最悪の再会
思えば私がこんなことをするなんて、夢にも思ったことはなかった。これが本当に私かと疑ってしまう。本当に夢ではないのか。
私は頬を数回叩く。ちょっと痛い、これは夢ではない。
暗い室内、辺りには蛍光灯らしいものも、電気を入れるスイッチのようなものもない。これでは世界への入り口はおろか、まともに歩くことすら困難、目が慣れるのを待つしかないだろう。
しかし私には関係ない。いつものように右手を銃の形にし、こめかみに当て1発撃ちこむ。強化したのは当然、目。私は今、嗅覚と視覚を強化したちょっとすごい人間だ。
目をパチパチさせ、強化具合を確認する。
「ん…、よし、おっけ」
視界は良好、ごく僅かにある光を限界まで集め、外の昼と変わらないほどになった。この状態で外に出たら大変な事になるな、と余計な心配をしてみる。
ああ今私楽しんでいる。こういうの素敵。
状況が状況だけに、楽しんでいる、というのは少し違うかもしれない。吊り橋効果というのか、恐怖のドキドキを冒険心のドキドキと勘違いしているだけかも。けれども、怯えて何もしないよりマシだ。
すでに暗いとも何とも感じない城内、見えるようになって気がついたが、この城は本当に謎の素材が多い。鉄はほとんど–––というか全く––––使われておらず、茶色っぽい渦巻きのような模様がついた軽そうな素材の家具が多く見られる。主に机と椅子だ。
試しに座ってみたが、なかなかよろしい。持ち帰りたいくらいだ。
「おっと、こんなことしてる場合じゃないよね」
1人クスクス笑い、さっと立ち上がる。本当に笑っているのが嘘のよう。だってここは戦が終わったとはいえ敵陣、死にに来たようなものだ。
いや違う。私は2人について行くだけ。
そう、とにかく2人を見つけなくてはならない。甘い香りは部屋を出た左側から香る。道標はそれだけ、他には何もない。鼻歌交じりにただただそれを目指す。
「ふふん、ふんふふん」
曲名はない、愉快な調子の私のオリジナル。
歩いていると目に付いたのは扉。やはりこれもスイッチのようなものはない、手動で開けるようだ。
私は気になってその扉を開く。そんな時間はないのに、気になって仕方がない。依然、甘い香りは地下から漂う。
扉はぎぃ、といって開いた。中を覗くが特に変わったものはない。強いて言えばこんな不便そうなところでどうやって住むか、が気になるくらい。
扉を閉め、今度こそ甘い香りの方へ行こうとする。
「やあプリティガール。やはり運命かな」
突然後ろから肩を掴まれ、声をかけられた。
「きゃ!」
瞬間、私の心臓は止まりそうになる。誰もいないと思っていた城内、そんな場所で声をかけられたら誰だって驚く。しかもその相手が問題だ。
「ザ、ザクロ様…」




