原初のダンジョンは遊園地!?
「……そろそろ原初のダンジョンとやらを探すか~」
「んぉ? まだ探す気持ちあったんじゃな」
時期は春。 そう、春だ。 陽気に包まれることで有名な春だ。 冬の初めに探そうとか言っていたのは何だったのだろうか。 流石に休みすぎである。
「ようやく動く気になったんでやがりますか? よかったでやがります。 このままヒモとして生きるとか言ったらしばき倒すところだったでやがりますよ」
「いやぁ、流石にそれは……って目がマジだ。 も、申し訳ありません」
シェイルになら一回しばき倒されてもいいかなと思ったのはここだけの話。 そういうわけでギルドに行って来いと屋敷から追い出された主人公だった。
「少しだけあったかくなってきたな~」
≪ですね≫
「お、(ラフィスの声久しぶりに聞いた気がするわ)」
屋敷の近くのゲートに移動する際中。 冬の間は聞こえていなかったラフィスの声が聞こえて来た。
「(冬の間何をしてたんだ?)」
≪アホですかマスター? ダンジョンの管理に決まってるじゃないですか。 誰かさんがゆっくり休んでいる間も働いてたんですよ?≫
「すいやせん……」
ダンジョンの増設やモンスターの配置は主人公がいないとできないが、ダンジョン自体の維持や管理はラフィスだけでも出来る。 とはいえ主人公が働かないことを肯定しているわけではないが。
≪新規のダンジョンのみの報告ですが、自然公園のダンジョンは発見された上で容認されました。 火山のダンジョンは未だ発見すらされておりません。 海中のダンジョンは他のダンジョンの関係者らしき亜人が訪れましたが、最初のフロアすら攻略できなかったようです≫
「(海中のやつは集会で見たクソババアの配下だろうな)」
名称はクソババアでいいのか…… まあ正直名前考えてな……主人公はクソババアの名前を知らないからしょうがないな。
そんな話をしているとテレポートゲートに着いた。
「久しぶりの神都だな。 ま、早速ギルドに行きますか」
テレポートゲートで神都へと転移した主人公は、屋台から呼ばれる声などを無視して一直線にギルドへと向かっていった。
「あっ。 ……ツクル君? 冬の間は何をしていたんですかね????」
「ひょえっ」
鼻歌でも歌いそうな雰囲気でギルドに入った主人公の前には般若が立っていた。 おなじみSランク専属受付嬢兼Sランクのアリスさんである。
「……コタツに入ってぬくぬくしてました!!」
開き直りおったこの主人公。
「……コタツ?」
運が良いことに異世界にコタツは無かった模様。 知らない言葉が出て来たからか、般若が美人さんに戻った。
「あっ、コタツってのはですね……」
~コタツ説明中~
「ほぇ~ そんなものがあるんですね~」
「良ければ後で差し上げますよ。 まだまだ肌寒いですし」
「いいんですか!? ありがとうございます!!」
流石は主人公、中々の策士である。 別のものに誘導して怒られることを回避した。 ………というかそもそもなんで主人公は怒られそうになってたんだ???? 主人公も同じことを思ったようで……
「そういえば俺はなんで怒られそうになってたんですか?」
自分が怒られないことを信じてアリスに問いかけた。
「はっ!! 忘れるところでした!! アランさんから伝言と一緒に渡して欲しいって言われた物がギルドにあるんですよ!! 冬の前から。 冬の前から!!」
「……それは申し訳ないです」
今は春である。 これは怒られるのもしょうがないと思った主人公だった。
「それじゃあ持ってきますね~」
「…………モテない男どもはこっち見んな」
『あ゛ぁ!?』
ポテポテと奥に引っ込んでいったアリスが見えなくなったころ。 ギルドの中のモテない男子諸君が主人公のことを睨んできた。 リア充爆発しろ。
「お待たせしました~~」
「お帰りなさ~い ふっ」
この野郎あえて振り返ってドヤ顔しやがった。 これでSランクじゃなかったらギルド全体から袋叩きにされているところだ。
「ちなみにアランさんからは一言だけ。 「待っている」 だそうです」
「………遊園地のチケット?」
「あれ? ツクル君知らないんですか? 魔王城のこと」
「……魔王城????」
遊園地のチケットと魔王城がどう繋がるのかと考えた主人公だったが、まさかの答えを聞くこととなる。
「冒険者ギルドのSランクの一人が攻略したダンジョンを作り替えて遊園地を作ったらしいですよ。 世界には凄いことを考える人もいるんですね~」
「へぁ?」
「ダンジョンの中で唯一、人類に悪影響を及ぼさないダンジョンだと有名なんですよ!!」
「はぇ~」
ダンジョンを遊園地にしたなんていったい何処の売れないバンドマンがやったんだ!?
まあもちろんそんなことは主人公には分からないので、アランの伝言も聞いた上で、原初のダンジョンマスターはなんて効率の良いことを考えるのかと驚愕をしていた。
ちなみにその原初のダンジョンマスター様も同じことを聞いて驚いていたのはここだけの話だ。