獣人たちのダンジョン攻略③
「…はぁぁぁ」
「……次。」
「………もう一度だ。」
「…………キレそう。」
悪魔が楽しくダンジョン攻略をしているころ、獣人たちはデスルーラをして鏡の階層を攻略しようとしていた。
「ルート分かった~?」
「もう少し時間がかかりそうだ……ってお前は何をやってんだ?」
「休憩~? ちょ、引っ張らないで!? やだ~!! 行きたくない~~~!! や~~~~~!!!!」
一人だけサボっていたアホも動員し、鏡の部屋の攻略を急いだ。
「はぁ~ やだな~ チュインチュインいってるし~」
「目印は落としているんだ。 最初よりはマシだろう。 それじゃあ俺は先に行く」
鏡の通路の床には獣人たちが通った道を示すために木の棒を落としていた。 それを排除しないのは主人公の優しさだろう。
「死~にた~くな~いな~ みぎ~ ひだり~ ひだり~ みぎ~ ひだり~ みぎ~ みぎ~ ふ~んふ~んふっふふ~ん」
そんな落ちている棒は一切気にせず、もはや何も考えずに適当に進んでいたその時。 奇跡が起こる。
「み~ぎっ ひ~だりっ ま~え ま~え ま~え……お? おぉ?? おぉぉぉぉ!?!?」
彼女の前には定期的に光線を撃ち出している一つの機械があった。
「てりゃぁぁぁぁ!!!! ……止まった? う~む奇跡」
光線を撃ち出している機械はそれ一つだったらしく、鏡の中を反響していた音は少しずつ消えていった。
「後はゆっくり迷路を攻略しよっか~」
面倒なギミックが無くなったので、多少はグダグダ状態が元に戻った彼女だった。
「お? ようやく戻って来たな。 誰が攻略したのかは知らんが、光線がなくなったことで3層への道が開けたぞ」
「迷路を彷徨う意味なかったか~ まあ先に進めるならそれでいっか~」
迷路の中を迷いに迷った末に入り口まで戻ってきたことで、彼女はようやく迷路の意味が光線を出す機械が見付かりづらくするためだと分かった。
続々と集まってくる獣人たちの目の前には、2層へ上がってきた階段の横に3層へと上がる階段があった。
「ほら、先に行きなよ~」
「バカ押すな!! 何があるか分からんのだぞ!!」
そうして続々と数だけは集まってきた獣人たちだが、階段を前にしているのにも関わらず、鏡の階層がトラウマになっているのか、どの獣人も先に進もうとせず譲り合っていた。
「結局私が一番前なのは解せないな~?」
「攻略方法を考えるなら頭がいいやつを先に行かせた方がいいだろう」
「とか言って~ 自分が痛い思いをしたくないだけなくせに~」
『………。』
図星らしい。 静まり返った階段の中で、足音だけが響いていた。
「え? あれがお目当てのもの? ………3層だよ?」
階段を上がり切った一行の前には、だだっ広い円形の部屋があった。 部屋の中心には台が一つだけ佇んでいて、その上には美しく輝く球体のダンジョンコアらしきものが置かれてあった。
「階層は関係ないだろう。 おそらく2層にDPを使い過ぎたんだろうな。 それなら有難く頂いていくことにしよ……ぐぁぁぁぁ!?!?」
警戒もせずに足を踏み入れた獣人は、地面から突如現れた土槍に足を貫かれた。 痛い思いはしたくないんじゃなかったのか。 アホ。
「下は罠、上はモンスターってことだね~ みんな。 張り切っていこうか」
そんなアホは無視し、辺りを見回し、上を見上げた彼女はこの部屋がどういう部屋なのかを察した。 モンスター1匹すらいないと思っていたのは、床が罠に覆い尽くされているから。 その場に居るモンスターは全て飛行型のモンスターで、円形の部屋の上部分はモンスターたちに覆い尽くされていた。
「こっちの勝利条件は死んでもあれを持ち帰ること。 逆に敗北条件は私たちがあれを持って帰る前に相手が私たちのダンジョンを攻略することだね~」
「罠にかかったやつは味方の踏み台にでもなってから死ねよ!? うぉぉぉぉ!! あぁぁぁぁ!?!?」
落とし穴に落ちたら踏み台にはできないんやで。 というかそもそも美味しいところだけ持ってこうとしたお前は誰だ。 攻略目前で目立とうとするな。
「………君以上のアホがいたね~」
「………俺の足が貫かれたのを見てなかったのか? あいつ」
「俺たちは気を付けて行こうな」
味方からもアホ認定されてる……。 そんな残念な奴は放っておいて、獣人たちは死力を尽くして攻略を始めた。
~獣人攻略中~
「ちっ!! あと一歩だったのに!!」
~獣人攻略中~
「あぁ~!! タイミング悪すぎるよあのコウモリ!! 絶対落とし穴の位置分かってたでしょ~~~!!」
~獣人攻略中~
「よっしゃ台まで辿り着……ここで落とし穴ァァァァ!?!?」
~獣人攻略中~
鏡の階層と同様にデスルーラをしながらも、着々と攻略を進めていった。 そして………
「よっしゃぁぁぁぁ!!!! ダンジョンコア!! ゲットだぜぇぇぇぇ!!!!」
遂に自分たちのダンジョンが攻略される前に、ダンジョンコアを入手することが出来た。 そしてそれを自分たちのダンジョンまで持って帰り、獣人のダンジョンマスターに手渡した瞬間。
「ダンジョンバトルゥゥゥゥ!!!! 終了ォォォォ!!!!」
両者のダンジョンの中に、司会の実況が響き渡った。
「勝者はぁぁぁぁ!!!! “混沌の”ダンジョンマスターァァァァ!!!!」
『は? え? なん……え?』
どうやら勝負はそこまで甘くなかったようだ。