30.準備は大事
6の月の中間テストが終わると、運動会の練習が始まった。
運動会は7の月の半ば。運動会まで毎日のように体育の授業があった。夏~秋に変わる季節でまだまだ暑く、みんな真っ黒に日焼けした。フェリオも真っ黒になった。
フィオナの姿になっても、真っ黒だった。
同一人物なので、当たり前といえば、当たり前なのだが、フェリオが髪を切ったら、フィオナの髪も短くなるし、黒子の場所も同じだった。
フェリオは、日焼けするまであまり気にしてなかったが、個人が特定出来るような大怪我とか傷痕、後、顔とか黒子にも気を付けようと思った。
そして、魔力で日焼けした肌を元に戻したり、髪の毛の長さを変えたりできるのか、いろいろ試してみた。
練習した結果、日焼けや、怪我、傷痕などは治すことが出来た。
髪の毛の長さも多少変えることは出来たし、黒子も消せたが、姿を大きく変えることは出来なかった。
フェリオは、フィオナになった時のために少し髪の毛を伸ばすことにした。
運動会は、晴天に恵まれて、予定通り開催された。
二人の祖母が、来賓席から応援してくれた。
授業参観の時は、二人の祖母の周りにぞろぞろとたくさん人が集まっていたが、今回は、何の混乱もなく、他の来賓客と一緒に見てくれていた。
貴族に学校三大行事の来賓の案内状が届けられるのは、参観日の時のような混乱を避ける目的があるのかも?と、フェリオは思った。
運動会、フェリオは一生懸命頑張った。
フェリオのクラスは、全員仲がよく、団結力でどこのクラスにも負けなかった。全員が全員を応援し、力を合わせた結果、クラス対抗種目で一番。
総合得点も一番だった。
運動会は、怪我人が出ることもなく無事終わった。
8の月に入った頃、フェリオとフィオナの部屋の改装工事と内装工事が終わり、学校から帰ったフェリオは、侍女と新しい部屋を見学に行った。
フェリオの部屋とフィオナの部屋は隣同士の別々だった。
侍女にフィオナの部屋に入れるか聞いてみた。
「今はお部屋の入り口に鍵がかかっているので、誰も入れません。妹姫様のお部屋に入れるのは妹姫様のみでございます。清掃等、妹姫様の許可がある場合のみ侍女は妹姫様のお部屋に入室が許されます。男性の入室は、緊急時以外、禁止されております。兄君とはいえ、フェリオ様が入れるのは控え室までです。」
「じゃあ、フィオナもぼくの部屋に入れないの?」
「はい、フィオナ様もフェリオ様のお部屋にお入りになることは出来ません。ごきょうだいでも異性の場合、お部屋に入室できるのは初等学校入学前の幼児のみです。
フェリオ様、もうすぐフィオナ様がお戻りになられると伺っております。既にフィオナ様専用の侍女と女性の護衛も決まっております。フィオナ様のお戻りを私達侍女一同心よりお待ちしております。」
話し方からフェリオの侍女は、フェリオとフィオナが同一人物とは知らないみたいな様子だった。
新しいフェリオの部屋は、まだ一部今までの部屋の荷物が入れられていないものの、既に十分整えられていた。
部屋に入ると侍女が色々と説明してくれた。
「新しいお部屋は如何ですか?フェリオ様。」
「あまり今の部屋と変わらないかな?」
「そうですね、お部屋も控え室も衣装室も今より少し広くなったくらいでしょうか。今回の改装工事は主にフィオナ様をお迎えするためだそうですので。」
『だよね。お祖母様、張り切り過ぎです。』
フェリオは、フィオナのために色々準備をしてくれている祖母に感謝しつつ、そこまでしなくていいのにとも思った。




