設置したダンジョン
「そういえばツクルよ。 ジャックの記憶が戻ったのは何よりじゃが、お主もしっかりダンジョンを設置して来れたのじゃろうな?」
主人公がニコルとラフィスに絞られた翌日。 ジャックの記憶が戻ったという連絡をするために学園に顔を出しに行こうとしたツクルは、ニコルの言葉によって足を止めた。
「一応何個かは設置して来たけど、詳細聞くか?」
「まあ一応頼むのじゃ」
「了解。 それじゃあラフィス?」
「ちょっとまってくださいねますたー。 こしが……」
そういえばラフィスは実体化していた。 いつものように頭の中に話しかけたつもりだった主人公は少しばかり驚くことになった。
≪それでは作った順に紹介していきましょうか≫
「まずは神都の自然公園だな。 コンセプトは『森の奥の幻想』 基本的には階層全てが森林に覆い尽くされていて、その中に紛れているモンスターを倒すことでドロップアイテムが落ちる」
「基本的にはということは階層が変化するのかの?」
その言葉を待っていましたと言わんばかりに主人公はあくどい顔を浮かべる。
「変化はしないが、そもそもの森林自体に仕掛けがある。 森林だと思っていた場所はガチャで出たモンスター『玄武』の背中の上ってわけだ。 ついでに玄武を倒すことで落とすドロップアイテムの中に超低確率でラストダンジョンに繋がる攻略の証の内の一つが出るようにしてある」
≪付け加えるなら、自然公園にいる動物たちの侵入は自由にさせているので、玄武の背中の上だと分かったとしても倒しづらくなるでしょうね≫
「なるほどの~」
良心に訴えることで倒されづらくしていると。 う~む外道。
「次は帝国の温泉街の傍にある火山の火口だな。 王国は設置するタイミングが無かったから、機会があれば王国にも設置しに行くつもりだ」
≪そこは私が設置したので道中も含めて説明しましょう。 まず前提として、火山の火口に近付くことが出来ません。 温泉街になくてはならない物なので、侵入自体が規制されています≫
「それはダンジョンとしていいのかの?」
ダンジョンとしては間違っているだろうが、主人公たちを守るためには重要なダンジョンになりそうである。
≪DPには困ってないのでいいでしょう。 内容の方はマグマの海となっていて、対策をせずに入ったら即死です。 そしてマグマの中には耐性を持った大量のモンスターと、ボスとして溶岩龍ボルケーノを配置しています。 玄武同様にボルケーノを倒すと超低確率で攻略の証が落ちます≫
「作った自分が言うのもなんだが、学園に設置した『空』以上のクソダンジョンだな。 マグマ自体の対策もそうだが、マグマの中でも使える呼吸用アイテムなんて基本的には無い」
「人類に攻略させる気が一切ないのじゃ…」
≪最後に商業国のダンジョンなんですが……色々な意味で問題があるダンジョンです≫
「………い、一個ぐらいは良いかなって…」
主人公が言いよどむほどのダンジョン……果たしてそれはっ!?
「……もしや」
≪お察しの通り。 エロ方面に走りまくったダンジョンですね≫
「……ちょっとばかし深夜テンションが暴走しました…はい…」
「……内容は?」
全く話そうとしない主人公の代わりにラフィスが話し始めた。
≪まず最初に階層に入った瞬間に催淫効果と淫紋付与の効果がある煙を吸わせます。 その瞬間にほぼ体の自由が利かなくなったと言っても過言ではないんですが、同時に追い打ちをかけるように、着ている装備に触手が侵食します≫
既にドン引きなニコルを横目に主人公はドヤ顔をする。
「安心してもらっていい。 俺に男を堕とす趣味はないから、対男にはすべての効果、モンスターが毒性のある物に変わる」
≪多分そこじゃないと思いますよマスター≫
「女の敵じゃな……」
「あぁそういうことか!! もちろんゴブリンやオークは出てこないから大丈夫だ!! かわいそうなのは抜けないからな!!」
グッ!! じゃないが。
「はぁ…それで? 色々ということはまだ問題があるのじゃろ?」
≪ええ。 最大にして最悪の問題がありますね。 このダンジョンの階層があるのは海中のダンジョンのボス戦前です。 “集会に参加しているダンジョンマスター”が保有する海中のダンジョンをまるまる全部侵食して、その中に作ってあります≫
「……ついにやりおったか…ラフィス、お主も分かっていて乗ったな?」
≪もちろん≫
頭を抑えながら話すニコルに対して、完全に忘れている主人公がオロオロしているが、思い出して欲しい。 話数で言えば4話、冒険者ギルドでの話である。
「あっ……同盟…戦争」
≪ようやく思い出しましたか≫
「まあ問題ないのじゃ。 転生して直ぐだと問題しかなかったじゃろうが、今なら誰が敵対しようともゴリ押しで勝てるじゃろう」
少し考えて思い出した主人公は、あはははは…… と乾いた笑いを零した