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71話 名も無い場所にて

見きり発車なので来週投稿出来るかは謎です。

出来るだけ毎週は続けるように頑張ります。




 WORLD FANTASY

 現実と同じだけの街があり、その全ての形や大きさは寸分違わず同一である。

 他の二種においても同じことが言えるのだが、今は隅においても問題ない。


 WORLD FANTASYにおいて、ログイン場所は現実世界にある謎カプセルの位置に直結する。A区でログインしたならば、必ずA街にログインされるのだ。

 基本的にはその街の中央にログイン、又はログアウトすることになるが、もちろんそれには例外が存在する。


 例えば学校指定の謎カプセル。

 これにはログイン時に特殊なコードを発行する機能があり、現実と重なり合う場所にログインされる。

 またログアウト時も特定の場所と限られており、専用の鍵が必要となる。


 こういった謎カプセルは増えつつあり、病院や近くのスーパーにまで設置されている始末だ。合鍵を作り売ることによって簡単に誰もが移動することが出来る、今や最先端の移動技術といっても過言ではない。


 もちろんそうなってくると、謎カプセルでしか出入りが出来ない秘匿された場所も作れてしまう。

 また鍵は140桁のパスワードにより作られているため、人の手で開けることは容易くないだろう。クラッキングが確認されるとアカウントの永久停止作成禁止処分が下されるのも理由の一つだ。



 さて、ここは[ハルジオン]から2つほど離れた街である。民家が立ち並ぶ住宅街の地下奥深く、暗闇に閉ざされた場所にてログアウト可能なスポットが存在した。

 辿り着ける者はルートを知っている極わずかのみ、そして辿り着けてもログアウトに必要な鍵は誰が持っているともしれない。合鍵さえも作られているか定かでない為、行き来する者は140桁のパスワードを毎度入力しなければならない。

 定期的に変更されるパスワードを毎度入力するには本鍵の関係者でないと到底無理だろう。そしてここで言う本鍵の関係者とはつまり……。




 ──この先にDIMが集まる場所がある。DIMと繋がりが持てればきっと……。


 140桁のパスワードを入力し、彼女は万感の思いを胸に寄せた。

 今まで掴んできた情報が彼女の自信を裏付けする。この時間、このタイミングでなら長年追ってきたDIMと接触することができる。ようやく、ようやく今までの苦労が実を結ぶ。



 「…………誰も、いない?」


 そう呟いたのは狐耳の生やした黒髪の女性。

 ログアウトした先で彼女が見たものは、彼女にとってあまりにも残酷なものであった。

 四方を壁に囲まれた空間に一つの謎カプセル。外界から断絶されたその場所では、天井を緑の魔法陣だけが薄く光を放つ。


 冷や汗がツーっと地面に零れ落ちた。情報が違っていた……いや、偽物を掴まされたのか。


 「まさか、私の行動は筒抜けだった……?」


 女性は己が思っているよりも酷く同様する、頭を過ぎるのは悪いことばかり。今までの苦労と、それが水の泡になったかような絶望感。


 もし彼女の行動が知られていたのなら、ここにはもう誰一人として来ることが無いということ。そしてチャンスはこれっきりで次など存在しないということ。近付こうとしている者に正体を見せるほど優しい組織ではない、きっと彼女の前にはトカゲの尻尾すらも見せてくれなくなる。


 そうなればもう二度と親友を取り戻すことも出来なくなる。


 「どうして! やっとの思いでここまで来たのに!」


 叫び声は壁に反射して幾重にも重なり続けた。


 「まだ、まだ足りないっていうの! ここまでしても私は……ひとみに会うことすら、出来ないの……?」


 膝を付いて涙を流す。

 この場所を知るためにどれだけのことをしてきたか、一体どれだけ非人道的な行為を行ってきたか。裏社会で生きてきたのは全てはDIMにたどり着くため、それなのに最後の最後でこんな……。


 「もう疲れたよ、瞳」


 天井で光る魔法陣を見て彼女は乾いた笑みを浮かべた。

 一層の事この魔法陣が起動して、天井が崩れさればいいのにとさえ思えてしまう。……もう限界だ。



 「残念ながら、その魔法陣はただの空気循環装置だぜ」


 静かに蔑むような声。

 誰も居ないはずのその場所に男の声が木霊した。


 ふと声のした方へ振り返るが、しかしそこには誰もいない。

 幻聴。そう思い顔を戻すと男が一人、目の前に立っていた。


 「〜っ!!」


 驚きのあまり声も出ない。

 その驚きように男の口元が歪み、その醜悪な顔に彼女の背筋が凍り付く。


 「おいおいそんな目で見ないでくれよぉ。あんたにとって俺は唯一の希望なんだぜ」

 「……あなたは?」

 「おいおいそりゃねーぜ、ここにいる時点で察してるんだろ?」


 ヘラヘラとした口調につい顔が歪む。しかし男の言う通り彼女にとって唯一の希望なのは間違いなかった。

 彼女以外にこの場所にいるということは、彼女がどんな手段を取っても接触を図りたかった組織の一人。


 「識別番号103番。まあ気軽に103番と呼んでくれ」


 男は笑って謎カプセルに腰をかける。

 彼女の行動、その理由はもう既に暴かれている。103番が自分を希望だと言った時点で彼女はもう逃げる選択肢を残されていなかったが。


 「分かったわ、103番。それで私は何をしたらいいのかしら? 今ここであなたと寝たらいいの?」


 103番の視線が彼女をなめるようだったことに彼女は潔く服を脱ごうとした。半分冗談だがそれならそれで構わない、もうこれ以外捨てれるものなどありはしないのだから。


 「おいおいまさかそんな事のために俺が来たとでも思っているのかよ」

 「そんな目で見ていたら誰だってそう思うわよ」

 「いやはやこれは失敬」

 「……それで?」


 位置的にいえば103番の方が圧倒的に上である。今この状況は103番の気分次第で如何様にも変えられると分からない彼女ではない。

 それでもなお畏まった口調では喋れない。それは誇りから来るものではなく、虚勢を張り続けるため。完全に下手にでればどうなるかは想像に難くない。


 彼女の疑問に103番は薄気味悪く笑うと口を開いた。

 僅かに歪む顔色。小さな変化に気付いた103番はそんな彼女をせせら笑う。


 「どうしたよ? 今さら出来ないとでも言うつもりか??」

 「そんなこと……あるわけないじゃない。私は瞳のためなら何でもすると決めたの」


 自分に言い聞かせるように。

 彼女は103番を見据えた。そして覚悟を伝えられた103番は顔を隠して大きく震えだし、嗤う。


 「あはははっ! そうかいそうかい! なら話はこれで終わりだ。しっかり役目を果たしてくれよ」


 いかにも上機嫌だと言わんばかりに謎カプセルなら離れ、壁の方へと歩いていった。

 そして壁を通り抜けるようにその場から消える。


 あとを追うように彼女は壁に手を伸ばすが当然すり抜けることはなく、振り向いて謎カプセルへと向かうのだった。


 「……瞳。もう少し待ってて」

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