59話
はい。この章が終わるまでに10話までを修正するといって、物語に大差ないといいましたが……すいません。
6話の国の名前をヒュラス国→リーフ国に変えています。なぜかごっちゃごっちゃになっていましたので統一しました。(当たり前)
あと奏と美唯菜の年齢を1才あげています。高二で15歳っておかしいですよね(笑)
以上です。失礼しました。
なんとか根元と佐鳥のからかいに耐え、みぃと2人でパフェを食べ終えた。みぃは横で煙が出るほど赤くなっている。
「覚えてろよ、2人とも」
「あはは、それよりも明後日イベントが開催されるの知ってる?」
それよりもじゃない。
根元が露骨に話題を変えようとするが、ノる気は無い。
「うん。ごうどうで、いべんと」
……みぃが何事も無かったように話に入ってしまった。
これじゃあどうしようもないじゃないか。
「確かFANTASY、CREATURE、CIMが合同で参加できるんだったな」
「そうそう。なんでも300万ものサーバーを用意してるんだって」
「300万!? それは凄いな」
サーバーなんて有って50とか100とかだろ。それが300万……。大丈夫なのかそれ。
「でもそれってイベント期間は通常フィールドに入れないんだよね?」
「佐鳥さんの言う通りだね。ログインはイベント特設ステージになるみたいだよ」
「……サブイベントとかどうなるんだ?」
根元の言う通り通常フィールドに入れないなら、実行中のサブイベントは全て途中で進めれない。時間経過で失敗するようなものだと失敗は確定だ。
「珍しいね、相馬くんがイベント情報を見ていないなんて」
「あぁ、明日にでも見ようと思っていたんだ」
最近は色々とあったからな、明日落ち着いて見ようと思ったわけだ。休日だし、イベント前日だから用意も間に合うだろう。
「サブイベ……とちゅーで、止まる、って」
「じゃあイベント中はサブイベの心配はしなくていいのか。美唯菜は調べていたんだな」
「ううん。トリア、おしえて……くれた」
トリア有能すぎるな。裏情報とかあったら教えていそうだ……。
でもそれだったら300万ものサーバーを制御することくらい容易いかもしれないな。元々地球規模の広さがあるフィールドを扱っているんだし……それが異常な気もするけど。
「でも300万もあったら無事に落ち合えるか心配だな」
「うん」
せっかくVR内でみぃと遊べるチャンスなのに、それを逃がすのは悲しすぎる。これがランダムでサーバーが決まるなら無理そうだけど。
「一応どこのサーバーかは選べるみたいだよ。1サーバー辺り3000人が入れるらしいけど、地球上の総人口分の3000だから運もいるね」
「根元は随分詳しいな」
「ボクはWORLD CIMだから、こういう時以外は一緒に遊べないからね」
確かにそうだな。FANTASYの僕も根元と同じだ。
WORLD CREATUREのみぃや佐鳥と、CIMの根元とは一緒にVRゲームが出来なかったからな。
「じゃ、じゃあ良かったらだけど……ログイン前にツリーで落ち合わないかな?」
「うん、それいいね! そしたらバラバラになる確率は減るし」
「さんせー」
それが1番良いな。3種合同だから、イベント内容によっては知ってる人同士のほうが都合良いだろうし。イベントも有利に進められそうだ。
「……かなと」
「ああ、分かった。じゃあ2人ともこれを受け取ってくれ」
コネッキングを操作し、オフィシャルネットワーク[ツリー]で僕とみぃが使っている部屋の合鍵を作る。この合鍵には46桁の暗証番号が秘められていて、1度だけ僕とみぃの部屋に入ることが出来る。
ちなみに本鍵は2つあって、僕とみぃが持っている。
空中で可視化される鍵を根元と佐鳥に渡す。これは情報を鍵の形にしたもので物理的に触ることは出来ないけど、コネッキングを付けているなら受け取ることは出来る。
「これは[ツリー]の鍵?」
「うん。わたしと、かなとの……へや」
「一応その鍵に位置情報も入ってるから、迷うことはないはず」
ツリーには無数に部屋があるから、位置情報を入れておかないと辿り着くことも出来なくなるからな。
「ありがとう。2人の部屋がどんなのか気になるねー」
「殺風景……だよ」
この前に絨毯を買っただけだからな。
覚えていたら何か増やして置いてもいいかもしれない。
「……えっと、ボクも貰っちゃっていいんだよね?」
「……ふほんい」
根元が戸惑いながら言う言葉に、みぃがそっぽ向いて答える。前に根元が部屋に入りたがっていたのを、みぃが拒否していたからなぁ。みぃが不安定な時だったから仕方ないんだけど。
それを思えば凄く成長してるというか、心に余裕が出来だしているんだというか。嬉しい気持ち反面、根元にみぃを取られないよう気をつけなければ……佐鳥とトリアにも。
「ありがとう。高江さん」
「……べつに」
駄目だ、みぃかツンデレしてる。
「相馬くんもありがとう」
「やっぱり返せそれ」
「えぇー! もう貰ったから返さないからね!」
根元は可視化された鍵をコネッキングにしまい、隠すようにコネッキングを手で覆った。
くっ! 軽い気持ちがこんな事態をうむなんて。
「かなと、いや……なら。やっぱ……だめ」
「ちょっ、高江さんまでっ!」
よし。みぃは僕の味方をしてくれてる。今が畳み掛けるチャンスだ!
全ては根元から鍵を取り戻すために!
「わ、私の鍵は大丈夫だよね?」
「まきちゃん……は、おけー」
「佐鳥は遠慮なく来てくれ」
「ちょっとボクだけその扱いって酷くないー!?」
☆
「まったく……どうしてボクばっかりなのさ。だいたいボクが何をしたっていうのさ」
カフェを出て数分、まだ根元は不貞腐れていた。
いやまあ、やりすぎたというか何というか。根元が良く反応してくれたから、つい。
「ほ、ほら瑞輝ちゃん。それだけ仲がいい証拠だよ」
「いいんだ、佐鳥さん。所詮ボクはその程度の存在なんだ」
佐鳥のフォローも全く効き目がない。
頬を膨らませながら下を向く根元、これは重症だ。
「そ、そんなことないよ。……多分」
「多分って! 多分って言ったあ!」
目に涙を溜めながら佐鳥を指差す根元。
ついに佐鳥のフォローが崩れてしまった。むしろ追い討ちである。
しょうがない、窘めてやるか。
「まあまあ落ち着けって」
「…………へ?」
「誰もそんなこと言ってないだろ? 根元は俺にとって大事な存在だぞ」
「……あ、……えっと、うん」
さっきとは一変として静かになる根元。なにか戸惑っているような、顔も少し赤くなってるし。
どうしたのかと思ったけど、根元が下を向いた時に気付いた。そう、僕の左手が根元の頭に乗っかっていた。
「あっ、悪い」
「べ、別に……」
急いで手を離すと根元はそっぽ向いてしまった。照れてる……わけないよな。嫌だったんだろう。つい何時ものくせでやってしまった。
「……かなと」
「ん? あいたたっ!」
急にみぃが頬をつねってきた。何故か少し怒ってるような、拗ねてるような。
根元が嫌がったからなのか。そうなのか、みぃ。
「そんなに……きょぬー、いいの?」
「な、何を言っているんだ」
「おおきい、おむね……いいもん、ね。好き……だもんね」
み、みぃ?? 一体何が原因なんだ??
根元はそっぽ向いてるし、みぃは頬を膨らませてるし……どうしてこうなった!
残る佐鳥に希望を託すが……。
「あ、あはは」
佐鳥と目を合わせると、苦笑いして目を逸らされてしまった。
……希望なんてなかった。