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魔法庁の現対たち  作者: ロータリィ少尉
Route 海野 第一章 チビとの遭遇
20/22

0.1727

 俺は魔法使いというものを信用していない。信頼していない。ヒトではなく、人間ではなく、人サマの真似をしているニセモノで、得物を突き立てながら言葉を交わす悪者で、偽物で紛い物で侵略者で、陰険で狡猾で悪辣で毒辣な、嫌悪感の塊としか思っていない。――いや、思っていなかった。

 それが何だ、このクソガキは。良い歳した()()の大人に騙され、良いように丸め込まれ、都合良く育てられている。一体どっちが悪なんだ。


 …………違うな。いつだったか『人だとか魔法使いだとかで区別をするな』と言われたが、本当はそんなこと言われなくとも分かっていた。認めたくなかっただけだ。罪を犯す人間がいるように、善行に走る魔法使いもいる。善悪の前では、生物に差異など無い。勝手に決めつけているのは、俺の方だ。


 「すぅ……はぁ……。海野さん、いつでも行けます!」


 少なくとも、こいつは――


 『――Switching to Open Channel. ――――Hello, User. Channel opened.』


 「――こちら海野。対象は現在能力の行使過多により衰弱中。対象の精神汚染(コンタミ)深度は目算でⅡ。これより本格的な不活化活動に入る。消防隊へ通達。散水を行っている班は対象への鎮圧放水へ切り替えるため、散水を中止しこちらへ来い。俺の合図とともに対象への放水を開始。消火班はどこ撒いてるか知らんが、対象周辺の家屋の消火を最優先に動け。なお、対象の子どもが家に取り残されている。山浦が救助を行っているから救護班、山浦が戻り次第病院に運べ。以上」

 「よし、始めよう」


 「はい!」


 「展開始め!」


 「いきます!」


 そう言うと、透明なV字型のバリアが俺らを囲うように形成された。一発とはさすが現行世代サマだ。


 「ちょっと範囲が狭いな。山浦(あいつ)が戻ってきた時のためにも、手の角度を変えて広くしてみてくれ」


 「こう……ですかね」


 うん、まぁこんなもんか。放水班も後ろに待機している。これならいけそうだ。


 「おい聞こえるか!もうほとんど()()()()だろうから理解できると思って伝えるぞ!」

 「我々魔法庁魔法対策本部の現場対応部は、汚染深度Ⅱ以降へと深化し免責範囲を逸脱した貴女に対し、15時37分、『災害の予防措置及び現場対応に関する基本方針』に基づき、直接的な対応を行う!なお、本件は対応の要請を受け、対応時特別規定500(ごひゃく)番台の現場判断による発令が許可されている!これにより、担当者である海野勇吾()の判断で対応時特別規定503(ゴゼロサン)の発令および執行を行う!これ要請書ね!見える!?見えたね!?」


 「――こちら海野。対象への鎮圧放水開始。対象との距離を少しずつ詰めろ。以上」


 「――!――――!」


 ヤツへの放水が始まった。多少距離あるとはいえ、あの水量は痛そー。


 「――放水班、こちら海野。怪我されても困るからあまり当てすぎるな。起き上がるところを狙い打て。あとは拡散でいい。以上」


 「よし、バリアを維持したままゆっくりヤツに近付くぞ。確保して人間にする。アッシュは動けないから横に逸れないようにしながら行こう」



 「む、無茶苦茶言いますね……まぁ歩きますけど」


 『こちら山浦。子どもを確保した。気を失っているが脈はある。すぐ外に出るから、救護班頼む』


 マジか。


 「あいつが子どもを見つけたってよ。無事だそうだ。アッシュ、お前はあいつが出てきたら一緒に行ってやれ」

 

 「わかりました」

 

 「それは……すごいですね」


 一歩、また一歩と慎重に進む。バリアで大方防げているおかげか、あるいは放水や消火のおかげなのか、熱気はあまり感じない。あの時の恐怖心も、今はもう無い。


 「それで海野さん。その不活化?というのはどうやってするんですか?」


 「あぁ、今回はこれを使う」

 

 カバンから取り出した箱の中には、薬液が充填されたカートリッジ2つと、ペン型注射器のガワが入っている。ガラス瓶じゃないものの、爆発で俺ごと吹っ飛んだから流石にダメだと思ったが、見る限り大丈夫みてぇだな。

 

 「なんですか、それ」


 「これは注射器だな。見たことないか?足とかに押し当てると中の液体が勝手に体に入ってくんだ」


 透明な薬液と赤色(せきしょく)の薬液が入ったカートリッジが一本ずつあるが、今回は透明な方のカートリッジを注射器に込め――やべ、今左手が無いんだった。


 「すまんセピア、こっちの透明な薬をここから入れてもらっていいか?――助かる。ちなみにこれをヤツに打つと、ヤツは能力を使えなくなる――人間になるって仕組みだな。なんでなのかは知らん」


 「そっちの赤いのは?」


 「こっちは()()()()()()()だな。まぁ今回は使わないから気にしなくていい」


 「――あ、山浦さん出てきたので行ってきます。セピアさん、ありがとうございました。」


 「おい、俺にはないのかよ……ったく」


 アッシュが行くと、山浦が出てきた家が燃え始めた。というか、今までも燃えてたよな?その割にはやけに静かだったような……アッシュが何かしてたのは遅延能力か何かか?


 「――こちら海野。対象への放水止め。これより、特規503による不活化薬の投与を対象に行う。以上」


 「セピア、バリアはもういいぞ。もう暴れる力はコイツに残ってないだろ」

 「おい、お前言葉は理解できるか?喋ることはできるか?」


 仰向けにぶっ倒れているヤツに話しかける。


 「あ、あなたたちは、何なんですか……」


 「さっきも言ったんだが聞こえてなかったか?俺は魔法庁魔法対策本部から来た、現場対応部の担当者、海野だ。こっちの警戒してるちっこいのがパートナーのセピア。あんたは?」


 「木村、です……」

 

 「そうか。色々分からんところもあると思うが、木村さん、この要請書に基づきあんたには特規503の執行が適用される。執行内容は『投薬による能力の抹消』だ。その後、警察に引き渡す。まぁ一般犯罪(通常の犯罪)と同様に裁かれるだろうな。じゃ、さっそく執行するから」


 「もう……好きにしなさいよ」


 対象者――木村さんの左肩に注射器を押し当てる。


 「――っ!」


 「……はい、終わり。これで5分もすれば完全に能力使えなくなるのと、それに伴って今あんたが感じてる体調の悪さとか不快感とかも治まるから。あれはコンタミのせいだからな」

 「良かったな、生きやすくなるんじゃねぇか?……まぁ、同情はしねぇけど」


 誰がこんなヤツに同情してやるかよ。


 「――こちら海野。対象への執行終了。消火班は引き続き対応しろ、以上」

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