おまけ
おじいちゃんへ。
いえなかったことがたくさんあったから
てがみをわたすことにするね
まずは、ごめんなさい
パパとママがおほしさまになったのは、ひよりをまもろうとしたからです
ひよりがおうまさんをおこらせてしまったからです
もしつれていかれたのがひよりだけだったら、おじいちゃんはさびしくなかったのかな? そんなことをかんがえるひよりはきっとわるいこだね
でもひよりはおじいちゃんのそばにいられてしあわせだったよ
ひよりがおじいちゃんのところへもどってきたときも、おじいちゃんはひよりをうけいれてくれた
わらって おかえり っていってくれてすごくうれしかったよ
ひよりがいなくなってもずっとげんきでいてね
パパとママといっしょにおそらからみてるからね
ひよりをすくってくれてありがとう
ひよりといっしょにいてくれてありがとう
だいすきだよおじいちゃん
ひ 曰禾口より
★★★
夥しいほどに存在している世界の一つ。
隔離された街のそのまた遠く離れた場所にひっそりと佇む一軒の商店。
その店を知る住人は揃って足を運び、とても満足して帰っていく。
「ありがとうございましたー!」
そう言って頭を下げるのはこの店の看板娘。
腰まで届く緋色の髪と青色の首飾りが彼女のトレードマークだ。幼いころ母と作った『理の首飾り』は片時も離したことがない。
彼女は見送りが済むと急ぎ足で店内へ戻った。
店の名前は『ひだまり亭』。
数年前に改装してからは食事処を営んでいる。落ち着いた雰囲気が好まれ続けて、今となっては知る人ぞ知る隠れた名所だ。
窓を通して太陽の光が差し込んで、爽やかな風が突き抜ける。そのゆったりとした空気は、忙しない街から切り放された癒しの空間である。
流れる音楽は彼女の希望でARISAの歌が大体だ。この店の音楽は彼女がその時に嵌った音楽になる、常連客もそれを知っているからか微笑ましく感じていた。
やがて客足も途切れると、彼女は隅で本を読んでいる初老の男性に声をかけた。
「おじいちゃん、なに読んでるの?」
「ん? これかい? 『製薬の書』っていう本だよ」
「あっそれ昔読んだことある」
「ついさっきトリア様がいらっしゃってね、昔話を少しさせてもらったんだよ。その時にこの本を思い出してね」
彼女にも見えるように本を広げると、彼女は興味深そうに覗き込んだ。
生命力を増幅させる『赤のポーション』や、魔力の循環を助長させる『青のポーション』。他にもあらゆる呪いを跳ね除ける『神薬』まで載っていた。
その中で彼女は思い出したかのように一つの項目を指差した。
「これ昔作ったよ! 確かおじいちゃんと一緒に作ったよね」
歯を見せて笑う彼女が子供の頃の彼女と重なったのは、つい先程トリアと昔話に花を咲かせていたからだろうか。
「確か今でも残しておいたはず……」
「おじいちゃん?」
何かを考えたと思うと、店の奥へと姿を消す。
疑問に思う彼女をよそに、大きな木製の機械が客のいない店内へと持ち運ばれた。一人で持つには負担が大きいだろうそれを疑問のまま手伝うと、途中で何の機械か分かって目を輝かす。
「おじいちゃん、これって!」
「久しぶりに一緒に作らないか?」
それは薬を作るための機械。この店が改装される前、毎日のように使われていた思い出が募った代物だ。幼い頃から製薬の仕方を教えられていた彼女にとってそれは遊びみたいなもので、二人にとってはこれ以上ない心の通わせ方だろう。
微笑みながら聞かれた言葉に彼女は大きく頷いた。
「うん!」
彼女の両親が影で見守るなか、二人はせっせと機械を整備しだす。
途中客が来てもお構い無しな二人に母は少し呆れながら、しかし客も含め咎める様子は全くなく楽しそうに眺めるのだった。
「ひより……準備はいいかい?」
「大丈夫だよ、おじいちゃん!」




