21話
朝。
窓を通して朝日が部屋に入ってくる。陽の光が直接注がれるこの場所は、目覚まし時計なんて使わずに起きることが出来る。
今日は服を着替えないでリビングに直行する。昨日の事があってか今日から三日間休校なのだ、一日中VRゲームするぞ。
一応翼に魔力付与をして小さくするのも忘れない、寝巻きも翼で破れているけど正直邪魔なんだよな。部屋から出る時に折らないと当たるし。
「おはよう」
「おう、おはよう」
いつもの挨拶。洗面所で顔を洗った後、父を見送りにいく母の作りかけの朝食を引き継ぐ。
「おはよう、奏。昨日はお楽しみだったの? これは改めてお向かいさんに挨拶しに行かないといけないね!」
「おはよう、母さん。うるさいよ黙りなさい」
「いいじゃないー! まさか奏と美唯菜ちゃんがそんなとこまでいってるとはねー!」
ひたすらおちょくってくる母を無視して朝食をテーブルまで運ぶ。
「ねぇねぇ! どこまでいったの?」
「いただきます」
「あっ、はーい」
この後すぐにゲームしようか、それとも攻略サイトを少し見てからにしようかな。二日しか経っていないけど情報は大切だよな。
「放火事件の犯人まだ捕まってないんだって」
テレビを観ながら違うことを考えていたら母が話題を振ってきた。どうやらおちょくりは止めたみたいだ。
「そりゃまた怖い……朝起きたら家が燃えてるとか嫌すぎる」
「だよねー、早く捕まって欲しいよねー」
まぁ昨日今日で捕まりはしないよな。家の周りに結界でも張っておこうか……天族固有スキルの『守護』なら設定した人は通れるように出来るし。MPがかかるけど仕方ないよな。
「母さん早く自主しなよ」
「えっー! 母さんしてないよ! 確かにお隣さんとは仲があまりよろしくなかったけど」
「確定じゃん。お隣さんが憎くてやった! って言ってきなよ」
「ちょっと奏、さっきのこと怒ってる? 怒ってるの?」
知らなーい。
あっテレビで学校の理事長が出てる。
【えー、この度の件につきましては──であるからして、生徒達の──】
【村田理事長! この事件の主犯は貴方の娘だと聞いていますがそこの所どうなんですか!?】
【確か前回にも娘さんがイジメに関して大きな問題を起こしていましたよね。その時は大半の教師を解雇にして生徒も幾人かは転校させてますが、娘さんだけは残ったそうですよね】
【いや、これはですね。その──】
おー、責められているな。転校してくれたらいいんだけど。
これから先みぃに危険が及ぶ可能性だってまだまだあるし。
「ごちそうさま」
「はーい。ってまだ怒ってるの? 器の小さい男は美唯菜ちゃんに嫌われるよー」
「……はぁ、皿洗い頼んだよ」
「ふふふっ、りょうかーい!」
母に皿洗いを任せて一人テレビを観る。まぁこれくらいで許しといてあげよう。みぃに嫌われたくないからとかそんな理由じゃないからな、みぃはそんな事じゃ嫌わないと思う……多分。気をつけよう。
「ほら見て奏! 母さん水が出せるようになったのー!」
自慢するように台所で手からチョロチョロと水を出して見せてくる。
「母さん、何でそんな魔法取ったの? もっと強い魔法とか」
「強い魔法とか使いどき無いし、なにより水道代が減る! 火も出せるから電気代もね!」
確かにそうだよな。水出せたら便利だし、大量の水だったりしたら使い勝手悪そうだ。
「じゃ母さんは行ってくるね」
「行ってらっしゃい……気をつけて」
「キャー奏が可愛いぃー! 仕事行きたくないー!」
「ほらさっさと稼いでらっしゃい」
騒ぐ母を見送ると、さっそく部屋に戻る。
そのまま謎カプセルに入り、電源を付けた。
☆
【正常なログインを確認しました】
【アカウント名·ソウ·を認識しました】
【これより"ツリー"へダイブします】
【オフィシャルネットワーク[ツリー]へようこそ】
沈んでいった意識が浮上していく。無事ツリーの中の部屋、僕とみぃ専用の個人ネットワークにログインした。
「奏、おはよー!」
「おはよう、みぃ」
ゲームを開く前に攻略サイトを一通り流し読みしていた所、みぃがログインしてこっちに来た。
みぃはVR空間にいると表情が豊かになって明るくなるのだ。どのみぃでも可愛い事には変わりないから問題は無いな、うん全く問題ない。
「攻略サイト見てたけど、みぃも見る?」
「うーん、トリアに教えてもらうからいいよ」
トリアがいたら攻略サイト意味無いよな。トリアはゲーム内の管理者的な位置らしいし。
「それじゃあ私は行くね。猫ちゃんとトリアにも会いたいし」
「わかった。またな」
「うん。また」
みぃが光に溶けるように消えていく。
ん? 猫とトリアなら現実でも呼べるはずだったような。……まぁいいや、僕も始めよう。
WORLD FANTASYを起動し、暗転する意識を委ねていく。
目が覚めるとハルジオンの街に立っていた。
場所は街の中心。ログイン地点だから自然と人が集まるし、とりあえず場所を移そう。
北門へ転移できる所まで歩いて行く、今度はお金もあるから転移が使える。1回100Gだ、良心的だな……前回お金が足らなくて使えなかったけどな。
転移先は北門のすぐ手前、そこから右に曲がるとこの前にいった喫茶店サートになる。
サートに入ると定員さんに案内されて席に座った。
「注文は決まってます」
「はい、お伺い致しますー」
「リーフ茶とリーフ団子で」
「かしこまりましたー。少々お待ちください」
頼んだのはこの前と同じメニュー、また食べたいと思っていたのだ。
さて、とりあえず今のステータスを見ておこうかな、この前に一通り見たんだけど復習しておかないと。現実世界での事が影響されるのかも知りたいし。
名前] [納税の]ソウ
性別] 男
種族] 天族Lv.74
職業] 村人Lv.27
装備] ボロボロの服 ボロボロの下服 ボロボロの靴
所持金] 116124G
HP] 1033/1033 MP] 550/550
SP] 400
固有スキル] 天翔 守護 慈愛 天癒 天光
スキル] 納税Lv.27 魔力付与Lv.5 武術Lv.11 剣技Lv.7 超集中Lv.8 魔法切りLv.17
魔法] 魔力玉
オリジナル] 魔力剣 ジャッジメント 我流・一太刀 皇翼剣・天翔
称号] 納税の義務 強き者
ほんと凄いステータスになったな。まだ3っ日目でこのステータス、しかも昨日はログインしていないから実質二日目。体力なんて1千を超えてるし。
村人のレベルが上がったな、前はレベル2だったのに。これは称号の『納税の義務』で、前回にログアウトした時に自動で所持金の10%を納税されたからだろう。お金も減ってるし。
確かその時の経験値が10倍になるから、所持金の全額を納税するのと同じだったよな。で見返りの計算が2倍になると……チートだわチート。
固有スキルとかも一通り見ようか。
固有スキル] 天翔
天族の固有スキル。翼を操り空を自在に飛ぶことが出来る。
飛行時1分につき1MPを消費する。なおMPが0の場合スキルの発動は出来ない。
天族のデフォスキルだな、空を飛べない天族は天族じゃない。……いたらレアだよな。
固有スキル] 守護
天族の固有スキル。不可視の結界を張る。モーション必須。
消費MP10〜
この説明不足なスキル。
いちおう一昨日に検証はした、自由の利く凄いスキルだった。
このスキルは文字通り結界を作ることかできる。大きさ形や堅さ等は消費MPを増やすことによって任意に変えることができ、形などを決めなければ人ひとり分を覆う四角い箱のようになった。
名前が守護とあって対象を選ばないと発動しない。モーション必須って書いているのは対象を選ぶという事だった、初めはモーションだから手を前に向けるとかだと思って苦労したよ。
そして対象を守るものだから、対象をが動くと結界も勝手に動いてくれる。また決めた人だけ通れるように結界を設定も出来る。
形を変えて1面だけを守る障壁にも使うことができるし、球状に変えることも出来る多様性が溢れるものだ。流石種族スキル。
固有スキル] 慈愛
天族の固有スキル。対象の能力値をランダムに上げる。自身は対象外。
消費MP40~
まだ検証していないんだよな。自分には効かないから誰かにお願いしないといけない、そもそも効果がランダムって使い時が少ないし使わない気がする。
固有スキル] 天癒
天族の固有スキル。あらゆる状態異常の治癒。WORLD内のバットステータスにのみ有効。
消費MP50
WORLD内というのは現実世界に影響する三作品のゲームのことだ。
WORLD SIM、WORLD CREATURE、WORLD FANTASY、この三つのゲームで起こる状態異常にのみ治すことが出来る。
現実の病気を治すことが出来ないが、これでも充分過ぎるほどに強力なスキルだな。
固有スキル] 天光
天族の固有スキル。天の光で攻撃する。種族レベルが高いほど威力が上がる。
消費MP100
これもまだ検証はしていないんだよな。
守護や慈愛の検証なら多少変な人で通るけど、天光は名前からして派手そうで人目に付く気がするし。
種族レベルで威力が上がるって書いてるし、消費MPが100ってのもあって近くのエネミーだと溶けるだろうから、騒がれたりすると面倒だしな。
「お待たせしましたー、リーフ茶とリーフ団子でございますー」
「ありがとう」
「はいー、ごゆっくりどうぞ」
ちょうどスキルを見終えた所で注文したリーフ茶とリーフ団子がきた。
とりあえず食べながら続きを見ていくとしよう。といっても分かりにくいスキルはもう無いんだけど。
スキル『納税』はレベルが上がっただけで表記は何も変わらないし、『魔力付与』は効果時間が5分から10分に変わっただけ。
『武術』はプラスされる威力%=武術のレベルだった。今はLv.11だから近接攻撃時は威力が11%上がる。
『剣技』もほぼ同じ。違うのは近接攻撃時じゃなくて、剣での攻撃時に威力が上がる所だけ。
『超集中』は極限まで集中してる時は、超集中のレベル×2の数値分だけ魔力付与と同等の強化が施される。
そんなに集中しないといけない時なんて無い方がいい気がするけど。
最後に『魔法切り』、魔法が切りやすくなる……以上。いやだってこれしか書いていなかったし、切りやすくなっているんだと思うよ……きっと。
魔法とオリジナルは何も変わらないな、確認したけどいつもと一緒だった。
次は称号だな。
「あれ? ソウさんじゃないですかー!」
ふいに聞き覚えのある声して顔を向けると、そこには名無しさんが手を振っていた。




