ミラの冒険
今回からミラ視点です。と言ってもすぐに終わります。完結も近いです。
私は嘘をついた。今まで生きてきた中でついた2番目の嘘。許されなくてもいい、私は臆病者で、卑怯者でいい。むしろもう何でもいい。あの2人に出会えれば。
いつの間にか何の前触れもなく忽然と消えた2人、私はその2人を追うため、撤退する同僚のグループに嘘をつき、私は戦場に残った。
あの日、ヒナ様とコモモさんが部屋で話していたこと、『ヴァルハラを捨てる』、私はそれを盗み聞きしていた。壁越しに、聴力を強化して。
2人の言っていることは全く理解できなかったし、何の話をしているのかも検討がつかなかった。けれども、いなくなってしまう、ということは確かだと勝手だが弱い頭で考えた。
1人は寂しい、私もついて行きたい、とも。
あの2人に出会えたから私はほんの少し変われた。ほんの少し明るくなれた。それだけの理由、本当にそれだけ。
そして、それが行われるのが今日。2人についていけるのなら未練などない。
今私が歩いているのは、2人の辿った道そのまま。私も同行させてください、とコモモさんに言ったあの時、こっそりと甘い香りのする薬をコモモさんの服に付けた。意識しなければわからないような本当に薄い香り、それを嗅覚強化でたどっている。誤算だったのはそれに混じって臭う死臭、吐き気がしそう。
戦という世界に入り、少しは慣れたと思ったのに、これじゃあダメだと思う。死の香りはこの世界の香り、順応する自信はないけど。
しばらくして私は敵の城へとたどり着く。コモモさんの甘い香りはこの城の地下をゆっくりと移動している。間違いはないが、どうしてここにいるのか、やはり私にはわからない。でも確定しているのは、ここに別の世界への入り口があるということ。
侵入を試みるも、裏口のようなものはなく、聴力強化で表にはハレン様とザクロ様の隊がいるのを確認した。侵入は不可能、香りは表側を通っているが、一体どうやったのか検討がつかない。透明人間にでもならなければ。
だが不可能とはいえここで止まるわけにもいかない、と私は手を銃のようにし、1発魔力弾を放つ。この城は石造り、簡単に壁には人1人入るのには十分な穴が開く。心配なのはこの音に誰かが気がつくことだけだが、私も聴力を強化してやっと聞こえる程度の距離、おそらく大丈夫。
「ちょっとワクワク…」
ヒナ様、コモモさん、今行きます。
穴をくぐり、城内へと侵入する。庭でもあるのかと思ったが、入ったところは部屋の中で、シーツや枕のようなものがあるのを見る限り、ここは寝室だろう。ベッドの素材も見たことがない、茶色のまったく新しいものだ。悪いことをしているとわかっているが、どうも楽しくて仕方がない。




