29.二学期
二学期が始まった。
一週間のうち二回、火と水の曜日はお弁当持参、午後授業になった。
五の月の月末の授業参観日。初めての参観は、二人の祖母が来てくれる予定だ。
フェリオは、少し楽しみにしていた。
参観日当日、二人の祖母がフェリオの学校に到着したらしく、ざわざわと辺りが騒がしくなった。
フェリオは、少し嫌な予感がした。
祖母たちがどんどん自分の教室に近づいて来るのが分かる。
足音が多い。
『うわっ、やっぱり…』
フェリオの嫌な予感は当たっていた。
祖母たちは、学長と副学長に案内されてやってきた。
まぁ、多少は仕方ない。
が、それだけではない。護衛もいる。侍女もいる。
王妃と公爵夫人なら、まぁ、仕方ない。
でも、他所のクラスの貴族の子供の母親と思われるご婦人方までぞろぞろと引き連れてやってきた。
遠巻きに平民と思われる母親もたくさん見ている。これではフェリオのクラスメートの親は、教室に入るどころか、近付くことさえ出来ない。
『何しにきたの?何見にきたの?自分の子供のクラスに行って下さい。』
フェリオは、クラスの友達に申し訳なく思った。
ちらりと担任の先生を見ると、フェリオの気持ちが伝わったのか、先生がフェリオの祖母たちのところに行き対応してくれた。
暫くすると、二人の祖母以外の他の貴族夫人は、皆、フェリオの教室から離れて行った。
『サラ先生ありがとうございます。これでみんなの保護者の人たちが教室に入れます。』
フェリオは、心の中で担任の先生に感謝した。
無事に参観日は終わった。
最初、お祖母様たちがぞろぞろとたくさん引き連れてきた時は、どうしたらいいのか分からなかったが、サラ先生が上手く対応してくれたみたいだった。
『七の月は、運動会があるけれど、またあんな風にぞろぞろと集まってきたらどうしよう。』
フェリオは、心配になった。
ところが、後日、お祖母様が嬉しそうに、
「フェリオ、運動会の来賓の案内状が届きましたのよ。楽しみです。サラ先生のご配慮のおかげです。」
と、言っていた。
意味味が分からなかったが、詳しく聞くと、学校に通う子弟がいる貴族には、入学式、卒業式、運動会の三大行事の来賓案内状が、王国学校教育統括管理局から届くらしいのだ。
但し、保護者が国王夫婦の場合、城下の学校に行くことが難しいと言う理由から、母方の親族に来賓の案内状が届けられる慣例になっていた。フェリオは、入学式にイーデアルの祖父母が来賓で来ていたことを思い出した。
サラ先生は、慣例を廃止し、保護者が国王夫妻の場合は国王夫妻と母方親族の両方に案内をするように教育統括管理局に意見してくれて、異例の早さでその事が通ったらしいのだ。
「後、1ヶ月しかないですが、運動会を見に行けるように予定を調整しています。運動会、楽しみにしています。ところで、フェリオ、フィオナの部屋に置いて欲しい物は何かありますか?」
「特にありません。ぼくはよくわからないのでお祖母様にお任せします。」
「そうですか、では、この祖母に全て任せなさい。遅くとも二学期の間中には改装工事が終わる予定です。」
「はい、お祖母様、よろしくお願いします。」
『やっぱりあの改装工事はフィオナの部屋だったんだ。別に改装工事なんてしなくても普通でいいのに。』
そう思ったが口にすることはなく、祖母のところを後にした。




