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88話 ミーナとツキシタ



 鬱蒼とした大地。

 大きな木々が生えしきるここは私が初めてこの世界に降り立った場所。……降り立ったというより飛ばされたが正しそうだけど。

 ここではドラゴンとスライムが闊歩して進むのが難しい……らしい、正直トリアが案内してくれるからあまり危険じゃないんだよね。頼りっぱなしもダメだけど。


 でもなんで街を出てこの森にまで足を運んでいるかっていうと。


 --にゃーにゃー

 --にゃにゃにゃ

 --きゅきゅ

 --にゃー!


 この子達を全員召喚すると街ではもう迷惑行為になりかねないのだ。

 さすがにそれはダメだからこうやって森まで来たというわけ。


 そして皆それぞれ仲良くはしゃいでいる中で、私の後ろで隠れてる子が一人。


 「どうしたの? ツキシタ。みんなの所に行かないの?」


 私の膝辺りの身長をした女の子。

 白い肌に緑色の葉っぱで出来たお洋服、そして頭から咲かせる一本の白い花。

 この子は植物種のツキシタ。頭のお花に目が行きがちだけど、丸いおめめも魅力的だ。


 --……らーらら


 ツキシタは首を振って返事をして、頭のお花がツキシタの感情を表すように下を向いた。

 他の子達を羨ましそうに眺めるけど、やっぱり混じって遊ぶには勇気がいるみたい。


 「ツキシタはシャイなのね。でも猫ちゃん達もツキシタを待ってくれているわよ……ほら、怖くないわ」


 --にゃ〜


 トリアが宥めるように言うと向こうで遊んでいた猫ちゃんも返事をしてくれる。

 言葉は分からないけどきっと「来なよ」って言ってるに違いない、多分。


 --らーら……らら


 猫ちゃんの声にツキシタが近付こうと足を動かして……怖くなってまた戻ってしまった。

 ツキシタちゃんはちょっぴり人見知りなのだ。私はトリアと顔を合わせると苦笑いをして、ツキシタと同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。ちなみに頭に乗っていたこねこはトリアのお胸にダイブ。


 「それじゃあ私と一緒に遊ぼうか」


 --ら、らら〜


 さっきまでのしょぼんっとした顔からパァーっと笑顔になるツキシタ。

 猫ちゃん達にごめんねってしたあと、私はツキシタが猫ちゃん達と馴染めるまでツキシタと一緒にいることにした。結局トリアが移動の合図を取るまでツキシタといたんだけど。


 「トリア、ありがとね」

 「なんのことよ? 私が何かしたかしら?」

 「この森結構危ないって聞いたよ? こうやってのんびり出来るのもトリアのお陰だよ」

 「あらっ、そういう事ならお礼は受けとっておこうかしら」


 うふふっ、って笑うトリア。

 ホントだよ? 感謝してるんだから。


 「それよりも早く移動しないとドラゴンの感知圏内に入るわよ」

 「はーい」


 実はこの森、私がみんなを呼べなくて悩んでいたらトリアが勧めてくれたんだ。

 敵が来るとバトルステージが出来るんだけど、それ以外は自由に移動できるし何より人がいない。私にとって街の中は人が多すぎるから助かるよ。


 そして人が居ないということは。


 --にゃにゃにゃー

 --にゃんにゃん


 「赤ねこ、茶ねこ、どうしたの?」

 「あら? 何か見つけたみたいね」


 移動中赤ねこと茶ねこが急に木の近くまで走って鳴いてどうしたのかなって思ったら何か見つけたみたい。トリアが言うから間違えない。

 赤ねこと茶ねこに近寄って見てみると、そこには何やら見慣れないキノコが生えていた。なんだか全体的に青いぞ。


 「それはアオキノコね。純度が高いから結構言い値になるんじゃないかしら」

 「純度?」

 「あぁ、えっとね……魔力、私達でいうSP(召喚ポイント)は基本的に高密度なほど青いものなのよ。アオキノコはSPを蓄えて育つ特殊なキノコで青ければ青いほどSPが豊富に含んでいるのよ」

 「へぇ〜。それじゃあこのアオキノコは凄くいいアオキノコなんだね」


 まるで海の底を見ているみたいに深い青色で、周りにはキラキラがとんでて私でも他のアオキノコとは違うんだろうなって思う。

 でも私だと気付けなかったなぁ。うちの子はやっぱ凄い!


 「赤ねこ、茶ねこ。ありがとね」


 --にゃあ

 --にゃにゃ


 2匹の頭を撫でてお礼を言うと、腰にかけているホルダーから空のカードを取り出す。それをアオキノコに押し当ててカードに収納すると、空のカードはアオキノコのカードになった。もう一度赤ねこと茶ねこを撫でると2匹は幸せそうに目を細めたのだった。


 「それじゃあしゅっぱー……つ?」


 気を取り直して歩こうとした所、私が赤ねこと茶ねこを撫でてお礼を言ったのが原因か他の猫ちゃんもアオキノコを探して各地に散らばってしまっていた。

 気持ちは凄く嬉しいんだけど、そろそろ本当に移動しないとドラゴンに見つかっちゃうよ。


 「はいはい、そこまでにしておきなさい! そろそろドラゴンが来るから移動するわよ!」


 --にゃー


 さすがトリア。

 トリアの呼びかけに猫ちゃん達がビシッと敬礼して3列位に並ぶ。トリアはもうすっかりみんなのお姉さんだ、トリアも満更ではない様子。


 森を進んである程度まで行くとドラゴンからは離れたらしく、トリアの合図で休憩時間となった。

 ちなみにそれまでの間でトリアが黄金に輝くお花を見付けてくれたので、ムギューすりすりして頭を撫で撫でしました。いやぁ、何でもない顔を装っても私にはバレバレだったよ、きっとトリアの心情的には「ほ、ほら! 早く撫でなさいよ!」って感じだったね! おねだりが苦手なトリアも可愛いです。


 「な、なによっ」

 「ん〜ん〜なんでもないよ」


 ニマニマしてたのがバレたかな?

 トリアは顔を赤らめて周りで遊ぶ猫ちゃん達のところへ行ったのだった。

 私も混ざりたいところだけど、移動中もずっと私の側から離れなかったツキシタちゃんがいるからね。違う種族でもドラゴンの子供のドラゴネットは皆と混じって遊んでいるのにな、ネズミだって最近は馴染んできてるし。


 --らーら?


 「ううん、ごめんね。あっちの日陰に行こっか?」


 --ら〜


 猫ちゃん達とドラゴネット、ネズミに海スライム。皆が思い思いに過ごしている中で私とツキシタは近くの大木で一休みする。

 こうして猫ちゃんを見てると結構不思議だなぁ。バーニングねこは常に燃えてるのに木に燃え移らないし、水中ねこは陸では普通の猫だったり……海スライム冷たくて気持ちよさそう、猫ちゃんがベッタリくっついて離れないや。


 --ら、ら〜


 「ん? どうしたの、ツキシタ」


 --らーらら〜ら〜


 ツキシタは手で自分の頭をアピールしながら何かを伝えようとしてる。

 頭を下げて白いお花を見せてくれてるのかな? 綺麗なお花だもんね、なんて名前なんだろう。


 --ら……らー


 ん〜見せてくれてるんじゃないみたい。

 手で頭をアピールしてるってことは……あっ! わかった!


 「ツキシタも羨ましくなったんだね〜」


 --ららら〜


 お花には触らずに頭を撫でるとツキシタは満足そうにフニャっと顔を緩めたのだった。ふにゃ顔……ふにゃ、フニャけた顔だ!


 「お花も触っていいの?」


 --らら〜


 どうやら大丈夫みたい。

 頭の上に咲いているお花も神経が通っているみたいで、触れるとピクっと反応した。そのあとは心地良さそうに目を細めて身を委ねてくれてる。


 こうして見ると案外お花大きいね、手のひらサイズくらいある。しかも花びらが数枚重なってて幻想的だし、やっぱり透き通ってるみたいに白いのが綺麗だなぁ。純白ってやつだよ、純白。


 「ツキシタは可愛くて綺麗だね〜」


 --らら?!


 お花だけじゃなくて頭も撫でる。あぁ〜癒される。この空間最高。

 猫ちゃんに囲まれ、トリアがいて、ツキシタを愛でる。なんていい空間なんだ!


 ……って、あれ? なにやら猫ちゃん達の様子がおかしい?


 --にゃ

 --にゃにゃにゃ

 --にゃーにゃにゃ

 --にゃん


 何言ってるかわからないけど可愛い〜。癒されるぅ!

 ……いやいや、これは猫ちゃん。


 「ミーナ、ツキシタに構いすぎよ」


 あー。やっぱそうかー。

 猫ちゃん達がさっきまでとは違ってやけによそよそしい態度になっちゃってる、私にじゃなくて隣にいるツキシタに。さっきまでの『おいで〜』じゃなくなってるのはトリアの言葉で確信しちゃった。


 --ら、ららー


 ツキシタも戸惑いというか悲しそうだ。パッと私の影に隠れるツキシタだけど、それが今の猫ちゃん達にとっては逆効果っぽい……つまり。


 「猫ちゃん達……嫉妬しちゃった?」

 「しちゃったわね」


 あららー。


★天の羽衣


 効果

 遠距離攻撃を跳ね返す。結界性・大


 紹介文

 羽衣の部分しか効果がないから気を付けて

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