの物語”」
「ふふふ、ええ。 出来ていますよ。 これです」
と言ってエルちゃんさんは先ほどまで読んでいた本を手渡してきた。
「えっとなになに~~……タイトル【運命神の伴侶】……ダサい!!ダサいよ!?エルちゃん!!内容も堅苦しいし!!」
そんなに酷い内容なんだろうか?俺もロムから借りて読んでみるが…
「誰ですかこれ? 俺はこんなにできた人間じゃないんですが…?」
明らかに美化され過ぎだった。 こんなのは俺じゃない。
「そ、そんなにダメですか…私が書いたんじゃないのに…」
しょぼんとしているニコちゃんさんを可愛いとか思ってないですよ? だから腕を抓るなロム。 痛い!! 痛いって!!
「ツクル!書き換えちゃえこれ!!」
「いいのか?書き換えても」
恐ろしい速さの変わり身…俺の手を抓っていたロムは、即座に俺から本を奪い去り、物語を書き直し始めた。 それを横目に俺もエルちゃんさんに確認を取るが、いいらしい。
「……じゃあ書き換えるか!!」
ロムと俺は腕まくりをしながら本と向き合った。
~改変中~
「え? ちょ、そんな最初から書き換える意味は」
「大丈夫大丈夫」
「大丈夫じゃないけど!?」
~改変中~
「ツクル!? 自虐に走りすぎだよ!?」
「こんな黒歴史の改変なんて自虐に走ってないとやれんわ!!」
「……それはそう」
~改変中~
「バカバカバカバカ!!なんでそんなバカみたいなナレーションを!!」
「じょ、冗談だって 冗談だからその手を下ろせ いや、お、おろして下さ、あっちょっ待っ…アーーーー」
~改変中~
「ここはこうして~ここのシーンはちょっとシリアス気味に~~」
「ほへははほほはほうふへは」
「なんて?」
~改変中~
「今度は抑えるんだよ!?」
「分かった分かった」
~改変中~
「よし!!完成!!最後に題名どうする?」
「こんな駄文なんだ、題名も適当でいいだろ」
「駄文にしたのは誰かな!?」
無茶苦茶に書き換えられた俺たちの本の題名は、エルちゃんさんに手渡した時にはこうなっていた。
~~~ 俺?ダンジョン!? ~~~
これにて本編は完結となります。 だいたいプロットで考えていた通りに進んだので、感想で書かれた主人公がダンジョンである意味についてはその通りだなと笑わせてもらいました。 作風?を伏線にした方も感想を書かれてから読み返すと少しやりすぎだったかなと思ったりしましたが、まあ実際に作者の黒歴史を本に書き起こすようなことをすれば自虐が入るのでは?とも思ったので、書き直すことはしないと思います。
最後に、ある程度時間は置くとは思いますが、本編後の話は主人公視点で書こうと思っているので、もっと読みたいと思ってくださった方は「ブックマーク」や「評価」をして下されば幸いです。