ショートカット
「ゴホン。 改めてようこそ 原初のダンジョンへ」
テレポートゲートだけが置いてあった部屋から移動し、改めて言い直したアランの後ろには巨大な外壁が広がっていた。
「ダン……ジョン?」
「間違えたのかな!?」
「お茶目じゃな」
「そうそう俺としたことが行き先を間違えってそんなわけあるかいっ!!」
確かに一回間違えた実績があるとはいえ、そんなキャラだったかアラン? 魔王城の入り口ぶっ壊されて頭逝ったか?
「安心しろ、ここも原初のダンジョンの中だ。 今となっては原初のダンジョンはもう一つの世界と呼べるほどにまでなっている。 ダンジョンの中に居る人間たちの大部分がここがダンジョンだと知らないやつが居るほどにな」
「「「…………。」」」
衝撃の事実に思わず絶句した3人だったが、主人公だけは一つの大問題を思いついて焦る。
「ちょっと待て、そうだとするとこのダンジョンが攻略された上で攻略者にダンジョンを引き継ぐ能力が無かったとすると……」
思わず敬語を忘れるほどだったが、アランはそれよりも直ぐにその発想に至ったことに驚いたらしい。
「おぉ、流石だな。 ツクルの思った通りだ。 このダンジョンが攻略されたまま放置されると、中に居る人間はダンジョンの崩壊に巻き込まれて死ぬな」
どれだけ膨大な大きさだとしてもあくまでダンジョンはダンジョン。 管理者が居なくなれば崩壊する定めなのには変わりないということだな。
「まあどうせ人類側の中で攻略できる奴なんていないだろうだから、そんなことはどうでもいいんだけどな。 ほら、呆けてないで行くぞ。 目的地はここじゃないぞ」
その場からピクリとも動かない3人を置いて、アランは外壁とは逆方向に歩き始めた。
「「「………はっ!! ちょっ足早!?」」」
3人が気づいた時にはアランは遠く離れた場所にいて、急いで追いかけた3人だった。
「ここと……ここ。 それで……ここだったか? あっ違う。 こうか。 よし」
とある場所でアランが立ち止まったことで何とは追いついた3人だったが、当のアランは岩山に向かって手を翳していた。
「何をやってるんですか?」
「意外な性癖だね!!」
「岩山を触るのが!? 恐ろしいやつじゃの」
ミウとニコルがアホなことを言っている内に岩山真っ二つに割れ、ズズズズズと動き始めた。
「「「おぉ」」」
「岩山を触るのが性癖な訳がないだろ」
「冗談に決まっとるじゃろ」
「冗談だったの!?」
「冗談じゃなかったのか!?」
戻ってきたアランとコントを繰り広げながら、主人公たちは岩山の中へと入って行った。
岩山から階層のスキマへと入って行った主人公たちはアランの背中を追いかけながら無言で歩いていたが、唐突にアランが話し始めた。
「まあ簡単に言えばショートカットだな。 こっちとしても一階層ごとにゆっくり攻略してもらう時間は無いんだ」
「誰も聞いてないですよ」
「………読者が聞いてんだよ」
「「「メタいわ」」」
メタいな。 とはいえ聞かないわけにもいかないので、主人公には続きを催促してもらおう。
「一応アランさんに限らず、四天は人類の英雄ですからね」
「………まあそういうことだ。 一番暇な俺にしたってギルドの依頼を定期的にこなしておかないと色々怪しまれる立場なんでな」
「一番暇なのは冒険家じゃないの!?」
約100話ぶりに聞いた人類の英雄の一人、冒険家ことエルマは暇じゃないのか?と思ったミウだったが、実は一番忙しいのは彼のようだ。
「あいつが一番忙しいぞ。 実質的にこの世界の管理をしているのがあいつだからな。 自分の足で各地に赴いて、世界の膿となる部分の調査をしている……らしい」
「……知らないんですね」
「……俺は大雑把だから教えないって……。」
「「「「………。」」」」
空気が悪くなったぞ。 どうにかしろ。
というわけで次の場所までカット。
足を止めた場所は巨大な扉の前。 どこかで見たことのあるその扉は、天神のダンジョンのボス部屋に酷似していた。
「着いたぞ。 ここからはボスラッシュみたいなもんだ。 原初のダンジョンのダンジョンモンスターたちが闘技場形式で出てくるようにしている。 俺は最後の砦として待ってるから、上がって来いよ」
説明を終えたアランは手を軽く掲げながら壁へと消えていった。
「おぉ、壁すり抜けたね!!」
「面白いシステムじゃの」
「……そっちを気にしてないで中に入らないか?」
アランが消えていった壁をペタペタと触る2人を横目に、主人公は扉に手をかけ、力を込めて奥に押した。
「ん?」
押した。
「ちょっと待ってどこか既視感が……」
押した……?
「ぬぐぐぐぐぐ!!!!」
やっぱ開かねぇわこの扉。
そうして主人公が扉と格闘していると、主人公の方に扉が開いた。
「のわっ!?」
「…………逆よ」
開かれた扉の奥には学園長ことカルテが姿を現した。
押し扉じゃなくて引き扉だったか。