迷宮生活 三十二日目
迷宮生活 三十二日目
ここ数日、怪我を負った個体を残して狩りを行っていた野良サハギン達が、再び全員で狩りに出かけた。どうやら、群れの全員が完治したようだ。
今日は直ぐに戻ってきたが、またいつ人間(仮)を襲いに遠征に行くかわからない。
FPは惜しいが、やはり追い出すべきだろうか?しかし、追い出したからと言って、野良サハギンが迷宮の近くに居を構え続ける限り、討伐隊に見つかる危険性は残り続ける。
野良サハギンを殲滅すれば、討伐隊が組まれる可能性は多少は低くなるだろうが、ダンジョンモンスターは迷宮の外に出られない。迷宮の入口にいる野良サハギン達を逃さず倒すことは難しいだろう。
であれば、野良サハギン達のFP収入で、少しでも早く新しい権能を解放したほうが良い気もする。
次に解放したい権能の候補は三つ。
『迷宮内政ツリー』の【監視体制】600FP。
同じく内政ツリーで【獲得魔素量増加Ⅰ】解放後に追加された【小規模迷宮】2000FP。
『魔物召喚ツリー』の【中級魔物召喚Ⅰ】1000FP。
権能の値上がりもあり、どれも必要FPが高い。やはり野良サハギンは危険を犯してでも飼い続けるべきか?
DPも順調に貯まっており、現状でも銛装備のサハギン・ウォーリアを百五十体も召喚することができる。野良サハギンの討伐隊に発見されても、迷宮が陥落することは無いだろう。
迷宮が露見してから、迷宮を攻略できるだけの戦力を整えるのに、どれだけの時間がかかるかはわからない。しかし、中世レベルの文明ならば、数週間かかってもおかしくないのではないか?
対してこちらは、野良サハギンが殲滅されたあとでも、十日あれば【中級魔物召喚Ⅰ】を、二十日あれば【小規模迷宮】を解放できる。シャーマンを追加すれば、更に短縮することもできる。
迷宮が見つかるのは遅ければ遅いほど良いが、侵入者を恐れ過ぎる段階もそろそろ終わりとしていいだろう。野良サハギンには、これからもFP稼ぎと第一防衛戦を担ってもらうことにする。
そうなると、【監視体制】を最優先で解放するのがいいだろう。【監視体制】さえ取ってしまえれば、迷宮の入口以外でも侵入者の様子を見ることができるので、野良サハギン達が狩りで全員居なくなる問題も解決する。
今のペースならあと三日で【監視体制】を取ることができる。それまでに、討伐隊が来てしまわないかが唯一の不安要素だ。
「収入」
DP…678P
FP…129P
「出費」
DP…18P
(食費18)
FP…0P
「合計」
DP…+660P
FP…+129P
「所持ポイント」
DP…11583P
FP…297P
「【監視体制】」…各区画毎に最大百ヶ所の監視範囲を設定することができる。また、監視範囲内に侵入者が入るとアラームを鳴らすよう設定する事もできる。本来は迷宮の初期権能であったが、『青の神』が初期投資をケチったため、【簡易監視体制】に置き換わっていた。
「【小規模迷宮】」…迷宮の区画をマスタールームを除き、最大三つまで増設することができ、一日の獲得魔素量も増加する。迷宮の初期設定を『小規模』以上にすると、権能ではなく迷宮の基本機能になる。『青の神』が費用削減のため初期設定を『最低限』にしたため、権能として解放が必要になっている。
「神」…この世界には八百万の神々が存在しており、それぞれが信者となる人間や魔物と「繋がり」を有している。神々間の誓約により、人界に直接干渉することはできず、迷宮や「神殿」などの異空間を創ったり、信者に「神託」や「恩寵」を与えることで信仰を得ている。