28.姿変われば気持ちも変わる?
楽しかった一学期が終わり、学期間休みに入った。
王宮で、フェリオの8歳の誕生日パーティーが開かれた。
誕生日パーティーには、フェリオのクラスメートもたくさんいたので昨年以上に楽しく盛り上がった。
翌日からは、初等学校に通う前と同じように午前中は勉強と剣術、午後からは、祖父のイーデアル公爵による魔法の学習時間だった。
去年の12の月から今年の4の月までの4ヶ月半、祖父から魔力操作を習った結果、フェリオは夜だけでなく昼間でも数時間女児の姿を保つことが出来るようになっていた。
一学期末休みから、フェリオは、女児の姿で魔法の学習をすることになった。
初めて女児の姿で祖父の魔法指導を受けたが、なんとなく男児の姿の時よりも女児の姿の方が魔力操作しやすく感じた。
何度か祖父の指導を受けるうちに、女児の姿の方が繊細な魔力操作がしやすいと思うようになった。
16日間の長い学期間休みが終わる頃には、昼間女児の姿でいることに慣れ、昼間でも三時間近く姿を保てるようになっていた。
二学期が始まる前の日、フェリオは祖母に呼び出された。
「フェリオ、イーデアル公爵様から、あなたが昼間でも三時間くらい女児の姿でいられると聞きましたよ。」
「はい。夜はもう少し長く女児の姿を保てるのですが、昼間はまだそのくらいです。」
「あなたのために、これを用意しました。着てみて、私にその姿を見せて欲しいのです。」
祖母が用意した服は、いかにもお姫様が着そうなドレスだった。
『まじか?恥ずかしい。絶対無理。』
「お祖母様、ぼくは、ドレスなんて着たことないので、どう着たらいいのか分かりません。」
やんわりと拒否をした。
「やはりそうですね。仕方ありませんね。」
祖母はがっかりした様子だったがフェリオはほっとした。
「でも、大丈夫ですよ。違う服も用意してますから。」
『逃げられないか。仕方ない、諦めて言うことを聞こう。』
祖母は、女児用の夜着と下着を用意していた。
『さっきよりマシ?恥ずかしいけど。』
しぶしぶ着替えることにした。
別室で女児の姿になり、夜着を着る。女児用の下着も初めてだ。
でも……悪くなかった。
そして、少し恥ずかしかったが、祖母の前に行った。
「お祖母様、着替えました。」
「まぁまぁ、ぴったりですね。フェリオの身長が八歳の男児の平均くらいなので、同じ八歳の女児の平均サイズを用意したのですよ。でも、実際に正確なサイズを測る必要がありますね。」
祖母は、そう言って侍女を呼んだ。
フェリオ(フィオナ)は、別室に連れて行かれた。下着姿にされ、全身のサイズを測られる。
男児の姿の時は何とも思ったことないが、女児の姿で測られるのは初めてなので、恥ずかしくてたまらない。
最後にドレスを着せられ、鬘も被らされる。おまけに軽く化粧まで…
『最初からそのつもりだったのか。』
フェリオ(フィオナ)は、漸く気づいた。
…でも
悪くない。
いや、むしろ嬉しい。
なぜだろう?男児の姿の時は、女児のドレスを着るなんて嫌で仕方なかったのに、女児の姿の時は、ドレスを着て嬉しく感じる。
鏡に映った自分の姿を可愛く思い、何故か満足感をおぼえる。
フェリオ(フィオナ)は、侍女に導かれるまま祖母の前にいったのだった。
「お祖母様…」
フェリオ(フィオナ)が祖母に話かけようとした途端に、祖母に抱き締められる。
『えっ?』
フェリオ(フィオナ)は、驚いた。
「フィオナ、漸くあなたに会うことができました。ごめんなさいね、フィオナ。これが本当のあなたなのですね。とてもかわいいですよ。」
祖母は、涙を流しながら言った。
「フィオナに似合いそうな服をもっとたくさん用意致しますね。待っていてね。あなたの部屋も、あなた専用の侍女も、何もかもフェリオとは別のものを用意しますね。遅くなってごめんなさいね。」
「いえ、お祖母様、別にそこまでしなくてもぼくは今まで通りで大丈夫です。」
「…言葉遣いの先生も必要ですね、フィオナ。王女が自分のことを『ぼく』と言ってはいけません。」
祖母に言われてしまった。
次の日からは、二学期が始まったので、フェリオは男児の姿で普通に楽しく学校に通い始めた。
同じ頃、何故か大規模な改装工事が始まった。
王室のプライベートエリアなのに?どうしてだろう?フィオナの部屋にしてはそこまでする必要ないし。内装が傷んでいるのかな?
気にはなったが昼間は学校で、城に帰ってからは、魔法と剣術の練習で忙しかったので
スルーした。




