表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/114

89話 ツキシタと猫ちゃん




 --にゃー!


 頭の上でポンポンと私を叩くこねこ。

 構え構えー! ってこねこが主張してくる。構いたいんだけど、ツキシタを一人にすると涙目になっちゃうから。


 「あんまり構ってあげられなくてごめんね」


 --にゃー!


 ほんとだにゃー! って言ってる。いや、分からないんだけどそんな気がするよ。

 頭を揺らしながらこねこを撫でてご機嫌取りしておく。甘んじて受け入れてくれるだけまだ猶予はあるかな。


 ツキシタは猫ちゃんの嫉妬を受けて萎びれちゃってる。

 思っているより空気に敏感で私の後ろに隠れ……れない! 猫ちゃんの目線が痛くて安全地帯に行けない!

 でもここで猫ちゃんを怒っちゃうと猫ちゃん達が可哀想だし。


 「と、トリアぁ!」

 「はいはいミーナは頑張ってるわ、よしよし。…………これなら仲直りしない方が私にとって……いやいや、だめよ」


 トリアがなにか葛藤してる。

 でもそれよりもトリアのナデナデが気持ちいい〜。心に染み渡るよー。

 もうなるようにしかならないよー。きっとトリアが私を撫でてる間に元に戻ってるよー。


 「ミーナ。クリーチャー達の不満を解消するのもプレイヤーの仕事よ」

 「……ハッ! 現実逃避してた」


 イケないイケない。トリアに諭されなかったらトリアの胸に埋もれているところだった。

 再度見ても猫ちゃん達とツキシタは険悪なままだ、一方的だけど。ツキシタは皆と仲良くなりたいと思うんだけどなぁ。


 --にゃー

 --にゃにゃー


 --キュ、キュキュィ


 でも嫉妬した猫ちゃんはそんなこと知らぬ存ぜぬで貫き通すつもりだ。

 急に始まった猫ちゃんの嫉妬にドラゴネットのドラちゃんは困惑しておろおろしてる。私もおろおろ。猫ちゃんとツキシタを交互に見ながら宥めようとするも、猫ちゃんの眼光の前では大人しくなるしかない。


 「……そうね、ミーナ? この先少し進んだ所にボスがいるのだけど、そこまで行かないかしら?」

 「え、ボス!?」


 どうなんだろう。

 この状態でボスと戦うなんて大丈夫かなぁ? そもそも戦わせるのは好きじゃないのに。

 でもわざわざトリアが言うくらいだし……。


 「うん。ボスの所まで行こう」

 「いい判断よ」

 「みんなー! 移動するよー!」


 --にゃー


 機嫌が悪くても言うことは聞いてくれるみたい。猫ちゃん達は軽く返事すると思い思いに前に来てくれる。

 嫉妬猫ちゃんも案外可愛いかも……?

 いやいやツキシタが可哀想すぎる、あんなに仲良くなりたそうなのに猫ちゃんプイッてしてるし。

 まあこれからに期待しておこう。きっとトリアの言う通りボス戦を突破すると友情に芽生えるよ! ……きっと。


 ボスの所に直行で行くとなると、今まで避けていた敵との遭遇も起こってしまう。

 といっても出てくるのは青スライムか赤スライムなんだよね。前のイベントで50層突破した私達の前では役不足なのだよ! ……あの時は真紀ちゃんもいたけど。


 「『猫が小判』!」


 猫ちゃんを狙う攻撃がピタッと止まる。


 「強化、黒ねこ!」


 青色のオーラを纏って強化された黒ねこのジャンピングパンチ!

 ポテッと赤スライムに触れる肉球だけど、当たった瞬間赤スライムは弾け飛んだ。……なんて威力。

 そして戦闘終了。スライム達がいた所には、スライムが出てくる……かもしれないガチャ券が落ちていた。


 「ミーナも強くなったわね。ノーダメージじゃない」

 「へへへ〜。これも猫ちゃん達のお陰だよ〜」


 戦いたくはなくても褒められたら嬉しいな。

 猫ちゃん達もドヤ顔で胸を張ってる、その姿はどこか誇らしげだ。私も誇らしいね。

 猫ちゃん全員VSスライム数匹だったら当然? それはそれ、これはこれ。勝てばいいんだよ勝てば。


 「どう? 私とも一戦してみる?」

 「それは勘弁願いたい」

 「ふふふっ、そう?」


 やらないからね!

 もう、トリアは度々バトルを誘うんだから。確かに対人戦は初日以外したことないけど、だからってしたい訳じゃないんだからね。


 あっ、今猫ちゃん達がツキシタにドヤァ! ってしてる。ツキシタはぴょぇええ! ってなった。

 ツキシタは今回戦闘に参加してないからね、スライムが怖くて隅っこにいたのです。バトル時は私の近くには来れてもマスを超えて私の所には来れないからね。


 そのあと数回スライムと戦うことになったけど、全てノーダメージでクリア。ここまでいくと私も強くなった感がでるね!

 ドラゴンはトリアが教えてくれるから逃げる方向で、だってドラゴンは無理だって。皆傷ついちゃうかもだし。


 「そろそろよ」

 「うん」


 イベントダンジョンの時にもあったボスを囲む赤いマス。

 あそこを超えるとボスを倒すか、やられる以外に出ることは出来ない。

 そして今回戦う事となったボスは……。


 「おおきい〜」


 --ら、ららー?!


 青く染まった粘液状の体に、僅かに浮かんで見える丸い物体──コア。

 さっきまで戦っていた奴とは大きさがまるで違う。


 「そう……あれこそが巨大化したスライム。名付けてビックスライムよ!」

 「な、なんだってー」


 ……そのままじゃん。


 「こほんっ。早く行くわよ」

 「はーい! 皆も行こ?」


 --にゃー

 --にゃにゃー


 --キュキュ

 --ら、ら〜


 赤マスを超えるとバトル開始だ。

 いつも通り猫ちゃん達は前衛でツキシタは隅でおろおろ。カードに戻してあげた方が良かったかな?

 ドラちゃんは遊撃なんだけど敵はビックスライムだけだしあまり関係ないね。


 「それじゃあ行くよー!」


 --にゃあー!!


 猫ちゃん達は鬱憤を晴らすとばかりにやる気満々だ。

 私も連戦連勝で今回は結構やる気だよ! しかも敵はさっきまでのスライムの大きいバージョンだし猫ちゃんならノーダメージ行けるかも?


 「瞬殺するよ! 『猫の好奇心』!」


 --にゃー!!


 猫の好奇心は猫ちゃんの攻撃力が倍になる代わりに、敵クリーチャー1体だけに突撃するアクティブカード。

 今回はボスだけしかいないから使っても大丈夫だよね!


 今までの戦いである程度強化していた猫ちゃんの攻撃力が倍になると、それはもう強いのなんの。ビックスライムでも関係なくHPをどんどん減らしちゃってる。これは効果時間の5分以内に終わっちゃうね!

 ふふーんってトリアに勝ち誇るようにドヤ顔すると、トリアは何故か上を向いて「あらら」と呟いた。


 「ミーナ。あのスライムはね、多数のスライムが合体しているのよ。もちろん一定のダメージを与えれば……」

 「えっ!」


 ビックスライムの体が弾丸みたいに弾け飛んだ!

 それも全部猫ちゃん達目掛けて。物凄いスピードで飛んでくる分裂したスライムは猫ちゃん達の反射神経を超えて猫ちゃん達に衝突した。


 「みんな!」

 「落ち着きなさい、ミーナ。あなたが焦ってはいけないわ」


 ……うん、大丈夫。まだ誰もやられてない。

 猫ちゃんに傷が付くのは嫌だけど、今はこの状況を何とかしないと!


 猫ちゃんに衝突したスライムはそれぞれ個々にコアを形成して動き出す。衝突したまま猫ちゃん達にへばりついて猫ちゃんの動きを阻害してる、それどころか猫ちゃんのHPが少しずつ削られていってる。

 でも猫ちゃんは何故か体に付いてるスライムに攻撃しない。


 「……あっ、猫の好奇心!?」


 まだ猫の好奇心の効果が続いているんだ、猫ちゃん達はビックスライムしか今は攻撃出来ない!

 分裂したスライムはビックスライムとは別なんだ!


 猫の小判で皆をカードに戻すのは……だめ、再召喚時間は0になるけど、そのためのSPは回復しないからどっちみち呼べない。


 --キューキュー


 ドラちゃん!

 そうだ、ドラちゃんはカードの効果外だったから普通に行動が出来る!


 「ドラちゃん! 皆のスライムを追い払って!」


 --キュ!


 「よし、『猫が小判』!」


 これで猫ちゃん達のダメージが少しでも減るといいけど。

 ドラちゃんがスライムをやっつけるまで待っててね!


 --らら、らー

 --シュー


 隅っこで怯えるツキシタの前には青スライムがスライムから守っている。

 色は同じでも見間違えることは無いよ。うちの子だし。


 --キュキュー


 ドラちゃんが頑張って猫ちゃん達に引っ付いてるスライムを引き剥がす。

 1体ずつ攻撃していたり、コアを取って猫ちゃんから離したり、必死で猫ちゃんを救っていく。でもドラちゃんを強化することはSPの関係で出来ない、今は頑張ってドラちゃん!


 1匹ずつだけど確実にスライムを倒していくドラちゃん。

 救い出された猫ちゃんは突撃する相手がいないからカードの効果が切れるまで動くことが出来ない。ほんとは助かった猫ちゃんもドラちゃんに加勢してほしいけど、それが出来たらこんなことになってないもんね。


 「もう少しだよ、耐えて猫ちゃん!」


 猫ちゃんのHPが黄色から赤色に。もう残り少ない!

 ドラちゃんが必死に頑張ってくれて、もうスライムが引っ付いてる猫ちゃんは残り少ない……でも、それでも少し間に合わないかも。


 「ミーナ。木々の……いえ、なんでもないわ」


 トリアは何かを言いかけて、どこかを見て言うのを止めた。

 トリアの視線の先には青スライムの後ろで隠れるツキシタの姿が。さっきと同じく怖くて震えてるけど、様子が少し違うような。


 --ら、らー


 ツキシタは私の方を向いて涙を貯める。

 何を言っているのか私にはわからない。だけど怖いのを頑張って耐えてるような、何か勇気を振り絞ってるような…………昔の奏に似てる?


 「……頑張って、ツキシタ!」


 --ら……らー!


 ツキシタはスライムのいる猫ちゃんの元へ走り出した。

 順番に対処してるドラちゃんから最も離れた猫ちゃんの元へ。


 そんなツキシタに猫ちゃんは低く喉を鳴らして威嚇する。「何をしに来た?」と。

 スライムに囚われた状態で動けもしないのに、猫ちゃんの威圧はツキシタの足を一歩後ろへと動かした。だけど止まってしまった足とは裏腹に猫ちゃんのHPは減り続けていく。


 --ららー!!


 ツキシタは首を振って一歩踏み出した。

 威嚇を受けながらもツキシタは猫ちゃんに手を近づかせる。


 スライムが動き出してツキシタを妨害しようとするが、それよりも早くツキシタは目を閉じて頭の花を大きく開いた。


 --にゃ!?


 白い花が更に白く輝きだし、猫ちゃんを緑色の光が包みこんだ。すると猫ちゃんのHPはみるみる内に回復して、赤色から緑色にまで猫ちゃんを癒し続けた。


 --……にゃー


 --ららー


 ツキシタは呆然とする猫ちゃんを余所に、次の猫ちゃんの所へ行き同じ様にHPを回復させていく。

 緑のエフェクトが猫ちゃんを包み、ドラちゃんの助けに間に合わせる。


 「ツキシタは回復が出来たんだ」

 「俗にいうヒーラーというものね。その代わり敵対心ヘイトが溜まりやすいから気をつけるのよ」


 だからトリアは何かを言いかけて止めたんだ。ツキシタが頑張ると思って。

 きっと今回は私が間違ったカードを使ったから起きた事だよね、あとで皆に謝らないと。


 「落ち着いたみたいね。随分顔色が戻ってるわ」

 「うん。皆無事で終わると思うとね。それに──」


 みんなの癒しを終えるツキシタ。だけど最後に残っていたスライムが猫ちゃんの元から離れてツキシタに攻撃しようと飛びつく。


 --らららー!


 「”猫の好奇心”の効果が切れたからね」


 --にゃ!


 ツキシタに飛びついたスライムを猫ちゃんが後ろから引き裂いた。

 スライムが光に消えた中でツキシタと猫ちゃんの目が自然と合う。

 蛇に睨まれた蛙のようにピシっと固まったツキシタに猫ちゃんはゆっくり近づく、「ら、らー」と掠れた声を漏らすツキシタに顔を寄せて……ペロっと舌で舐めた。


 --にゃん


 呆然とするツキシタに猫ちゃんはもう一度ツキシタのほっぺを舐めると私の元へと歩き始める。

 目を白黒させながらも意味を理解したツキシタはあせあせと猫ちゃんのあとを追う、そしてそれを囲むように他の猫ちゃんもツキシタの元へ寄るのだった。


 --にゃん

 --にゃにゃん


 猫ちゃんがそれぞれツキシタのほっぺを舐めては先を行く。

 ボス戦はさっきのを倒したことで終わったのか私と皆とを分ける壁が無くなって、私は猫ちゃん達を撫でてごめんねを言った。

 そして今回の功労者ドラちゃんにはふんだんにナデナデのプレゼント! お肌がツルツルで猫ちゃん達とは違った触り心地なんだよ。ドラちゃんも嬉しそうだしウィンウィンだね!

 私がドラちゃんを撫でてるあいだ青スライムが私にベッタリしてるんだけど、私は甘んじて受け入れてる。というか青スライム結構甘えたさんなんだよね、指で突っついてあがると……ほら、プルルンって。


 最後に……。


 「ツキシタ。よく頑張ったね」


 --ら、らら〜


 今思えばアクティブカードの『木々の癒し』で猫ちゃん達を少し回復させれたかもしれないんだけど、それでも2枚しか持ってないし誰かやられてたかもしれない。

 ツキシタが頑張ってくれたから猫ちゃんを助けることが出来たんだ。


 --にゃにゃー

 --にゃんにゃん


 ツキシタが褒められて猫ちゃんはどこか嬉しそうだ。

 さっきまでの威勢はどこへやら。もうすっかり猫ちゃんは心を許してる。


 「そろそろ先に進むわよ。きっとミーナも驚くわ」

 「うん。行こう!」


 私が驚くといっても何があるのか分からないけど、トリアがそういうなら迷う必要ないもんね。

 今度は険悪な雰囲気もなくボスフィールドの赤線を超えた。先に行くにつれ生い茂っていた木々が段々と薄れていき、光が木々の間を抜けていく。


 「わぁ!」


 木々を抜けた先、ポッカリと空いた空間には辺り一面のお花畑があった。


 「凄い! きれー!」


 --らら〜!


 色とりどりのお花。そのどれもが綺麗に咲いて私たちを歓迎してくれる。

 風が吹くと花びらが宙を舞い、空の光に反射して虹色に輝いた。


 「ふふふっ、満足したかしら?」

 「満足も満足! 超満足だよ、トリア!」

 「ふふっ、それなら良かったわ」


 お花畑に来た途端ツキシタや猫ちゃん達もはしゃいで遊び始めてる。ドラちゃんや青スライムもこの光景には心が踊ったようで。

 少し前の気まずい空気はどこへやら、種族も何もかも無視して転げ回ってる。

 ご機嫌な猫ちゃんにツキシタも今までにないほど笑顔だ。


 「本当はここで仲直りしてもらう予定だったのだけど、その必要は無かったかも知れないわね」

 「そんなことないよ、トリア。トリアがここを目的地にしてくれたからこうやってみんな笑顔で楽しいんだ」


 私も実はうずうずしてる。皆の所へ混ざりたい、遊びたい!


 「だからね。ありがとう、トリア! ここに連れてきてくれて!」

 「……ええ、どういたしまして。ミーナ、目が血走ってるわよ……早くみんなの所に行ってあげなさい」

 「何言ってるの? もちろんトリアも一緒にだよ!」


 そのためにずっとここで待ってるんだから!

 一緒に行かないと、トリア我慢するでしょ?


 「ほら、早く行くよー!」

 「えっ、ちょっ……もー、仕方ないわねー!」


 トリアの手を引っ張ってみんなのいる所へと走る。

 言葉とは裏腹に満更でもない顔のトリアを見て私も自然と笑顔になる。


 「みんなー私達も混ぜてー!」


 --にゃー

 --キュー



 --ららら〜♪



 ★イミテーション


 効果

 直前に使ったアクティブカードを模倣する


 紹介文

 SPが高いカードを使ったあとだと便利かも

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ