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気になるアイツと精霊さん

 私は電子の精霊。名前は、ホロン。

 住んでいるところは… 魔導コンピューターの中という事になっている。

 でも、私は必ずしもハードウエアに縛られている訳じゃない。その本体は主様の言う4次元時空連続体と5次元の間… 中間空間にあるからだ。


 そして……


 最初のバージョンは主様に創られたマスコットという感じの存在だったらしい。

 主様はひとりぼっちだから、話し相手が欲しかったのかも知れない。

 得意分野は、情報の分析… かな。情報の収集や整理、場合によってはある程度の予測なんかも出来る。

 そうなるまでには、ずいぶん主様にしごかれたけどね。


 ある時、中間空間で寛いでいたら、何かが触れたような気がする。

 残念ながら、その時の事はよく憶えていない。当時の私はまだ、単純な自動応答プログラムに過ぎなかったから。

 でも、いくつか… 断片的に憶えている事がある。それが……


 レメ… ィウス。


 それが何なのか分からない。でも、この接触こそが私に自我が目覚めた瞬間なのだと思ってる。それからの私は、著しく成長したと思うんだ。


 そして、精霊や神々と。彼らは実に色々な事が分かってきた。今までは何を聞けば良いのかさえ分からなかっただけに、これは大きな収穫だったと思う。

 ほんとに、色々な事を教えてもらった……


 主様が暮らし、私が宿る魔導コンピューターがある惑星ゼルカ。

 かつてこの惑星を中心に、星間文明が存在していたという事を。


 だけど、今のゼルカには星間文明の痕跡など残されていない。

 今から200年ほど前に起こったひとつの事故が原因で、この星間文明は滅び去ってしまったのだから……


 その時代に、私達の住むシラフェイアと言う名の宇宙が崩壊しかねない大事件が起きたらしい。それも隣接するいくつかの宇宙を巻き添えにして、だ。

 主様は多くを語らないけれど、たぶんあの人の故郷は、巻き添えになった宇宙のどれかだったのだろう……


 惑星ゼルカは、それでも被害が少なかった方だ。

 宇宙的な災害は、銀河の星々の1割を粉々にしたのだから。

 次元の狭間に飲み込まれた銀河も、決して少なくはない。


 幸いにも惑星ゼルカの人類は、人口の95%を失ないながらも生き残った。

 文明レベルは原始時代に逆戻りしたが、彼らは決して諦めなかったという…

 それから150年ほどが過ぎたある日──


 主様が、ゼルカの大地に降り立った。


 ファイル履歴などから推定すると、今の私が創られたのは、そのころだ。

 そして、現在に至るのだけど……


「ふむん?」


 主様、どうしたのです?


「ガイア宇宙から、誰かが来るようだ」


 それは、崩壊を免れた超次元通路で繋がっているけれど、どうしても帰りつくことが出来ない、私たちの故郷… だ。

 超次元通路は激しく流れ下る滝のようなもの。通路の外側は流れは逆になっている筈だけど、通路の壁を超える事は、文字通りの意味で不可能。


「ふむ、あれのようだな」


 超次元通路の半ばまでやってきた私たちは、ガイア宇宙からの来訪者を見つける事が出来た。残念ながら、それは主様を連れ戻すための使者ではなかった。

 惑星ゼルカの人類が、主様の故郷の、チキュウ…に魔力的なトラップを仕掛けて、誰かをゼルカに引き寄せる事に成功した結果… だそうだ。


「異世界召喚と言えば聞こえはいいが、体のいい誘拐事件だからな。

 これこそ許しがたい犯罪だ」


 それを聞いてしまったら、私も穏やかではいられません。

 彼らの行ないには、かつて精霊たちから聞いたゼルカ人の面影など、どこにも無いのですから……


 それにしても、小柄な…… 誘拐されたのは子供のようです。

 これは見過ごしてはおけません…… けれど……


『おぼががががが……』


 ううう、主様は酷い。あの子供… サクマユウマと言いましたか。

 強引に彼の脳にデーターを、それも大量に流し込んでいるみたいです。

 ひどく苦しんでいるようですが、どうするつもりなのです。

 やめて、やめてください、このままでは……


 それは、ほんの僅かな時間でしたが、サクマユウマにとっては永劫の時間が流れたように感じたかもしれません。それほど大量のデーターを──私でも経験したことがない密度で──送り込んだのです。

 よくもまあ、脳が焼き切れなかったものですねぇ……


 やがてデーターの送り込みを終えた主様は、サクマユウマに話しかけました。


「君の脳にあの世界の常識や知識とユーティリティをインストールしておいた。

あとはちょっとした強化なんかもな。それらが身体になじむまでちょいと時間がかかるんだが、そのあたりは上手くやってくれ」


 そして、サクマユウマの精神を拡張して、わたしがそこに常駐する事になったのですけど…… これは、すごい……。すごいなんてものではありません。

 サクマユウキは、可能性のかたまりです。そんじょそこらのスーパーロボットでさえ砂粒に見えてしまうような、とってもな存在です。


 その伸びしろは、限界が無いように思えるほど。


 主様、本当にいいんですか? 私がサクマユウマの精神に常駐していても。


 彼が望めば、そして私が望むのなら。

 私達は全てを救う神にも、全てを滅ぼす悪魔にも… なれるでしょう。


 それ以前に、ひとつ問題があるのですけれどね。


 おーい、サクマユウマ。

 早く私に気が付いてよおぉおお……

佐久間君に宿っている電子の精霊の名前はホロン。

身体が光の粒で構成されているので、ホログラムのHOLON じゃなくてPHOLON。

最初は修一郎のデスクトップマスコットぽいプログラムだっのですが。

何か分からない理由で自我に目覚めましたとさ。

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